第2話
「これから1年間、君たちの担任となる森島だ。教科担当は英語。イベントが多い1年だ、最高のクラスにしよう。よろしくね」
俺の所属する2年2組最初のLHRは、新担任の森島先生の挨拶で始まった。
明るい口調で話すこの先生は、陸上部の顧問でもあり、学校内では男女を問わず人気が高い。
故に、この担任はアタリということになる。
「えーっと、みんなに自己紹介をしてもらおうと思ったのだが、その前に今年から加わる新しい仲間を紹介しておこうと思う」
俺の心の中を反映するかのように教室がざわついた。
自分の次の出席番号が誰になるのかというのは、学校生活を送る上ではかなり重要なポイントとなる。
いわゆる、ご近所さんが誰になるのかという話だ。
おまけに俺の出席番号は1番であるから、2番を受け持つであろうその転校生とは、ほぼ確定で今後関わる機会があるということになる。
「入ってきてくれ」
森島先生が廊下に向かって声をかけると、教室の扉を開けて、転校生が入ってきた。
「紹介しよう、アリサ ミルフォードだ。 なんと彼女はアメリカからの留学生で最近日本に来たばかりなんだ。 ちょっと待ってね? Alyssa, introduce yourself to your classmate [アリサ、クラスメイトに自己紹介をしてごらん]」
「Hi. I’m Alyssa Milford. I’m from America. I like soba in Japan. Nice to meet you.[こんにちは、私はアリサ ミルフォードです。アメリカからやってきました。日本では蕎麦が好きです。よろしくお願いします。]」
目を奪われる、とはよく言ったものだ。
本当に目を奪われた気分だった。
この世の「かわいい」だの「美しい」だのといった形容詞は、この子を形容するためにあるのではないかと思ったぐらいだ。
教室の皆もアリサの美貌に釘付けである。
「ありがとう、アリサ。さあ今度はみんなが自己紹介をしてくれ。もちろん英語でな?」
転校生での衝撃も収まっていない中、森島先生の無茶振りに教室は動揺に包まれてしまった。
「どうしたんだ? 高校2年生にもなって英語で自己紹介出来ないだなんて言わないでおくれよ? はいじゃあ、出席番号1番のキミからさっさと自己紹介、自己紹介!」
まさかトップバッターをやる羽目になるとは…
これまで、青峰という苗字には沢山の恩恵を授かって来た。例えば、身体測定や健康検診を1番で済ませることが出来たりと、まあ色々だ。
しかし今回に限っては、自分の苗字を呪った。
あああああああ!!!!
しかし逃げる事は出来ない。
覚悟を決めて、俺は英語で自己紹介を行った。
………
実を言うと英語は得意な方なので自己紹介自体はスムーズに終わった。
どうやら、1人目の犠牲者のおかげでクラスの緊張は解けたようで、その後はサクサク進んでいった。
俺を含め男子は殆ど赤面していたが。
陽平も例外ではなく、その時の佐原の目のハイライトが消えていたのを見たときは、香典の準備をすることに決めた。
全員の自己紹介が終わると、タイミングよくチャイムが鳴った。
終業の号令をかけるのかと思ったが、森島先生は突然こう言い出したのだ。
「青峰幸真クンとアリサはこの後進路室に来てくれ」
え?????なんで??