その1、前世の記憶が戻ったら最悪だった
アニメに世界に転生してしまうお話。
転生先は悪役令嬢。
4月8日。春。晴天。
私は胸を躍らせ、校舎に向かう途中だった。
その時、突然世界が色を失った。
周りのあらゆるものがモノクロに変わり、動きをストップ。
まるで動画が停止したみたいだった。
「……え? なに、これ? 魔法?」
私が慌てているところへ、
「いやあ、間に合った間に合った」
モノクロの世界で、私以外に色のあるものがいた。
冴えないサラリーマン風の中年男。
「じゃ、記憶を戻すね?」
男は私に向かって、テレビのリモコンみたいなものを向けた。
瞬間。
パンッ! と、頭の中が弾けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――いやあ、あのラストはないなあ……。
『私』は、映画の帰り道SNSでつぶやきながら帰路についていた。
名前は……まあ、どうでもいいか。
どこにでもいる冴えないアラフォー女である。
学生時代から唯一続く趣味のアニメ。
その夜は、仕事の帰りに最近話題のアニメ……その劇場版を鑑賞したのだが。
――皆殺しエンドじゃん。
ネット配信版から色々物議をかもした作品だったけど、映画は色々ひどかった。
どんなアニメかというと。
まあ、一言でいえば魔法少女百合アニメである。
二次元の美少女たちがイチャイチャしながら魔物と戦ったり、青春したりする物語。
完結編になる映画では色々謎とかとけるのか? と思ったが。
何と魔法少女では倒せない魔物が大量発生。
登場人物は無駄な足掻きをしながら殺され、世界滅亡っぽい中で終幕。
映画終了後、劇場はほとんどお通夜みたいだった。
世界でも人気の出たシリーズの終わりがコレか?
――下手すれば暴動が起きるぞ……。
などと、『私』はネットの炎上具合を見ながらの帰宅途中だった。
そろそろ家につくかという頃、いきなり胸が苦しくなって……。で……。死んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこで私は我に返り、現状を理解した。
「問題なく思い出せたようですね。けっこう、それじゃ」
と、サラリーマン風の男はリモコンをしまい、消えた。
そして、世界に色と動きが戻る。
桜の舞う春。
多くの新入生が歩いていく。
今の私も、その一人だ。
だが、もうそれどころではなくなっていた。
最悪だ。もう死にたくなるほどに。
「『魔法少女リリアンゆみか』の世界かよーーーーーーーーーーーーー!!!!」
校庭のど真ん中で私は叫び、絶望した。
きっと傍からはおかしい人に見えたに違いない。
いっそ、そうだったらどれだけ良かったろう。
だが、どうやらそうではないらしい。
事態は、私の知るアニメどおりの方向へどんどん進んでいくようだ。
アホみたいな話だが、どうやら私は魔法少女アニメの世界に転生したらしい……。