第1話
眠い…
教室に入ると、早速異変に気がついた。
座席表が黒板に張り出されていたのだが
俺の席の後ろが空白なのだ。
机と椅子は置いてあった。
ただ、2つ後ろに座っていたのは岡本壮司だった。
去年同じクラスだった人物である。
出席番号が隣だったのでよく喋った仲だ。
「おはよう、岡本。ここ誰が来るか知ってる?」
「おっす、青峰。残念ながら知らねーわ。そもそも俺ら以外のこの学年で、あ行を頭文字にもつ奴は一通り他クラスにいるみたいだし…」
よく調べてるな… だけどますます転校生の話が信憑生を帯びてくる。
「な?言ったろ?ここ絶対転校生ちゃんの席だって!」
「いや待て待て… なぜ女子確定なんだ」
「そんなん俺が女子がいいからに決まってんだろ!」
この男、欲望に忠実である。
故に地雷を踏むことが多々ある。
「ちょっと…? 私がいながら他の女に期待を向けるとはどういうことかしら」
「ゲッ… 綾音サンジャナイデスカ…」
「なーにーをー はーなーしーてーたーのーかーなー???」
「ゴ、ゴメンなさい…」
「謝罪じゃなくって、内容を聞いてるんですけど?」
おー怖い怖い… 笑顔で詰め寄るなんて、まるで漫画のようだ。
俺らにとってはいつもの光景だが読者の皆様には説明しておこう。
この女の子、佐原綾音は陽平の彼女である。
佐原の元々の性格がこうなのか、陽平の性格が起因してるのかはわからないが、はたから見るとお調子者とヤンデレカップルにしか見えないのだ。
「佐原、実は転校生が来るらしいんだ」
そこから陽平の弁解も加わり、場は静まった。
岡本も生徒の頭文字をチェックしていたぐらいだから転校生のことを知っていたと見えるが、俺と佐原は今日になるまで知らなかったらしい。
「ふーん。それで陽平くんは浮気を試みたわけね」
「だから違うってば!!!」
あぁ、これは佐原の性格がヤンデレ気質なんだな…
陽平、頑張れ。なんだかんだいいカップルと思うぞ。
心中でグッドを送ったが、果たして届いただろうか。
キーンコーンカーンコーン
始業の鐘がなる。
新しい一年の始まりなのだ。
そこから始業式を終えLHRが始まった。