第11話
これから先更新ペースが落ちると思います
その分1話1話丹精込めて書きますのでよろしくお願いします(いや別に今まで丹精込めてなかったわけじゃないんですよもちろん、量と質のバランスの話です)
「ところで、アリサは得意なスポーツとかあるのか?」
得意なスポーツがあるなら、その競技を行う部活を見学した方がいいだろう
「そうね… これといって得意なものはないけど、少なくともアンタよりは全てのスポーツにおいて勝っている自信があるわ」
コイツのこういった自信は一体どこから湧いてくるんだ??
転校初日に自分を優等生呼ばわりしたりとかさ
ネタで言ってるわけじゃなさそうで、大マジな顔してやがる
女性差別をするわけではないが、身体能力的に男子に敵わないスポーツはいっぱいあるだろ、と俺は思う
「なら、俺と柔道をやってみるか? 身長の低いアリサなら余裕で背負い投げ出来ると思うぞ。寝技だって負けな…… ハッ!!」
寝技と口にした瞬間、脳内で大変な絵面が浮かんでしまった
俺とアリサが寝転がって絡み合っている絵だ
別に目的はあくまで寝技であり柔道をやる上では至極当然な流れであるのに、思春期男子はそこに存在しない筈の要素を付け加えてしまう
「真性の変態ね はっきり言うわ キモい」
目からハイライトが消え、目つきが出会った初日の鋭さに戻ってしまった
右手はお得意のボディーランゲージに使われており、中指をこちらに突き出している
美少女がそんな下品な態度とるんじゃありません、と言いたいところだが今現在圧倒的に俺の方が下品なので何も言えない
アリサの好感度メーターが一気に下がった気がする
そもそも下がるほどの数値があったのかは知らないが…
でも、マイナスという概念があるからどこまでも下がる気がした
「そんな気は一切無かったんだがな、すまない。そんでどの部活を見に行く?」
気を取り直して、俺は話を進めた
「この超絶多忙を極めてる私を強引に誘ったんだから、当然その辺はリサーチ済みの筈でしょう?男なら黙ってエスコートしなさい」
放課後の図書室で小学生向けの漢字ドリルをやることがそんなに忙しいのだろうか
それでもアリサの言い分は正しい
誘った俺が選択肢を提示するのが筋だろう
「そうだなあ… じゃあ1個質問だ 個人プレーとチームプレーどっちを選ぶ?」
アリサは即答で
「個人プレーね 私は設定上日本語が不自由、つまり言語の壁があるってことよ そんな中でのチームプレイは厳しいわ」
確かにそうだ
アリサはチームメイトの喋っていることがすべて理解できるだろうけど、逆にチームメイトがアリサの言葉をすべて理解出来るかはわからない
カタコトを混ぜて話すとはいえど、それは完璧なコミュニケーションとは言えないだろう
「私個人の事情で部を困らせるわけにはいかないわ」
アリサは傍若無人に見えてちゃんと周囲の人間のことをしっかり考えている
でなければ日菜子さんの時のように、直接謝罪の必要のない人間にまで謝らないだろう
俺への当たりの強さも考えてくれたらなぁ、なんて思うこともあるが、今更変わったアリサなどアリサらしさを感じられないからこのままでいいと思ってしまう
やっぱ俺Mかもしれない
「となると… そうだな、卓球なんてどうだ?」
卓球は個人戦があるし、ちょうど良いのではないだろうか
「テーブルテニスね。 面白そうだわ さっそく行ってみましょう」
俺たちは体操服に着替えて卓球部へ向かった
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卓球部は体育館に付随している卓球室で部活を行なっている
卓球部の見学は既に始まっていたようで、入口の扉を開けた俺たちに室内にいる人間の視線が集まった
「遅れてすみません、部活動見学に来たのですが…」
すると部員と思しき人物が駆け寄ってきた
「ようこそ卓球部へ …って君の体操服は2年生のじゃないか」
そこで俺は説明する
「今日ここに来たのは、俺のためじゃなくて、あっちにいる留学生にためなんです」
アリサを見た部員は何か合点がいった様子で
「彼女が噂に聞くアメリカからの留学生か」
と聞いてきた
「はいそうです 俺はコイツのサポートを任されているので要は付添人です」
「そうか、じゃあちょっと彼女に聞きたいことがいくつかあるんだけどいいかな?」
というわけで部員からの質疑応答に応じた
その最中…
『すごい、綺麗だね〜』
『お人形さんみたい』『あの男の人彼氏かな?』という女子の話し声だったり
『やべえ!あんな可愛い子を生で見たの初めてだわ』
『卓球部に来てくれるように!やるぞお前ら!』 『でもあいつ彼氏っぽくね?』と言った声が聞こえてきた
やはりアリサの可愛さはどこでも通じるようだ
転校初日の日もクラス中が固まってたもんな
ただ、残念ながら俺は彼氏じゃないんだよ 本当残念だ しかしそれは彼らにとって朗報だろうから、何も言わない
一方こちらでは、卓球の経験に関する有無や得意不得意なことをいくつか尋ねられ、質問が終わった
「よしじゃあ早速ラリーに参加してもらおうかな ウチは細かい理屈抜きでとりあえず卓球に触れてみようっていうスタンスだから」
というわけなので
「Ok Alyssa. Now grab your racket and try some. Don’t worry, I think they’ll lead you.[よしアリサ ラケットを握ってやってみよう
心配すんな、あいつらが教えてくれるよ]」
アリサ本人は部員の発言をすべて理解済みだが、日本語が話せない設定上はこんな芝居をしなくてはいけない
「Sure I’m excited! [ええ、楽しくなってきたわ!]」
珍しくアリサのテンションが高かった
そこからは何回か俺もラリーに参加したりしながら、何事もなくその日の見学を終えた
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「なかなか筋がいいって部員の人も言ってたな あそこが第1候補になったんじゃないか?」
駅のホームでアリサにアイスを奢ったついでに買った自分の分のアイスを食べながら聞いた
俺がアイスを奢る理由?
それは、見学中にアリサから挑まれた勝負に負けたからだ
そしてハー●ンダッツを買わされた
別にスーパー●ップでもいいだろ
ちょっとは遠慮してほしいものだ
「そうね アンタにしては中々いいものを紹介してくれたじゃないの それに私が卓球でアンタより勝っていることも証明できたわ これで1競技目だけど 長い道のりになりそうね」
まさかコイツ全てのスポーツで俺に挑んで、あの発言を証明するつもりか
となるといずれは柔道も… と考えたところで思考をストップさせた
また変態扱いされたら困る
「ネットイン、エッジボールをあんなに繰り返されちゃ勝てっこないわ まぐれだよな、あんなの」
ネットインやエッジボールを狙って100%出来る人間がいるなら、その金髪美少女は今すぐプロを目指した方がいい
で無ければ、偶然だろう
「ま、まぐれですって? ったく、負け犬の戯言はムカつくわね 狙ってやったに決まってるでしょ」
まぐれの言葉に反応したのか声が一段と高いぞ
あと何で視線が泳いでるんですか
「おーそれはすごい それはプロ入り確定だな」
「なるわけないでしょ 馬鹿なの?」
なれるわけない、と言わないところがアリサらしい
と思ったところで電車がやってきた
「そうだ 明日の見学をどうするか考えといてな」
「わかったわ」
そして俺たちは電車に乗り込んだ
朝よりは圧倒的に空いている
朝もこれぐらいならいいのに
今日の晩ご飯は何かな…
雪奈の作る晩飯を楽しみにしながら家に帰った