その14、第2の異変
ヒロインのピンチ。
いない。
物語のヒロインであるゆみかは、どこにもいなかった。
確かアニメでは同じクラスのはずだったのだが。
おかしい……。
私は腕を組んで、考え込んだ。
「あ」
そして思い出し、つぶやく。
忘れていた。
確か、ゆみかは当初違う学校にいたはずなのだ。
記憶を反芻する。
アニメの一話では……。
魔法科のない普通の学校に入学したゆみかは、基礎魔法の訓練中に、
「その才能を見せるんだっけ?」
この世界では普通科の学校でも、魔法の授業はある。
あくまで基礎をサラッと習うだけのはずだが。
しかし、その授業の最中にゆみかは魔力を暴走させてしまうのだ……。
で、そこから急遽、この学校への転入が決まる、と。
明確な日時はアニメじゃわからないけど……。
その時だった。
私の、頭に何か呼び出し音みたいなものが響く。
それは自分にだけ聞こえるものだ、と何故かわかった。
「あのー、教室戻っていいですか?」
ほとんどの生徒がグダグダな中、私は担任に尋ねる。
「刃光院さんは平気みたいね……。戻って休みに入ってOKですよ。体調が悪かったら、すぐ他の先生でもいいので知らせて」
と、言われてから、私は訓練室を出た。
妙に焦った気分で、教室に。
私が戻るなり、体育着に着替えた時に置いていたスマホが鳴った。
一瞬だけだが。
普通ならSNSかメールというところ。
で、取ってみると。
メールで何かの動画みたいなものが。
これって……。
ちょっと不安ながら見てみる。
すると、どこかの学校らしき場所。
そこへ次々と黒い怪物が舞い降りていく。
魔女狩りだ。
次に騒いで逃げようとしている生徒たち。
その中に、
「あ」
アニメのヒロイン――坂本ゆみかがいた。
時期的にまだアニメの1話くらいのはず……。
そんな時に、こんな事件なんてなかったはずだ。
だが、起こってしまっている。
私は速攻で着替えると、すぐさま人のいない場所へと走った。
どうしてそうするのか、よくわからないまま。
よし、あたりに人気なし……。
……でも、どうする?
そう思っていると、私の手が熱くなった。
光の粒子が集中し、そして手に握られるもの。
黒く輝く杖。魔法のワンド。