その102、凶行は防げるか?
「断る――」
佐藤は即答した。
同時に、その頭上に不気味な輝きの魔法陣が展開していく。
「では、仕方ありませんな」
松上少年のため息に、私は軽く拳を握った。
魔法陣からは、前以上に禍々しい雰囲気をまとう合成獣が現れる。
まるで、佐藤の恨みや憎しみを全てまとっているかのようだ。
多分どうあがいても説得は無理だったのだろう。
私と松上少年も、鳥型、蟹型のツールを呼び出す。
2体の頼もしい僕がいても、合成獣の魔力・迫力・圧力は強烈だ。
佐藤が、マシンガンを右腕に融合させる。銃剣がギラリと輝いた。
合成獣が吠えて、サソリの尾をぶるんと震わせる。
と、毒針が一瞬膨れ上がったかと思うと、巨大な針がミサイルのように飛んだ。
さらに、毒蛇の顔からは毒霧を吐き出す。
鳥型ツールは背後に回り込みながら、魔力弾を連射する。
蟹型は短いチャージから、レーザーを撃った。
いずれも着弾したが、合成獣は怯まない。そして止まらない。
前よりも強度・防御力が増しているようだ。
松上少年が障壁を展開して毒霧を防ぐ間、私は佐藤に挑みかかった。
放たれる弾丸をかわし、防ぎ、肉薄する。
そうすると、今度は銃剣が獣のように襲ってきた。
装甲で覆った腕や足で受け止めるが、ビリビリと軽い痺れが走る。
力はそれほどでもないのに……。
<毒魔法探知――>
なるほど、刃の毒がわずかながらにも伝わってくるのか。
こいつはやっぱり、面倒くさい相手だ……!
佐藤自身の腕は圧倒されるようなものではない。
だが、全くの素人でもなかった。
確実に私の急所を狙い、攻めてくる。
何よりも山田にはなかった凄まじい気迫があった。
必ず、殺す。
そういう呪いのような信念とも妄執ともつかないものが。
やがて、装甲と刃がぶつかり合い、鍔迫り合いのような形になった。
暗い炎を宿した、佐藤の目が睨んでくる。
ほとんど、狂人のように思えた。
「俺を足止めしても、無駄だぞ……」
暗い、濁った笑みを含んだ冷たい声で佐藤は笑う。
「――知っている!」
私は答え、掌底で佐藤を吹っ飛ばした。
佐藤の他にも、別動隊が何らかの破壊行為を行うだろう。
松上少年はそう予測していた。
おそらく今度は狙った場所にモンスターを発生させるだろう。
「そんなことが簡単にできるの?」
「人間には無理でしょうがね。でも、エルフやダークエルフなら難しくない」
ましてや魔物の発生しやすい日本の環境下なら……ね、と松上少年は首を振っていた。
「かなり隠密性の高い魔法を使うでしょう。けれど、直前に高い魔力が検知されることはまず間違いない。それが被害を小さくできる鍵かも」
「検知できたとして、誰が対処するの」
「それは仕事をする人たちにやってもらいましょうよ」
笑いながら言って、松上少年は空中にデータ画像を映してみせた。
現在日本で活動している異種族の魔法使いたちを。
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