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109/301

その109、会談にて――



 嫌な沈黙がその場を支配した。


 ダークエルフはただ一人、面白そうにニヤニヤしているが……。



「それを私たちに話した目的は? 嫌らがせ?」



 私は追い詰められた心境から、つい毒舌を吐いてしまう。



「まあ、それもあるが……別の契約者から頼まれたんでな」



 ダークエルフは少し居住まいを正し、紅茶を飲み干した。



「別の?」


「ああ。山田と言えばわかるか」


「山男のあんちゃんか……!」



 私よりも先に田中くんが反応した。



「転移のことを話したら、何とかして欲しいとしつこく頼まれてな。で、根負けした」


「彼が……」


「世の中をすねて、恨んでいた男が、どういう心境の変化かなあ」



 不思議そうにダークエルフは言うのだった。



「それで。我々を援助でもしてくれるのですかな?」



 松上少年が膝を一つ叩いて言った。



「ああ。そうしてやってもいい。だが、転移はどうにもならん」


「なりませんか」


「ああ。ならんな。まさに神の思し召しってやつだ」


「神ねえ。あなたたちも神様を崇めていると?」



 私はちょっと意外だった。イメージ的には神様とは対立しそうな種族である。



「世界に満ちる数多の神々には敬意を持っているさ」



 お前ら風に言うと、八百万やおよろずの神々か? とダークエルフは笑う。



「そういえば、エルフ族も多神教だったなあ」



 松上少年は思い出したようにつぶやく。



「そう。特に原初の大神にはな。我らは大神のしもべとして造られたとされる」


「ふうん。まあ、信仰のお話はいいとして……具体的にどう助けてくださるの?」



 私はお茶のお代わりを煎れながら、チラッと見る。



「そうだな。日本が転移した際には、我らで援助してやろう。完璧とはいくまいが」


「なるほど。それは助かりますな」



 松上少年はうむ、とうなずいた。



「他にできるのは、事前の対処だな。まあ、遅れている魔法を強化してやるか」


「それもありがたい!」



 またも松上少年は膝を打った。



「けど。今の政府がYESというかしらね……」



 異世界とは距離を置いている魔女党政権だ。



「だったら、それが倒れればいいんじゃないか?」


「クーデターでも起こす気?」



 ダークエルフの笑みに、私はつい嫌な顔をしてしまう。



「それも面白いがな。政権に不利な情報をばらまけば、野党に比重が傾くだろうさ」


「例えば?」


「この間、蜂の魔物が大量発生したろう?」


最猛勝さいもうしょう……」


「あれはな。お前らの言う地獄に住む魔物だ。未熟な術で地獄の穴を開いたから出た」


「……!」


「やっぱりですか……」



 困った……いや、困り果てた顔の松上少年を、私は思わず睨んだ。



「地獄なんてものが、本当にあるの?」



 まあ、妖怪だの魔法だの異世界だのがあるのだから、不思議でもない……のか?



「仏教などの言うものとは、厳密には違いますがね。ダイノヘイムとは別種の異世界だというべきしょうか。僕も詳しいことはわかりませんが…………」







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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界への転移と言うか融合、異世界人が来訪しているから空気や重力は問題ないけれど転移先の気候や環境次第では即壊滅ですよね。 例えばアフリカ大陸がイギリスくらいの寒冷な地域に転移したら動植物…
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