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その11、ヒーローに感謝を……ということで

定番ネタですね。




 いざ、教室に入ってみる――



 やっぱり欠席している生徒が多かった。


 それでも、気丈に登校している者も多い。



 前世の感覚で言うなら……。



 いきなりテロリストが学校を襲ったようなものだろうか。



 それとも。



 凶暴なヒグマが校庭に侵入してきた?



 どっちにしろ、ショックは少なくないはずだ。


 そう思うと、みんなたくましいなあ……と思いつつ、私は席についた。



 何気なく教室を見回していると、ぎこちない様子で後藤まきめが入ってくる。


 私を見るなり、彼女はビクッと動きを止めた。



 軽く手を振ってやるが、表情は硬いまま。


 仕方ない。フォローしてあげるか。



 私は立ち上がって、



「後藤さん、おはよう」


「……お、おはよう、ございます」



 まきめは目をそらしながら一応返事をする。



「昨日は、何ともなかった?」


「……はい」


「……」


「顔色、良くないけど」


「ご、ご、ごめんなさい!!」



 いきなり、まきめは頭を下げた。



「え」


「あの、昨日自分たちだけで、逃げちゃって……」


「……ああー」



 そういえば、そうだったな、と思い出す。


 正直良い気分はしなかったけど……。



 あの時ノロノロしてても、余計な犠牲が増えただけかもしれない。


 それにまあ、自分で逃げろと言っちゃったしな。


 会ったばかりの相手のために、命を張れというのは理不尽だろう。



「しょうがないわ。非常事態だったもの。あの時は逃げるのが正しかったと思う」



 そういうことにしておこう。



 私はそう言ったが、まきめは表情が暗いままだ。


 罪悪感というのもあるんだろうな。



「気にしないで。あの怪物は正義のヒーローがやっつけてくれたみたいだし」



 自分で言ってて恥ずかしいが、やむを得ない。



「え?」



 まきめはよくわからんという顔。



「ネットで見なかった? あの黒いスーツの……」


「あ、アレですか」



 どうやら彼女も知っているはらしい。


 けっこう情報は広がっているっぽいな。



「よくわからないけど、私もあなたも無事だし。良しとしましょ?」



 と、私は肩をすくめてみせた。



「じゃ、許してくれるんですか?」



 まきめはちょっと涙目だった。



「うん。とりあえず、あの黒いヒーローに感謝ということで」


「は、はい」



 彼女はようやく笑顔になった。



 そういや、もう一人の吉田エミリだっけ? 彼女はどうしているだろう?






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