その150、憂慮される今後の事情
「黒羽さん、無事だったんですね!?」
シェルターは見た目、大型の金庫という感じだった。
出入り口だけで3メートル近くある。
そこを開くと、鎧のような姿の八郎くんがドスドスと出てきた。
「ぜんぜん連絡できないし……どうなってるかと……」
「いや、あなたには何かあったら、さらわれたりしたら大ごとだから」
「だけども、こんなところにいても何もできないじゃないですか」
「今回は君に何かしてもらう気はなかったですよ」
そう言うのは松上少年だ。
腰に両手を当てて、演説でもぶちかましそうな雰囲気で八郎くんを見上げた。
「大げさに聞こえるかもしれないけど、君は生きているだけで非常に価値がある。もしも敵に害されたりしたら、我々のみならず人類全体の損失なのです」
「ホントに大げさだなあ……」
八郎くんはごつい手を兜のようになっている頭にやり、所在なさげに言った。
「けど、襲ってきたのは一体何なんです?」
「まあ……一言で言うと、テロリストですな」
「それが何で僕を狙うんだか……。男の魔法使いだから?」
「どういう意図なのかは、正確にはわかりません。ただ、八郎くんが目的だったのは確かだと思われますね」
「えらいことになったなー……」
「そう、えらいことになっているんです」
「とにかく、八郎くんには今後誰かがついてなきゃいかんだろうな。人手がいる」
と、ヅカテ氏は難しい顔で一同を見回す。
「あるいは、どこかよそに移送ということも考えるべきだなあ」
「まあ、確かに。この施設は相手にバレバレですからね」
私はため息を吐いて、そこでようやく変身を解く。
「ちょ……!? 黒羽さん……傷だらけじゃないですか?!」
素顔の私を見るなり、八郎くんは大あわてで叫んだものである。
「え? ああ……」
確かに、あちこち傷を負って服もボロボロだ。
治療魔法を自分でかけたから、大きな傷は一つもないが……。
衣服の損傷や汚れはそのまんまである。
「君も毎回ひどい目に合うなあ」
「もう慣れましたよ」
同情するように言うヅカテ氏に、私は苦笑で返す。
「とにかく、そのまんまじゃアレだ……」
言って、ヅカテ氏は私に魔法をかけた。
すると、細かい傷が治っていき、汚れも落ちていく。
さすがに衣服の損傷までは直らなかったけど。
「ありがとうございます」
「礼はいいけど……。君が今後大けがしたら、シャレにならんことになるなあ……」
ヅカテ氏は顎を撫でながら、うなるように言った。
「今回襲ってきた連中はけっこうな手練れも多かったし、今後ダイノヘイムの種族も加わるという可能性もある。そんなに高い可能性ではないと思うがね……」
生き物は追いつめられると、思いもよらないことをするもんだ――
と、ヅカテ氏はため息と共に言った。
「確かに……。前政権も魔女狩り対策のために、他種族の魔法使いを雇ってましたからね」
松上少年もうなずいた。
「しかも、目的がテロなら金で動く凶悪なのを雇う危険もあります」
と、松上少年はゾッとしないことを言って首を振る……。
なんともはや……。ますます今後が心配だ…………。
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