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110/301

その110、エライヤッチャ・エライヤッチャ

まだまだ終わりは見えません。




「でも、何だってそんなアブナイことしたんだろ?」



 田中くんは納得いかないようだった。私もあんまりいかないが……。



「大気中の魔力素を集めて使うには、今の人類はあまりにも未熟です。なので、魔力が結晶化した魔結晶がエネルギー資源として重要なんですが、それは今の地球にはない。だから魔結晶をあてにすることはできなかったんですけれど……」



 松上少年は説明しながら、一同を見回す。何だか学校の先生みたい。



「地獄という魔力に満ちた場所とつなげることで、大量の魔力資源を得ようとしたんでしょ。未熟な術をカバーするためにもね。でも、失敗した」


「そして、危険な外来生物……じゃない、モンスターを呼び込む羽目になったわけね……」



 私は何とも言い難い気分で、頭を振った。



「さすがにあの失敗で懲りたようで、以降同じような実験は行われていないです。もっとも、この国に限った話ですけどね。外国じゃあ多少危険をかえりみずに独自の異世界ゲートを開く実験が繰り返されてるみたいです。まあ、十中八九つながるのはダイノヘイムにですけれど。おそらくはほとんどが海のど真ん中でしょうね。あっちは8割が海だから」


「海上にも、魔物のたぐいはたくさんいるがな?」



 ダークエルフはクスクスと笑う。


 それを見る松上少年はうんざりしたような顔になった。



「中には水陸に適応できるタイプもいる。そのうち、馬鹿でかいモンスターを召喚してえらいことになるでしょうよ。もうなっているかも」


「……」



 私は脱力する。



 仮に異世界転移が何とかなったとしても、地球は危なそうだ。


 人間自身が未熟な技術で危険を招き寄せているのだから……。



「でもさ。あんた、助けてやるみたいなこと言ってたけど、その保証あるのか?」



 田中くんはダークエルフを疑い深そうに見た。



「ないな。ま、助けてやると言っても、私個人のできる範囲だから」


「ダークエルフ全体じゃあないのね……」



 私は苦笑した。何となくそんな気はしていたが。



「お偉方に一度報告したが、ほっとけと言われたよ」



 と、ダークエルフは笑う。



「まあ、自分の力もわきまえずに鎖国した人間が、転移でどうなるのか……。見世物としてはそれなりに上等だわな」


「見世物だと!?」



 ダークエルフの軽口に、田中くんが立ち上がった。



「落ちつけよ。坊や」



 つかみかかりそうな勢いの田中くんに、ダークエルフはまったく動じない。



「チンケな魔力を得ただけで神様気取りに増長する女。それを何ともできない男。一体どこを褒めたたえたらいい? どこの国、どこの民族を見ても大した違いはない。これで人間だけの世界だったらまだわかるがな? エルフをはじめとする他の種族の存在を知ってなお……」



 この有様だ、とダークエルフは肩をすくめた。



「まだ魔法を禁忌として捨てるほうが健全だぞ。ある意味ではな」


「しかし、すでに害はなされた。それをグダグダ言っても始まらないのですよ」



 松上少年は田中くんを座らせ、茶器を手に取り、



「我々はこの先、魔女狩りに加えて、転移としてそれに合わせて起こる災害に――」



 対処せねばならなくなりました、と言ってお茶をカップに注ぐ。



「魔女狩りとテロリストだけでも散々だったのに……」



 田中くんは元気さをなくし、グッタリとうなだれていた。



「ええ。ですから、こうなったらどんどん人を巻き込みましょう」



 と、松上少年は手を広げた。



「巻き込む?」


「いかにも。まずは、我々の家族から――」





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