その103、テロリストは止まらない
ずっと戦闘シーンばかりな気がする今日のこの頃……。
<広域探知。高濃度魔力確認――場所……>
私が佐藤を吹っ飛ばした後、反応を確認した。
県庁に近い場所と、高速道路内のある地点。
飛行自動車の普及で、旧来の高速道路は寂れつつある。
それでも、普通の自動車がけっこうあるの現状は維持されているが。
「もう、あんたのテロは失敗した。警察に渡す気はない。このまま去ってくれ」
私はダメージを受けて屈みこみ佐藤に、淡々と言った。
「……嫌だね」
佐藤は、一瞬身震いした後、顔を上げる。
私はそれにギョッとして声を出しかけてしまった。
佐藤の顔は、爬虫類のような特徴を持った異形に変化していたのだ。
鱗に覆われた顔に、毒蛇の瞳。
明らかに尋常ではない。
元々、異種族だった……いや、この感じはおそらく違う。
何より、感知される魔力が普通の反応ではなかった。
バイタルが不安定なものになり、メラメラと燃え上がるような反応。
これは……明らかに、佐藤自身に大きな負荷をかけている。
そのくせ、魔力は先ほどとは比較にならないほど強力なものに。
どうやったのかは、わからない。
だが、多分佐藤は自分の命を削って、魔法と魔力を手に入れたのだろう。
そうなると――
私は身構え、冷たい覚悟を腹の底で決めるしかなかった。
佐藤は、自分の命などとっくに捨てているのだろう。
命を捨てても、自身の憎悪を全うしようとしている……。
さっき見た狂人の瞳は本物だったようだ。
もはや、きれいごとの説得で止まる相手ではない。
あるいは10数年前からそうなっていたのかも。
私は無言で構え、嫌の気分を抑えながら拳を握り直した。
もしかすると、人を殺すことになるかもしれない。
「しゃああああああああああああ!!!」
佐藤は蛇の呼気音を吐き、マシンガンを乱射してきた。
私は顔を両腕でかばい、ダッシュする。
装甲が削れ、体のあちこちに被弾して痛む。
しかし、下手に距離を取れば千日手になりかねない。
私は接近して、本気のパンチで殴りかかった。
それに、佐藤の銃剣が返してくる。
前に増して切れ味や重さが凄まじい。
当たり所によっては、手足が落とされる危険もあった。
力を温存できる状況ではない。
<魔力ブースト――>
私は短期決戦のため、魔力をフル稼働で挑みかかる。
本気の殴り合い、斬り合い、刺し合いだ。
佐藤からはどんどん人間的な部分が削れ、毒蛇に近づいていく。
考えてみれば、こいつの操る魔女狩りがFA選手たちを何人も殺めている。
犠牲になった警察官もいる。
すでに、彼は『向こう側』に行ってしまったのかもしれない。
躊躇すれば、こちらが犠牲者の一人にカウントされるだけ。
私は思考を切り捨て、ただ相手を打ちのめすことだけに集中した。
それでも、おいそれと倒れてはくれない。
私が殴れば、相手が斬りつける。
傷つけ、傷つけられた感触だけを感じて、私は無我夢中で動いていた。
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