その141、怪物キマイラ
私が最初に選んだ相手は、キマイラだった。
対峙してみると、かなりでかい。
ライオン、ヤギ、ドラゴンの3つの首に、その特徴を併せ持つ胴体。
幸いなのは翼を持たないために、飛行能力がないことだろう。
個体とか種類によっては有翼のやつもいるらしいが……。それはどうでも良い。
内在する魔力はかなり濃い。けっこう面倒だな。
と、思っていると、いきなり火炎のブレスを吐いてきた。
私は障壁を展開しながらギリギリでかわす。
放置しとけば、たちまち火災を引き起こすからな。速攻で対処せねば。
<魔力展開。集中、散弾>
私は上空から資格を狙って、魔力弾を撃ちまくる。
だが、3つの首を持つ怪物はなかなかどうして隙が無い。
それでも細かく撃つ魔力弾に翻弄され、やたらに吠えようとする。
もっとも。
相手を委縮させる咆哮も、こっちにとってはチャンスだ。
あるいは、ブレスを吐こうとしたのだろうか?
ドラゴンの口が開いたところに――
<魔力集中。爆裂>
新技の爆裂弾を打ち込んでやった。
魔力弾を素直に飲み込み、一瞬怪物はキョトンとするが、すぐさま悲鳴をあげる。
いや、体内で弾が爆発したのだ。
ギリシャ神話では、ブレスの時に鉛の塊を放り込まれて殺されたという。
地球の神話が、異世界の怪物にどこまで通じるかは知らない。
けど、効果はあった。
2度目だし、警戒するかと思ったが、ライオンの首にも同じ戦法が通じる。
最後のヤギの首も同じだった。
もしかして、そういう習性のようなものがあるのだろうか?
資料には、喉の奥が急所だとはあったが……。
咳き込んで悶える怪物を、私はまたも散弾で撃った。
これはとどめというよりも、挑発するためのもの。
案の定、怪物はまたもカッと口を開いた。
そこを狙って、
<魔力集中。長槍>
高濃度の魔力で構成した長槍を振りかざし、思い切り投擲した。
文字通り串刺しとなって、怪物は道路に縫いつけられる。
これで即座には動けない。
<魔力集中、圧縮。圧縮。圧縮。強化――開放>
「でいやああああああああああああああああ!!!」
ストレスを吐き出すように、私は魔力でフルブーストしながらキックを叩きこんだ。
そのまま怪物の体をえぐり、大きな穴をあけて反対側まで飛び出す。
振り返ると、キマイラは半分吹っ飛んだ姿でドウッと倒れこむ。
<まずはキマイラを仕留めました。後処理よろしく!>
今までなら、これで終わり。帰投できるのだが、今回はそうはいかない。
私はそのまま飛行して、探知魔法を使い周辺をさぐる。
<魔力反応。複数発見>
見ると、空中を数羽の鳥みたいなものが飛び交っている。
ヘルメット内で拡大表示すると、鶴……というか古代の翼竜みたいな牙のある鳥。
通称・ステュムパリデスの怪鳥。
これもギリシャ神話に出てくるモンスターだ。
強靭な詰めや嘴を持ち、さらには毒性の糞便をまき散らすという嫌な相手だ。
だが、さほど耐久性はないとデータにはある。なら、すぐさま片づけるまで……!!
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