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133/301

その133、超人は窮屈なり




 で。



 八郎くんはそのまま実験づけになる羽目となった。


 初めは身体機能などのチェックから始まり、最終的には魔法まで浴びることに。


 火炎魔法。凍結魔法。雷撃魔法。


 色々喰らっても、まったくのノーダメージである。



「……本当に平気なわけ?」


「はあ。特に何も感じないです」


「データにもダメージは残ってませんねえ。むしろ、攻撃を吸収して魔力に変換してる。このシステムを応用できれば、またすごい発見と進歩になりますよ」


「そんなことばっか言って……」



 私はしまいに頭が痛くなってきた。



「魔力を貯めこんでいるっていうけど、今度は大丈夫なの?」


「はい、ぜんぜん平気のようですな。以前蛹になった状態と似ています」


「とすると……脱皮するってこと?」


「そうですねえ。要は一定のエネルギーをため込んで一気に発動するんです」


「何というか、必殺技みたいな機能だわ……」


「はははは。うまいことを言われる」



 しかし、脱皮するまでの魔力はどのくらいで貯まるのだろうか?



「外部から集める場合はかなり行動が制限されますね。身体機能が著しく低下します。自然に貯まるのを待っていると数日かかる可能性があります」


「つまり意図的に貯めようとすると動けなくなる……。そりゃ不便ね」


「ああ、程度によりますが思考能力もかなり落ちますね」


「まともに生活できないじゃない!」


「しかし、いったんあの形態になってしまうと……」



 と、松上少年は鎧のような八郎くんを指す。



「一度脱皮するまで元に戻れないようです」


「うわあ……」


「早く戻りたいんで……。吸収を速めたいんだけど?」



 八郎くんは全身にコードをつけた状態で不満そうだった。まあ、そりゃそうだ。



「平常時のデータを取りたいのでしばらく我慢してください」


「この状態だと水も食事もとれないんだけど!?」


「でも、それなしでも肉体を維持できるようですぞ。トイレもいらない」


「そんなロボットみたいになって嬉しいわけあるもんか!」


「まあまあ、悪いけどもうちょっと我慢してください」



 松上少年は声を荒げる八郎くんをなだめる。



「その代わり検査が済んだら、何かプレゼントしますよ。何かお望みのものを」


「プレゼントって言われても……」



 八郎くんは多少トーンを落としながらも、やはり不満そうだった。



 はあ、やれやれ。



 松上少年はああ言ったが、八郎くんについては政府筋のほうでも対処に困っている。


 まさに超人的な能力を得てしまった八郎くんだが……。



 その能力はまだ未知数で、しかも現状ではかなりややこしい。


 何かの時に切り札にはなりそうだけれど、一歩間違えればとんだ爆弾になりかねん。



 また、うまく彼を利用したい連中も大勢いることだろう。


 この先、外出もままならない生活になるのではなかろうか。



 私は考えるほどに不安になった。



 ストレスの多い生活は、八郎くんの精神をどう歪めるかわかったもんじゃない。


 そして歪んだ結果どうなるのかも……。



 困った。実に困った。



 私が痛む頭をどうしたものかと悩んでいると、携帯に連絡が入ってきた。


 内容は、近くの街でテロ事件が起こったというもので――






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