第9話
実はアレも伏線でした
回収が早すぎるかなって思ったけど
忘れそうなので組み込みました
ブクマがめちゃめちゃ増えてるの凄く嬉しいです
気合い入れて多めに書きました
24時間で2話投稿するのは久しぶりです
それではお楽しみください
「ここに無いんじゃどうしようもないな…」
アリサが電車の定期を落としたというので、一緒に探しているのだが一向に見つからない
駅の落し物センターにあるかもしれないということで訪ねてみたものの、定期の落し物は届いてないそうだ
念のため落し物申請をしておいたが、そもそも落とした定期が見つかるかどうかはわからない
「今回ばかりは私不手際よ 付き合わせて悪いわね… はぁ…どうしようかしら」
あの、アリサ・理不尽フォード(命名:俺)が謝罪の言葉を述べただと!?
いつもの調子だったら
『アンタが私のペースを乱すようなことばっかするからこうなるのよ! どう責任を取るつもり!?』
などと責任転嫁のカーニバルなのだが
よほど堪えたのだろうな
定期を失くすのは、単純にお金の無駄ということになる。しかも月初めだ、額の半分すら乗車していない
単純故にダメージを自覚しやすく落ち込みやすい
おまけに今日は家に財布を忘れたらしく、一文無しらしい
絶望とはこんな時のことを指すのだろうか
「大丈夫さ 次は交番にでも行ってみよう 今日中に見つからなかったら俺が電車代出すからよ そう落ち込むな」
「そうね… アンタのお金で電車に乗るなんて… 今日ぐらいは我慢してあげるわ」
うん、我慢しなくてもいいんだけど??
でもいつもの調子が出てきている
少しは元気が戻ったのだろうか
だとすればそれは良いことだ
「さ、行くか」
俺たちは駅を出て最寄りの交番へ向かった
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「あー!ミルフォードさん?だっけ 落し物届いてますよ 良かったですね〜」
なんと、見つかった
案外あっさり見つかるもので驚いた
よく外国人が日本訪問中に財布を落として困ったが、すぐに返ってきたという話を耳にする
しかし身近に似たようなことが起こるとは思わなかった
「本当ですか! ありがとうございます!! 届け主はどなたですか? 是非ともお礼させてください」
アリサは大喜びで問いかけた
お馴染みのボディーランゲージは発動せず、両手で定期をぎゅっと握りしめている
「えーっとね、、、 徳永日菜子さんという方だね 近隣に住んでる人だよ」
え? 徳永つったか今
俺はその名前に聴き覚えがあった
間違いない
徳永日菜子は俺の親友、徳永陽平の姉である
陽平がよく部活を休むことは前に説明したが、その多くはこの人のためであるのだ
「お礼は是非ともなのだけど、困ったなあ 電話でお知らせすることが… うーんどうしたものか」
警官が悩むのも無理はない
俺はあの人の事情を知っている
「あの、私が徳永さんの弟さんと友達なので、ご自宅に直接お伺いしようと思います」
「うーん あの様子じゃそうするしかないだろうねえ じゃあ君、後は頼んだよ」
「はい、わかりました。よしアリサ、陽平の家にいこう」
そう言って交番を後にしたものの
突然出てきた陽平の名前にアリサは納得がいかないようだった
「ねえ誰なのそいつ!日菜子さんにお礼するんじゃないの??」
「さっきの話聞いてなかったのか?弟と友達ってその弟が陽平なんだよ」
アッ と思い出すそぶりをするのを俺は見逃さなかった
「…だったら最初からそう言いなさいよ、舌足らず!短舌!粗舌!包舌!」
なんかそれ凄く卑猥な響きに聞こえるから今すぐ辞めなさい
「辞めろそれ! 俺が悪かったから… 留学生がどこでそんなアレンジ覚えるんだよ、、」
「あら?なんの話かしら おーホッホッホッ」
ドヤ顔で勝ち誇った顔されても困るんですが
あんな◯ネタ風を使って言い伏せたところで何にもならないとおもいます(健全男子の主張)
「ところで事前に連絡も入れずにお邪魔しちゃって大丈夫かしら… 家にいないなんてことも考えられるわ」
こんな理不尽極まりないやつでも、礼儀ありきなことを考えられるんだな
見直したぜ
でも事前の連絡ができないのには理由がある
「まぁ着けばわかるさ 色々と事情があるんだ」
「ふーん?」
あまり興味は無さそうだ
あくまで目的は感謝を述べに行くだけだしな
そんなこんなで陽平の家、徳永宅に到着した
インターフォンを鳴らすと眼鏡をかけたロングヘアの女性が出てきた
「わぁ…」
ミステリアスな雰囲気にアリサは思わず声を漏らしてしまったようだ
しかし何も喋らない
目の前の女性は笑顔でいるのに
口を動かす気配がない
そう、この人は喋れないのだ
戸惑うアリサに説明してあげた
「日菜子さんは耳が悪くてね、口頭での話が困難なんだ 耳の病院で治療を受けてはいるものの、回復の目処が立たないらしい」
全部陽平から聞いた話だ
姉の日菜子さんが病院へ行く日などの付き添いだったり色々と面倒を見ているらしい
「そう…だったのね…」
何か思うことでもあったのだろうか
「ちなみに会話はこうやってやるんだ」
俺は携帯のメモに用件を打っていった
〈お久しぶりです。今日は定期を拾っていただいたお礼に来ました。こちら隣にいるのがアリサミルフォード、定期の持ち主です〉
本文を見せると自分のタブレットに返事を打ちはじめた
日菜子さんが返信を書いてるのを待っている間、何かを思い出したようにアリサから話しかけられた
「ねえ!私の返信を代わりにしてくれないかしら… えと、その、ほら私って留学生の設定でしょう? だからその… ね? わかるでしょ?相手はクラスメイトの姉様だし!」
えらく焦っているようだ
俺というサポート役がいながら
何をそんな焦るのか知らないがな
ぬかりはないさ、アリサよ
「アリサの言葉をそのまま打ち込むよ、一応留学生の設定だから、俺が書く 安心しろ、そこは徹底する」
〈わざわざお礼に来ていただいてありがとうございます。また定期を失くされないように気をつけてくださいね。幸真くん、これからも陽平をよろしくね。アリサちゃんもこれから陽平と仲良くしてあげてください!〉
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しかし驚いたなあ
アリサが次の返信で、ごめんなさいと言い出すもんだから何かと思えば昼の発言を懺悔したかったらしい
昼の発言は俺に向けてのモノであったので、日菜子さんに直接謝る必要はなかったのだが、それでも俺個人としては嬉しかった
アリサの根の良さを知ることができたからだ
日菜子さんはいきなりの話に当惑した様子だったが、アリサの話を聞いた上で許しますと言ってくれた
この件はこれでおしまいだろう
定期も見つかったしハッピーエンドだ
「お兄ちゃん、なんか良いことあった?顔がニタニタしてるよ」
今は兄妹2人ソファーでくつろいでいる
「あぁ有ったよ 美少女と登下校できるわ、そいつの良いところを知れるやらで最高だったよ」
「へえ〜 お兄ちゃんに彼女か! いいなあ」
「彼女じゃないって… それに俺の嫁は雪奈だって決めてるんだぜ?」
「あーもうそういうのキモいから」
たわいもない妹との会話も人生の中での宝物と言えるだろう
次の日からも平凡な日常を謳歌するべく平常運転でアリサのサポートと学園生活を同時進行させた
しかし数日後、俺はとんでもない光景を目撃してしまうことに…
華の美少女留学生がまさか、まさかの図書室でアレしてるところに鉢合わせしたのだった
JKのアレとか今後一生二度と見ることはないだろうな
マジでどうしよう… 困ったなあ




