第7話
新年度始まって2日目の学校である
新入生はオリエンテーションやら何やらと催しがあるみたいだが、そんなの関係なしに高2高3は授業が行われていた
板書のカツカツという音と共に先生の説明が入る
「この傍線部はラ変型である、故に……」
今は4限の古典の授業を受けている
古典は苦手だ
スイカカエテだのスイカトメテだの覚えることが多すぎる
加えて文学史もあるだろ?
暗記ものは基本苦手なんだよ
まあそんなことはどうでもいいんだ
して俺は名目上、アリサの学園生活サポートを一任されているわけだが、これまでのところ特に困ったことは無い
アリサが他の生徒と絡む(正確にいうと絡まれる)休み時間は、俺とアリサの席が前後であるのを利用して自然と会話に溶け込んで通訳役することに成功した
その流れで、昨日のLHRの後に森島先生に呼ばれた理由やそこで頼まれた内容を話すのだ
すると概ね
「なるほどなぁ〜 席も近いし、英語はペラペラだし適任かもな!」
(この発言は陽平がしたものだが)
というふうな反応が返ってくる
想定していたよりも自然な感じで、俺のサポート役としての地位が周知された
アリサ自身のカタコトもかなり上手に出来ていたので、日本語がペラペラなのはバレていないだろう
この調子でいけば、数ヶ月間徐々にアリサの日本語を増やしていくことで俺の役目は終わりになるだろう
そんなことを考えていると4限終了のチャイムが鳴った
昼休み、昼食の時間となる
陽平と飯を食べようと席を立つと
「悪りぃ!今日は一緒に飯食えねえ!」
と俺に告げながら陽平がダッシュで教室から出て行った
「佐原、何かあったのかあいつ?」
「陽平昨日部活サボってたでしょ?それで顧問がキレてるのよ…」
「あーなるほど、昨日のはサボりなのか」
「そうね、昨日のはね」
陽平が部活をすっぽかすのは良くあることなのでまあ気にしないでおこう
「さて今日はぼっち飯か」
購買に飯を買いに行こうとした時、アリサをご飯に誘おうとしてたであろう女子の1人から声をかけられた
「青峰くん、アリサちゃんお弁当を持ってないらしくて購買に行くんだったらアリサちゃんの分まで買ってきてくれないかな?」
弁当持ってきてねえのかよ!
困ったやつだな…
でもよく考えたらこれは単なるパシリにならないだろうか
可愛いからといってパシリをするといった覚えは無い、サポートはするが
なので
「俺はあいつのサポート役だがパシリじゃない、学校案内も兼ねて連れて行くよ」
と言って道連れにした
「わかった 呼んでくる〜」
そう言って女子はアリサを呼びに行った
アリサよ この俺をパシリに仕向けた罪は重いぜ…?
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「黙ってパシリされてればいいのに」
購買に行く途中、ぶつくさと文句を垂れるアリサ
「やっぱり企んでやがったか」
「当たり前よ クラス内じゃアンタと私はセットみたいな雰囲気になりつつあるじゃない そんな屈辱こうでもして晴らさないと気が済まないわ、いえ、この程度じゃ済まされないけれど」
そっぽ向き、俺とは顔を合わせずに歩くアリサ
「しょうがないだろ てか気をつけろ?? お前は日本語喋れない設定なんだからさ… 周りに人がいないからいいけど… それに、そもそも森島先生からの依頼だろこれは」
「そこはちゃんと警戒してるわ… というか前にもいったけど、お前っていうのやめてくれない?」
急に険しい顔つきで俺を睨んできた
「じゃあなんて呼べばいいんだ?」
いきなりアリサなんていうのも馴れ馴れしいだろうか
「そんなの自分で考えなさい 私に忠誠を誓ったなら自力で答えを見つけ出すことね」
いつあなたに忠誠を誓いましたかね…?
記憶改変も程々にしろよ この高飛車娘め!
「よーしそこまでいうならわかった これからはこう呼んでやる」
「……???」
身構えるようにこちらをみているアリサ
返答次第ではどうなるか覚えとけよって顔だな
「アリサ」
「!!!!!!」
俺は知っている
結局のところ、名前を呼び捨てで呼ばれるのが1番親しいという証拠なのだ
〇〇くん、〇〇ちゃん でも充分親しいと言えるだろう
しかし、それと同じかそれ以上に呼び捨てという行為は親密度が高いという証なのだ
そしてアリサのようなタイプには1番早く打ち解けやすくなる特効薬になることも知っている
「Are you idiot??? Jesus Christ!!![アンタバカなの???なんてこと!!]」
アリサの顔が真っ赤だ
名前を呼び捨てにされるのがそんなに恥ずかしかったのだろうか
普段ツンケンしてる女子が照れると実に可愛いものだな
「ははは I’ll treat you some sandwiches. For give me.[サンドイッチ買ってやるからそれで許せ]」
「むぅぅ…/// ちょうど家に財布を忘れたから都合がいいわ うんと美味しいサンドイッチを買ってきなさい!」
サラッとドジするよなこの人!
でも買ってきなさいとは心外だな
「いや、アリサも来るんだよ」
「その呼び方は…!って……え?」
アリサの目が丸くなる
その目の先に映る購買には、朝の満員電車に勝るとも劣らないほどの生徒数が押し掛けていた
電車同様、新年度ということでいつにも増して客が多いようだ
さぁここに2人で乗り込もう、という俺のちょっとした意地悪だった
アリサのキャラが作者の趣味ですね
ごめんなさい
ポンコツキャラが強すぎるかもしれません
もっとちゃんとしたツンデレを書くべきだろうか…