その131、嵐の去った後で
<反応消失――>
雷撃を受けた魔女狩りは、ブスブスと黒い蒸気を上げながら消えていく。
本当に片づけてしまった……。
あんなでかい化け物を、たった一人で。
<八郎くん?>
通信を送ってみたが、返事はない。
<魔力が急速に低下しています! 気をつけて>
松上少年からの声を受け、私は急いで接近する。
と、空中にいた八郎くんはガクンと崩れ、落下を始めたのだった。
やばい……!
<八郎くん、八郎くん!?>
すぐさまキャッチしたが、通信を送っても返事がない。
まさか、魔力を使いすぎて……!?
いかんよ、いかんよ……。いくら怪獣やっつけても、そんな終わり方は……。
私はすぐに松上少年に連絡を入れ、八郎くんを施設まで連れ帰った。
スーツとメットを脱がすと、八郎くんは昏睡状態。
しかも、水色の髪が普通の黒に変わっていた。体型も変化している。
そのまま、事後処理は松上少年に任せ、私は八郎くんについていた。
で、検査の結果。
「……えーと。性別が、なくなっていますね?」
検査した医師が困惑した顔でそう報告する。
「え? ど、どういうことですか?」
「つまり、以前は確かにあった精巣や子宮、性器などがなくなってます」
「ええーー……」
両性具有から、無性状態? どこまで変化が激しいんだろうか。
「で、健康状態は!?」
「そのへんは大丈夫です。性別の点以外は、特に異常も見られません」
ふう、と私は息を吐く。ようやく人心地ついた気分だった。
許可を得て、私も八郎くんの寝顔を見たのだけれど……。
顔立ちは、特に変わってもいない。
相変わらずの、羨ましいくらいきれいな顔だ。
「これって、どういうことでしょうか?」
「さて……」
ヅカテ氏に聞いてみたが、彼も困惑してる様子だった。
「性別を変える種族や魔法は存在するけど、こんな変化の仕方は見たことがない」
「魔力の反応は落ち着いているんですが……」
「以前のような異常な数値数ではないねえ。まあ、普通になったと言えるのか」
「はあ……」
そうなると、私たちは将来の災害に対処する人材を失ったのだろうか?
まあ、無事に生きていたくれただけで、良しとすべきなのだろう。
「周辺の魔力素を吸収しているわけもないな……。以前の状態はなんだったんだ?」
ヅカテ氏はしきりにうなっていた。
施設の研究員たちも色々検査を繰り返すが、結果は変わらなかったようだ。
「いやはや。ようやく一段落つきました」
そんなことをしていた折、松上少年が帰ってくる。
大トカゲ魔女り狩りの出した被害で、日本は大わらわだ。
対モンスター対策も大幅に変更が余儀なくされた。
そして。
政府から、八郎くんについての質問が山のようにやってきた。
「諸外国からも、色々探ってきてますねえ」
松上少年もうんざりした顔で、報告書を読むのだった。
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