その114、佐藤について語る
忘れた分を入れて本日2回目の更新であります。
結局、勝負は田中くんの勝ちだったようだ。
仰向けでぶっ倒れているケライノと、その横で座り込んでいる田中くん。
こんなアホな騒ぎのせいで中断していたが、学校に関する話は続く。
「近日中に専用の校舎はさすがに難しいので、来年までどこかのビルでも借りまして、生徒をそこで学ばせましょう」
「まあ、基礎的なことなら、大した設備もいらないね」
「他には……。ああ、生徒の年齢ですね。まあ、幸い二十歳以上の者はいないんですけれど。18歳と5歳児じゃあだいぶ違いがあります」
「小さな子はあわてて対処せずとも、まあいいだろう。まずは18以上の候補者をきっちりと教えていけばいい」
「なるほど。選別の参考になりますな……」
そんな話し合いがしばし続いた後、小休止となった。
一同は運ばれてきたお茶とお菓子を楽しむこととなる。
「そういえば、黒羽さん。佐藤のことですが」
「――ああ。あの、テロリストね。あの後、どうしたの?」
一応捕まえたのだが、処置は松上少年に任せておいた。
「自首させました」
「よくまあ、うんと言ったわね」
「ええ、魔女党が政権を追われてからは割と素直に。本当なら色々働いてもらいたかったわけですけれど、本人が拒否したので」
残念です、と松上少年は言った。
「それに、無茶な魔法を乱用してたせいで、あまり長くないようです」
「……無茶か」
「ええ。それに本人も治療する気はないようだした。本気で明日を考えてなかったんですな。良いか悪いかはまた別として」
「良いとは思えないけどね……」
私はため息をつき、そしてふと思い出す。
「ねえ。そういえば彼は坂本さんを見た時動揺したみたいに思えたんだけど……?」
「ああ、それですか」
松上少年は答えてから、少し考えこむ。
「……まあ、黒羽さんにはいいでしょう。答えはこれですよ」
と、私の前に四角い画面が展開した。
それには、地味なメイド服を着た人形のような女の子が映っている。
いや……これは……。それに……。
「人形……。いえ、人型ゴーレム?」
「ええ、彼が所有していたゴーレムの写真です」
「……そう」
私は写真を見て、すぐに察した。
何故ならゴーレムの顔は坂本ゆみかとよく似ていたのだから。
「ありがちな話ね……」
言いながらも、私が何とも妙な気分だった。
「偶然だとすれば、ずいぶんと悪趣味な運びだこと」
廃棄されたゴーレムの復讐をする男の前に、それとそっくりな生身の少女が立ちふさがる。
ひどい話だ。
「佐藤は、ある偶然から異世界のダークエルフと交信する道具を手に入れて、ダークエルフと契約したようです。見たところ小型の香炉みたいなもので、確かに魔力のない人間でも扱えるものでしたね。けど、かなり古いものでした。地球と異世界の関係は実はもっと古いものなのかもしれんですねえ」
「それがなかったら、佐藤の事件はなかったと思う?」
「どうでしょう。でも、あの目つきからして、例え魔法がなくってもいつか似たようなことはしでかしていたかもしれません。まあ、何とも言えませんが……」
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