その124、恐竜というか怪獣
ちょっと体調が崩れました。
皆さんもお気をつけください。
<緊急速報です――>
八郎くんの訓練がある程度進んだあたりのことだった。
午前の訓練を終えて、昼食を何食べようかと話し合っていた時だ。
私たちは食堂に設置されたテレビに釘付けとなった。
山間の地方都市を、真っ黒な巨体がぬらぬらと進んでいく映像。
場所は、関西のとある地方都市。
クジラのように巨大な四つ足のモノが、家屋を蹂躙しながら這い進んでいるのだ。
「……トカゲ?」
「トカゲですねえ」
料理の載ったトレイを持ったまま、私は呆れながらつぶやいてしまう。
松上少年も、それに相槌を打った。
「大型の魔女狩りですね……。最近出現したものは、ヤタガラスで処理できてたのに」
「関西には、ブレードの支社も少ないし、防備は関東が優先されてたからなあ……」
地方が後回しにされたことが、こんな形の害悪となったようだ。
確認してみると、すぐにヤタガラスが現場に向かっているらしい。
ただ、関東圏に比べると万全とは言い難いか。
「自衛隊とかで、どうにかならないんですか?」
八郎くんは右往左往しながら、そんなことを聞いてくる。
「他のモンスターなら、対応する部隊もあるんだけど……」
女性中心のその部隊では、魔女狩りに対抗できない。
ヤタガラスを参考に魔女狩り用の武装も開発されているが――
いずれもまだまだ実験段階らしい。
幸いなのは、関東でのモンスター発生が若干減っていることだろうか。
とはいえ、全ての戦力を割くわけにもいくまい。
現場では、住民を避難させることで精いっぱいらしかった。
それも順調に言っているとは言いがたいようだ。
「関西か……」
私はつぶやき、ワンドを握り締めた。遠いが、行って行けない場所でもない。
「ちょっとお待ちを」
松上少年の手が、私の腕をつかんだ。
「あれほどのサイズとなれば、個人レベルではちょっと難しい。もうちょい情報を集めるのを待ちましょう」
「冷静だね……」
「あわててもいけないでしょう?」
それは確かにそうである。
しかし――
巨大トカゲの進行は全く持って止まらなかった。
対処するためのヤタガラスの攻撃も、あくまで遅らせるだけに留まる。
今までの魔女狩りならすぐに殲滅できていた武器や攻撃も、効果は薄い。
「こりゃもう、恐竜というか怪獣だね……」
私は頭を押さえて、ため息。
「攻撃を無効化しているじゃあない。単純に防御力が強いんだ……」
送られてくるデータと映像を交互に睨み、松上少年はうなっていた。
「反撃をあまりしないのも、ダメージを受けてないからのようですな」
「……チマチマした攻撃じゃ埒が明かないか」
「そのようです」
「ツールによる攻撃もどこまで効くか、保証の限りではないですね、これは……」
「まさか、アレ、誰か造ったものじゃないでしょうね?」
私の頭には、以前テロリスト佐藤が生み出した合成獣が浮かぶ。
「いや、魔力の質からして天然もののようですね。性質的には、ドラゴンに近い……」
日本で初めてのドラゴン系ですわ、とどこか興奮したように松上少年はつぶやいた。
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