その127、手段はなくもない
昨日更新できなかったので、本日は2回更新予定です。
「何か、方法はないものか……」
どうにもならないまま時間だけが過ぎていく中――
私は頭を押さえてつぶやいた。
こうしている間にも、大トカゲは大阪を横断している。
一体どれだけの被害・損害が出ているかわかったものじゃない。
武器も人手も、何もかもが足らないのだ。
「……君の天才的頭脳で、何とかならないのかな?」
私は、いつの間にか隣に立っていた松上少年に言ってみた。
半分は嫌味だ。
「まあ、ないことも……ない、かもしれません」
「え? どっち?」
予期しなかった返事に、私はつい間抜けな声を出してしまった。
「おそらくですが……彼なら何とかできるかもしれません」
「彼って、まさか……?」
私は右手で5、左手で3を示した。合計は8。
すなわち――
「彼のダークエルフ級の魔力ならば、真っ向から対抗できる可能性は高いです」
「でも、彼はまだ素人だよ……。いくら資質が高くっても」
「問題はそこなんですよねえ……」
「何かあったらどうするつもりかな?」
「……その時は、謝るしかありませんね」
「誰に?」
「……」
「あのさ、アニメじゃないんだから初期魔法程度しか知らない中学生を、いきなりあの化け物の前に放り出すつもり? シャレにも何もなったもんじゃない」
「いかにも、その通りですが……このままだと、被害が大きすぎる。我々は近い将来に起こる転移にも備えなきゃあいかんのです」
「嫌いだな、そういう物言いは……」
偉そうなことを言ってみたが、私に何か代案があるわけでもない。
文句だけなら、無能でも馬鹿でも言えるのだ。
「……」
「……」
「藁にもすがる……よりは確率は高いと思うんですが」
「わかった。ただし、私も一緒だ」
仮面の表面をなで、私は堅い声で言った。
「むう?」
「一人で放り出すよりはマシでしょうが」
「ならば、僕も……」
「あんたのおつむには替えがきかない」
「そう言うが、あなたにも替えがききませんぞ?」
「仕方ないんじゃないの?」
「……」
「なに?」
「いえ、まるでヒーローみたいなだなと」
「そんなに格好いいもんじゃあない」
私は苦笑して、姿勢を正した。
正直怖いし、気は進まない。だが、仮に死んでも死ぬのは初めてじゃない。
前世を合わせれば無駄に年は喰っている。
「中学生だけを矢面に出すわけには、いかんでしょう?」
「そこを言われると……色々きついですな」
そして、私たちは八郎くんを迎えに行くため、転移の魔法陣をくぐった。
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