その129、もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな?
寒くなってから体調不良気味です。
皆様もご自愛のほどを。
「ふう……」
低空で飛びながら、私は呼吸を整える。
そうこうしているうちに、トカゲ型魔女狩りが見えてきた。
地響きというべきか、足音というべきか。それとも鼓動?
馬鹿でかい魔力が波動になって響いてくるようだ。
こりゃきつい。
実物に対すると、いよいよその強大さがわかる。
あのブレスがなくっても、歩くだけで恐ろしい被害を出す怪物だ。
<八郎くん、大丈夫?>
<ええ、でかいですね>
通信を送ると、硬い声だが比較的落ちついた様子で八郎くんは応えた。
目を離すわけにはいかない。
仮に失敗したとしても、この子を死なすわけにはいかないのだ。
稀有な人材であり、それをのけてもまだ14、5歳の子供である。
精神年齢はええ年こいたオバンのせいで死なせてはならぬ。
私は舌を飛ぶ鳥型ツールの情報を確認しながら、息を吐いた。
低燃費モードなら、けっこうな時間を活動できるのはありがたい。
<では、いよいよ敵の範囲内に入ります。各自用意を――>
松上少年からの通信。
<八郎くん、教えた通りシールドを張ってください>
<了解……!>
魔女狩りを前にして、八郎くんは指示通り魔法障壁を展開させた。
円盤型のシールドは見る間に巨大化していき、直径20メートル超えとなる。
私なら、数分維持できるかわからないような代物だ。
だが、八郎くんのバイタルは正常だった。
魔力数値は安定し、強靭なシールドを苦も無く維持している。
<シールド展開後、魔力弾用意!>
<了解した!>
指示が飛ぶと、円形シールドの周囲に、丸い光が円陣となって囲んでいく。
一つ一つが魔力の砲弾だ。
<射撃用意……発射!!>
号令と共に、魔女狩りの無防備な背中に、魔力弾が雨となって降り注いだ。
叫び声があがり、肉や魔力が飛び散り、黒い蒸気と化して舞う。
これは、案外簡単にいく……?!
だが、そうはならなかった。
魔女狩りは撃たれながらもぐいっと首を持ち上げ、私たちを睨む。
瞳のない真っ黒な目が、不気味に輝いた。
そして、いきなり巨大な顎から球形のブレスが飛ぶ。
私は魔力の波に吹き飛ばされそうになりながらも、どうにか耐えた。
ブレスは、まともに八郎くんのシールドにぶち当たる。
魔力の爆発が起こった。
私はシールドを多重展開させ、さらに鳥型ツールを盾にして爆風を防ぐ。
<黒羽さん、僕の後ろに!>
八郎くんが張りのある声で通信してきたので、それに従った。
続いて第2のブレスが来るが、それも八郎くんのシールドが防ぐ。
八郎くんの後ろにいると、衝撃も爆風も全くこなかった。
<すごいな……>
私は感嘆するしかなかった。
というか、これ八郎くんだけでいいんじゃないかな?
私の出番は全くないようだ。
続いてくる第3・第4のブレスも全て防ぎ切り、八郎くんは再び魔弾の用意をした。
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