その107、ダークエルフの語ることには
爆弾級の新事実が語られる……!?
「まあ、そう気を張るな。話もできない」
自宅のようにくつろいだ態度のダークエルフ。正直、むかつく……。
だが、睨み合っても意味はない。
「……そうね」
私は肩の力を抜き、ため息をついた。
「でも、今はすごく疲れていて、すぐにでも休みたいところなの。また今度というわけには、いかない?」
「それは困るな。いや、困るほどでもないが、わざわざ二度手間にする気はない」
言うなり、ダークエルフは指を振った。
と、私の足元に魔法陣が現れる。いや、私だけではなく田中くんや松上少年にも。
魔法陣から光の粒子が流れ、私たちを包む。
ホッとなるような感触……これは、回復魔法か。
澱のように貯まり、固まっていた疲労がじわじわと溶け、消えていく。
「それなら話もできるだろう?」
「ええ。何もないけど、お茶とお菓子くらいはご馳走しましょ。口に合うかは、わからないけど」
「日本のお菓子は好きだ」
「良いのかな……?」
田中くんは不安そうというか、不服そうでもあった。
「あっちがその気になら、とっくに殺されていますよ」
松上少年は肩をすくめ、テーブルの用意をしてくれた。
私はティーパックの紅茶とお茶を淹れ、買っておいたお菓子の袋を開ける。
「うむ。美味い。安くてもうまい菓子があるのは良いことだぞ」
ダークエルフは遠慮なしに、というか無警戒にお茶やお菓子を飲み、食べた。
「それで? お話というのは」
「ああ、そうだな。まずは……」
ダークエルフは倒れている佐藤に目をやった。
「そいつを回収に来た。一応私の契約者だからな」
「彼に魔法を与えたのは、やっぱりあなた?」
「ああ。復讐の成否までは保証しなかったがな」
「そのおかげで、こっちはずいぶんな目にあいましたよ……」
「氷山の一角、というやつだな」
「え」
「奴と同じような男が、他にもいないとでも思ったか?」
嘲るようなダークエルフの言葉に、私は心臓が跳ね上がった。
そうだ。
かつての弾圧は全国規模でも起こっていた。
魔女党の前身や協力者によって人生を失った人間が、大勢いる。
折あらば、復讐を。それも自己保身さえ考えない復讐希望者が……。
「ま、連中の望みがこの国の大破壊ならば、それはまもなくかなう。嫌でもな」
「どういう意味ですかな?」
松上少年が鋭い眼で言った。
「そう睨むな。私たちが何かするわけじゃない。自然とそうなる」
「……モンスターの大量発生でも起こるというの?」
「それはもう起こってるじゃないか」
確かにそうだ。では、何が……。もっと大きな自然災害か?
「近いうちに、遅くてもあと3年以内に、この列島は『こちら側』に飲み込まれる」
「――日本列島がダイノヘイムに転移するとでも?」
「いずれは、この惑星全体がな」
若干同情するように、ダークエルフは私たちを眺める。
また、とんでもないことを聞いてしまった……。
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