その151、八郎くんの移送
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結局、八郎くんは別の施設に移送されることとなった。
ブレードに関係する魔法施設で、以前のものより警備が厳重である。
見た目には小山としか見えない場所の地下に建造されたものだ。
そこ自体が一種のシェルターとしても機能するという代物。
「前回の反省を踏まえて、より強固なゴーレムを配備しましょう」
松上少年は施設の構造図を見ながら、何度もチェックしていた。
「あっちはあくまで対人を前提としたものですが、こちらは大型モンスターの襲撃も想定して組み直します。緊急時の脱出や、避難先も複数用意しておきますね」
「またお金がかかるわねえ……」
あれこれ積み上げられる案件に、私は重たい気分であった。
「まあ、仕方のないことですよ」
「ヤタガラスは公共事業みたいなもので、そこまで莫大な利益は期待できないし……」
「異世界との交易に活路を見出すしかないですなあ」
「そうなると、日本の……ひいては地球の悪評をどうにかしないと――」
一緒に来ていたヅカテ氏は、しんどそうに言うのだった。
「……そんなに評判悪いんですか?」
「まあ、少なくともエルフにはね……。他の種族もさほどいいものはないようだ」
「日本は魔女党政権下のアレでやらかしてますけど、他の国も?」
「アメリカとかは、やたらに布教に来る連中が多くってなあ……」
「あああ……」
神の教えを異世界にも――というわけで、ハッスルしてしまったわけだ。
中には、あっちの宗教を否定して無茶な活動をし、逆に殺された例もあるらしい。
そこから、アメリカのキリスト教保守は、異世界に否定的になった。
ある派閥は、
「異世界なんてありえない。これは悪魔の罠だ!」
と、ダイノヘイム幻影説を唱えて、日々デモを繰り広げたり。
別の派閥は、
「間違った世界に、正しい教えを広めるべき!」
と、さらにハッスルして、現代の十字軍を気取って、軍事侵攻まで唱えたり……。
当然、そんなものがうまくいくはずもない。
そもそも、ダイノヘイムの魔法技術は今のところは、現代科学を上回っているのだ。
ぶつかり合えば、ただではすまない。
また、魔法は悪魔の技であると主張する派閥も活発で、アメリカでは大っぴらに魔法を研究しにくいようだ。今もなお……。
かといって、他の国もそれほどうまくもいってない。
やはり、魔法や異種族の存在は宗教的に面倒くさいわけで――
否定しようとすれば、ジェノサイドに突っ張りしかねないし、そうなれば、逆に虐殺される側になる可能性が大きかった。
エルフやダークエルフの力は強大だ。
ファンタジーものなんかでは、割と古い滅びゆく種族であったり。
森で暮らす美しいが、発展してない種族だったり。
だが、あっちのエルフや巨大な国を形成する強力な種族である。
魔法を抜きにしても、力も頭脳も人類以上とみて良かった。
そんなの相手が、こちらの賢しい悪意や野心に気づかないわけがないのだ。
門前払いはいいほうで、逆に利用され、玩具にされるパターンも……。
ダークエルフなどが特に顕著な例だ。
そう。ダークエルフなのである。
彼らの姿は、こっちの文化的にはほとんど悪魔である。性格も、むしろそのほうが近い。
悪魔扱いしているキリスト教保守はある意味正しいわけだが。
今後、できれば彼らが敵になることは避けたい所存であった。
そう考えていくと、気分がどんどん重くなる……。
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