その137、モンスター召喚の謎
本日2回目です。
結局、この騒動では見ているだけに終わってしまった。
私は田中くんに連絡を入れてから、一応周辺のサーチもしておく。
特に何も検出されず、警備のほうでも異常は確認していなかった。
まあ、八郎くんが大気魔力を吸いとっているので、モンスターは自然発生しにくい。
「ただ召喚となれば……また話は別ですな」
松上少年は大きな紙面に魔法陣の図形を書いたものを机に広げていた。
あちこちにメモ書きらしきものが見える。
ほとんどがエルフ文字だ。
「これは」
「自分でも考えてみることにしたんですよ」
「何を」
「他の場所はともかく、大気魔力の希薄な関東圏でどうすればテロを起こせるか」
何ともはや、ずいぶんと物騒な考察である。
「で、どうすればいいって?」
「手っ取り早いのは、電池式の魔法陣ですな」
「でんち?」
私は連想したのは、よくある円筒形の単三電池だ。
「と言っても、凝縮した魔力を込めたものですがね。作るのにはなかなかコストがかかる」
「例えばどのくらい?」
「そうですな。電力に換算して普通の単三電池一本が、これこれしかじかです」
ちょっといいパソコンが買える値段だった。これは高い。
「だとしたら、ちょっと考えにくくない?」
「いえいえ。あわてずに」
思わず苦笑する私に、松上少年は手を振って見せて、
「もっともコスパ良く作るとしたら、魔結晶をベースにしますがね。そうすればちょっとした組み立てだけで、すぐ作れてしまうのですよ」
「ふーむ。でも、それって使い捨て? それとも自然に分解してしまうもの?」
「いや、それはないですが」
「もしそういうものを作ってるとしたら、現場から発見されるんじゃないの」
「そうなんですよね」
私の指摘に、天才児はしおしおと萎れてしまった。
「とすると、電池式じゃあないってことにならないかな」
「そうなんですよねー……」
話は空中分解してしまった。頼りない天才だ……。
そんな矢先―
「いやはや、物騒なことになってきたねえ……」
部屋に入ってきたのはヅカテ氏だった。
「まさか、あんなもんが流入してるとは……」
ブツブツ言いながら、疲れた顔で席に座るヅカテ氏。
「何かわかったんですか?」
「わかるも何も……。これだよ」
と、ヅカテ氏は何かの画像を空中に展開してみせた。
見たところ、四角形の護符のようなものである。
エルフ文字と丸を中心とした魔法陣が描かれていた。
「これは…………!」
私にはわからなかったが、松上少年にか理解できたらしい。
「何なんですか、この護符……」
「これは、言うなれば使い捨てのモンスター召喚符だよ。ただし、粗悪品の」
ヅカテ氏は肩を揉みながら、心底嫌そうに言った。
「この手のヤツは普通呼び出したモンスターを使役できるようにするものなんだけど、これは呼び出すだけで、何の枷もつけられない。その上呼び出す種類はランダムときてる」
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