その117、再び現れた怪人物
久しぶりに登場したキャラ。
その時――
私はふと違和感をおぼえて顔を上げた。
松上少年もヅカテ氏も、うなだれたまま固まっている。動かない。
しかし、何だこれは。
二人は呼吸も何もしていないようだった。石のようになっている。
そして、お代わりをいれたばかりの紅茶。
湯気が立っているけれど、その湯気が空中で静止しているのだ。
これは……!!
おぼえがある。かつて2度経験した。
最初は、入学式。2度目は、鳥型ツールと『秘密基地』をもらった時の……。
「いやあ、まいったまいった」
部屋の中に、いつの間にかさえないあのサラリーマン風の男性が立っていた。
ハンカチで汗をふいている。
「あなたは――」
「ええと、今回はあなたにある情報を届けに参りました」
男性は言って、小さな紙片を手渡してくる。
「ちょっと待って!」
受け取りながら、私は男性の腕をつかむ。
「な、何です?」
「あなた誰? 何で私に魔法の杖だの、鳥のロボットだのをくれたんですか!?」
過去に言えなかった疑問を、ここぞとばかりにぶつける。
「ですから、私はただのお使いみたいなもので……」
「じゃあ、誰に頼まれたの!? こんなことして、何の得があるの?」
「……それは私にはわかりません。ただまあ、あなたにはわかるだろうと言われましたけど、『転生特典』の後払い、のようなものだとか……」
「てんせい? それは、私を生まれ変わらせた相手ってことですか?」
「まあ、はい、そうです」
男性は恐縮したように何度もうなずいている。
「それって、神様ってこと?」
「うーん。それはまあ、そういう解釈でもいいんじゃあないかなと思いますが」
「あなたの上司……多分だけど、そうなんでしょ? それがわからない?」
「私も何もかも聞いているわけじゃあないんです。カンベンしてください」
「そう……」
私は煮え切らない相手の態度にいらつきながらも、いくらか気分を落ちつかせた。
「じゃあ、その神様だかの超能力? を使って、私たちを助けていただけませんこと?」
「そ、そういう権限も能力も私にはないんですよ」
「じゃあ、ホントにただのお使い?」
「だからそう言っているじゃあないですか」
男性はちょっと泣きそうになっている。逆に私のほうが情けない気分だ。
「ただ、お渡しした情報がきっと助けになるだろうと聞いてはおります」
「これが?」
改めて確認してみると、どこかの住所が書かれていた。
関東圏だからだとかなり遠いな。
「では」
私が紙面を見ている隙に、男性はするっと手を逃れて小走りに逃げ出す。
「あ、こら……!!」
叫んだが、その時にはもう姿は見えない。気配もない。
「はあ……」
私は紙を慎重にしまい、納得できないまま席に戻った。
そして、時はまた動き出す――何も変わらないまま。
だが、私はジリジリと焦りを抱えながら、紙をしまったポケットを触り続ける。
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