その10、羹(あつもの)に懲りてなますを吹く
翌日の学校。
家。
無駄に大きな、豪邸と言える家。
町の郊外にあるそれが、現在の住居。
もっとも、帰宅しても父も母もいないようだった。
両親ともに仕事やら何やらで忙しい身分である。
やることは、色々ある……。
ともかく、あの魔女狩りに対して対策を立てねば――
そう思ってはいたのだけれど。
部屋に戻るなり、私は制服を脱ぎ捨ててベッドに潜り込んでいた。
疲れた。
とにかく、色んな意味で疲れた一日である。
前世の記憶は戻るわ、最悪の未来は知るわ、いきなり学校が襲われるわ……。
まるで悪意のある誰かに弄ばれているみたいだ。
これは、いわゆるアレだろうか。
私を転生させた、神様みたいなものの仕業?
大体あのサラリーマン風のオッサンは何者?
いくら考えてもわからず、そのうちに眠気が襲う。
学校、どうなるのかしらん。
そんなことを思いつつ、私は眠ってしまった。
――。
気がつくと、外が薄明るい。
時間を見れば、早朝の6時過ぎ。
ちょっと体が気持ち悪かった。
シャワーも浴びずに寝てしまったせいらしい。
部屋を出ると、
<おはようございます。お嬢様>
ゴーレムのメイドがやってくる。
女性型だけど、そのデザインはロボットみたいな感じ。
まあ、可愛らしいからいいんだが。
この世界では、富裕層はこういうメイドゴーレムを持つのが主流である。
下手な人間よりもはるかに使えるし、信用できるから。
うちには計5体ほどのメイドゴーレムがいて、日夜働いているのだ。
<食事になさいますか?>
「うん、お願い」
そういうわけで。
私はシャワーを浴びてから食事を済ませた後、
「学校は今日どうなってるの?」
<普通通りあるので、登校するよう連絡がございました>
「そっか」
どうやら、臨時休校はないらしい。
昨日の今日でショック受けてる子も多いんじゃないかと思うのだが。
私は若干早めに家を出て、学校に向かった。
自家用車による送迎。
ついでに言うと、この車も新型の魔導エンジンである。
空中飛行機能まであるという優れものらしい。
で。
校門の前で車を降りた時、私はギョッとした。
学校は、まるで戦争みたいにガッチリ警備されていたのである。
昨日の数倍の警備員に、警備用のゴーレムまで並んでいた。
登校してくる女子たちは、むしろこの厳重さにビビっている……。
羹に懲りてなますを吹く――そんなことわざが私の頭に浮かんだ。