その108、話は聞かせてもらった。地球は異世界転移する!
「ずいぶんと、突拍子もないご意見ね?」
「そうかな? お隣のおちびちゃんはそう思ってないようだがなあ」
「……」
私はチラリと松上少年を見る。
少年は、棒を飲み込んだような表情で黙り込んでいた。
いつものと子供らしくない余裕の表情はどこにもない。
「その、根拠は?」
黙っている松上少年に代わるように、私はダークエルフに質問する。
「この国は、かつて地震が多かったそうだな? 今はどうだ」
「地震? それは……」
学校などで避難訓練は何度かやった経験がある。
しかし、そういえば本物はこちらに生まれてから、まだ経験していない。
ニュースなどでも皆無だ。
「ここ10年ほど、この国では地震が発生していない。その代わりに、モンスターがあちこち出てくるようになっているなあ」
「それはまあ、確かに。でも……それが」
「少し調べればわかるだろうが、全国で発生がゼロなんてありえないんだよ」
「地震の膨大なエネルギーが、別の何かに変換されている――」
抑揚のない声で松上少年は言った。
「その通り。それが何かは、わかるよなあ」
「……以前地球上のあちこちにあった放射性物質、その放射線量も異常な速度で減っている。代わりに、魔力素がどんどん増えていっている」
松上少年は続ける。
「魔力は、放射線を吸収して増殖する性質がある……。専門家ではないので、あまり正確には言えないが、基本それは有害なものほど強烈に」
魔力素は魔法や、モンスターなどが存在するために必須のものだ。
「だから、地球では魔法が使いにくい……いえ」
私はつぶやき、首を振る。そんな話は異種族からも聞いたことがない。
「放射線などで増殖する魔力素は、その性質を利用して大量に生み出すこともできる。魔法に長けたエルフなんかは、魔力の薄い地球でも特に問題はなかった。ただ、自然発生する魔物は生まれない……あくまで最初期は、だけど」
「けど、今はバンバン生まれているよな。そして、ダンジョンも」
ダークエルフはパチンと指を鳴らす。
すると、いくつもの四角い映像が映し出された。
そこには、以前見たダンジョンの入り口と同じものが――いずれも場所は違う。
「すでに30ヶ所以上にダンジョンが発生している。転移すれば、その衝撃というか余剰魔力で爆発的に増えるだろうなあ。もっともそれは一過性だが」
「魔力の充満している異世界……ダイノヘイムに移転すれば、モンスターの発生はさらに増大してしまう……おそらく、魔女狩りも……」
「その転移だか、引っ越しだかを、止められないのかよ!?」
後ろで聞いていた田中くんはたまりかねたように叫んだ。
「無理だな」
ダークエルフはすげなく首を振った。
「……でも、地球を飲み込んだら、ダイノヘイムはギッチギチになるわね」
私はあまりに大規模な話に、眩暈を感じていた。
「まあ、そのへんは大丈夫でしょ」
松上少年はため息。なんで? と、私が聞くと、
「ダイノヘイムは、大きさは地球の126倍あります」
「うわあ」
「向こうは、我々の住むような惑星でないので、一概に比較もできませんけどね……。まあ、陸地は2割程度しかなく、全体が海だそうですから……」
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