その105、プロペラとカブトムシ
前から考えていたアイテムがやっと登場できました。
<ジンさん、今のうちに逃げて――>
カブトムシ仮面は魔法通信で話しかけてきた。
聞き覚えのある声……。
まさか、ひょっとして、これは。
<田中くん?>
<いかにも>
応えながら、カブトムシ仮面はその全身で警察の攻撃を受け切っている。
だが、まるで堪えた様子はない。恐ろしいほどの防御力だ。
<わかった……。今は任せるわ>
<了解!!>
ともかく。
私はその場を田中くんに任せ、秘密基地に逃げ込んだ。
息をつきながら、まずは佐藤を降ろす。
佐藤の顔は、いつの間にか普通のものに戻っていた。
ただ、魔力は微弱になっている。心臓の音もだ。
<生命反応あり。魔力反応低下中――>
一応、すぐに起きて暴れることはなさそうだが……。
しかしまあ、念のため。
私は魔法で佐藤を拘束してから、回復魔法に専念した。
それにしても、まったく。こんな目にあうとはな……。
今すぐにシャワーでも浴びて眠りたい。
だが、そういうわけにもいなかった。
<映像接続――>
今現場はどうなっているのか。
確認してみると、田中くんが盾となって魔導警官の相手をしている。
魔弾も、格闘も、何も受け付けずに大暴れ。
飛びかかる警官をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、である。
とにかく、何をされても平気の平左だ。
やがて、警官を統率している蜂仮面がサーベルを振るって飛びかかった。
それを腕の装甲で受け止める田中くん。
あ、折れた。
魔力で強化されているはずの武器も、あっさり破損させるとは。
硬さがすごいのか、向こうがへぼいのか。それとも両方か。
やがて、警官たちは後退し始めた頃だった。
何やら、秘密基地の格納庫で大きな音が。
走っていくと、格納から黒い飛行機のようなものが飛び出してくる。
っていうか……マジでプロペラ機?!
大昔の零戦みたいな戦闘機が、勢いよく発進していくのだった。
機体には、金色のカブトムシマークが光っている。
そして、入り口を通って外へと飛び出す。
カブトムシの、プロペラ機……ね。はははは。
現場に飛び込んだプロペラ機は機銃を合成獣に撃ちまくる。
これも魔弾で、威力は鳥型とのそう変わらないようだ。
だが、そろそろ鳥型ツールは燃料切れだな……。
<鳥型ツール、活動限界まで残り1分――>
ほら、きた。
結局入れ替わるような形になってしまったな。
プロペラ機は旋回しながら合成獣を攻撃、翻弄する。
合成獣は主がダウンしているせいか、ただ闇雲に暴れまわっていた。
蟹型のレーザーを喰らっても、しつこく毒霧を吐いている。
ああ、もう公園はグッチャグチャだよ……。
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