その12、担任は元気にやってきた
タフな担任教師です。
「そういえば、昨日一緒にいた……吉田エミリさんだっけ? あの子は?」
「あ……」
私の質問に、まきめはハッとする。
「何かあった?」
「い、いえ。昨日学校を出た時はケガもなかったんですけど……」
「やっぱりショックだったのかしら、アレ……」
「わ、私もけっこうしんどくって、つい連絡もしなくって……」
まきめは今さらオロオロしながら、スマホを取り出した。
気持ちはわかる。
私も、家に帰ってすぐ寝ちゃったからなー。
「連絡、つきません……」
スマホをいじっていたまきめは、顔色を悪くして言った。
私はどうフォローしていいか、思いつかない。
吉田エミリとの連絡がとれないまま、時間は過ぎる。
やがて、チャイムが鳴り、教師が入ってきた。
「みんな、おはよう」
そういって手を挙げたのは、武市綾子だった。
「せ、先生、大丈夫だったんですか?」
みんなが唖然としている中、私は思わず大声で言ってしまった。
「あー。うん。幸いケガはなくって」
武市は苦笑しながら手を振るが、よく見ると右手には包帯が。
「昨日あんなことがあって、ショックで休んでいる子もいるようだけど……」
武市は教室を見回しながら、
「でも、君たちはもう魔法学校の生徒です。どうか負けないでほしいです」
と、真剣な目で言った。
「学校も二度とあんなことがないように、万全の警備をしいています。どうか学校を信じて、元気で登校してほしいです」
うーん……。
でも、むしろあの厳重な警備がかえってプレッシャーのような気も。
さすがに、それは口に出さなかったけど。
「せ、先生……。昨日の怪物は何なんですか?」
生徒の一人がおっかなびっくりで言った。
「現在はまだ不明です。けれど、たくさんの人が調査していますから、いずれ正体は明らかになると思います。安心して」
楽観的なものだ。
しかし、若干無責任っぽい発言も彼女が言うと頼りがあるように思える。
これも人徳?
それとも人たらしの才能だろうか?
「じゃあ、もう一人の変なのは? 魔法使いですか?」
「ネットにあがってるし……」
「体つきは男みたいだけど……男の魔法使い?」
「いや、それはありえないよ!」
「単にスリムなだけじゃないの?」
話題は、次に『私』に関することになってきた。
「えー。そちらのほうも調査中で……」
と、今度は武市、少し微妙な反応。
一応助けたことが何か影響しているのだろうか?
てなことを考えていると――
「すみません! 遅れました!!!」
転がるように教室に入ってきた女子が一人。
あ。吉田エミリだ。