その118、変身?
その翌日より――
私は『休暇』ということで、例の住所を訪ねてみることにした。
魔法のおかげで時間とお金を節約できるのは、ありがたい。
とはいえ、何しろ全く知らない相手である。
いきなり訪ねて行っても、あんた誰? ということになるだけだ。
だけどまあ、とりあえず現場確認はしておく。
後でワープ魔法によるショートカットができるようにもしておく。
現地は地方都市だが、ド田舎という感じでもない街だった。
ただ、それほど目に付くようなこともない。
表面上だけではわからない何かがあるということだろうか?
私は魔法で姿を隠し、それとなく周辺の様子をうかがってみる。
ダンジョンも、モンスターの反応もなかった。
今時、こういう場所はなかなか珍しい。
最近は被害はなくっても、小妖がウロウロしていることは普通なのに。
住所の家はなかなか立派なもので、見た感じ裕福そうだ。
私は音を立てずに飛行し、そっと2階を覗いてみる。
犯罪みたい……というか、犯罪だな、これ……。まあ、カンベンしてもらおう。
のぞいてみて、ギョッとした。
薄暗い部屋の中に、異様に膨れ上がった肉塊のようなものがある。
よく見れば、それはどうやら人間らしい。
ほとんど動かないけれど、生きているのは確かだ。
単なる肥満ではなく、皮膚も石だか樹木だかわからない状態。
明らかに尋常ではなかった。
すぐにでも病院に連れていくべきだろう。早急に入院が必要かもしれない。
ジッとうずくまっているその様子は、なんだか巨大な虫の蛹みたいだ。
一応サーチ魔法をかけてみたが、魔力反応はない。
魔術的な呪いではなく、やはり医学的な病気なのだろうか。
だが、何かぬぐい去りがたい違和感がある。もっと具体に調べてみたい……。
……今はそうも行かないか。
とにかく、別手段でもっと詳しく調査してみよう。
そう決めて立ち去ろうとする私に、いきなり視線が飛んできた。
肉の蛹みたいな人間が、こちらを見ている?
見えているのか? いや、そんなはずはない。
蛹は声をあげることもなく、少し首を傾けただけだった。やはり見えてはいないか。
しかし、どうも何かが引っかかる……。
そして。
私は近くの興信所を調べると、簡単な調査を依頼しておいた。
それから数日後。
調査結果が代理人から送られてくる。
例の住所は、『渡』という一家が住んでいるわけだが。
そこそこ高収入の家であり、子供は男女一人ずつ。
娘は魔法の資質があるようで、近隣の魔法学校に通っている。
ただ、中学生の弟はというと――不登校で引きこもりらしい。
近所の人間も、最近は姿を見かけていないということだった。
調査では、半年ほど前から肥満化が進み、皮膚にも異常が出てきたらしい。
それからすぐに不登校となり、引きこもりとなった。
一応病院にも受診はしたようだが、1~2回ぐらいで通院はやめたようだ。
報告書には、一家の写真も添付されていた。
それなりのエリートらしい物腰の一家。
弟はそれなりに上品な雰囲気だが、地味な顔立ちである。
半年前の写真は、中学生らしいニキビはあるが、普通の顔で、普通の体型だった。
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