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31:魔法結界

「はぁ……本当に無茶をする。竜をあんな使い方するとは……」

「何とかなったからいいだろ。みんなこうして無事なんだしさ!」

「お前がそれでいいなら俺はもう何も言わん。だが、礼くらいは言わせてくれ。レイン……お前がいてくれて、本当に助かった」

「俺、にーちゃんの役に立てた?」

「当たり前のことを言わせるな」


 取り戻した赤領国。頭を撫でようとした後に考え直した彼は、俺の肩に手を置いた。子供扱いじゃなくて、本当に認められたようで嬉しかった。顔を上げるとコントにーちゃんは本当に嬉しそうで。

 俺は“そのやり方”が最善なんだと思ってしまった。





「……いけると思ったんだけどなぁ」


 凄く眠い。それから寒い。何も聞こえなくなって、何時しか俺は暗闇の中を漂っていた。身体の痛みはもう感じない。


 俺が視た過去の記憶。ルジェア王妃が殺害された時。水晶病の魔術師が――……アデルとアリス、双子の胎児を一度封印して自害した。その時王妃様のお腹の中に、急成長させられた二人が戻された。

 水晶器が封じるのは魔物だけではない。俺達は何でも封じることが出来るんだ。

 今回のことで色んな人に……俺は、すごい水晶器だと言われた。それなら封じようと思った。夢の世界に取り残された赤領国と人々を。

 俺が魔防に優れた【防具】の力で夢魔法を弱らせ破り、大勢が抜け出せるようアデルの【武具】で空間を切り裂く。後は俺が魔術師のように命を絶てば、赤領国は現実へと戻される。


(本当は、そこまでやるつもりはなかったんだけど――……にーちゃんが来て安心しちゃったんだよな)


 コントにーちゃんが現れて。彼に、【白の女王】に抱きついた時。これまでとは違う物が視えた。

 それは断片的な映像だったが赤領国の過去ではなく未来。今ある問題を片付けて、笑い合う俺達の姿だ。俺はその通り……未来をなぞった。一度俺は死ぬけれど、白の王に刺された後も、俺は外の世界でピンピンしていたから何とかなるだろうと。


(何か間違えたかなぁ、あれしかないと思ったんだけど)


 どうして【白領国】に白の【武具】が封じられ、【赤領国】に赤の【武具】があったのか。それは偶然じゃない。武具防具と国の名前は関係がある。その地に封じた魔王の力――……【武具】を従えさせられた継承者なら逆に、その地に眠る力を利用できるんじゃないか?

 ゴーレムだったアデルは、マリスのように暴走をしていない。恐らく赤領国はまだ、封じた力を残している。夢に囚われた赤領国が解放されない限り、夢に閉じ込められた魔王の力も解放されない。

 赤を冠する武具の継承者。アデルに他の装備を集めれば、赤領国に眠るその力を引き出せるはず。俺がにーちゃんの防具を借りたのは、アデルが暴走した時の保険。心残りはそう……


(大丈夫かなアデル)


 切り離した俺の一部、アリスが無事ならアデルも無事なはず。肉体的には。

 問題は、心だ。俺が死んでアデルが暴走って展開は避けたい。コントにーちゃんがいるから大丈夫だと思うけど、それはそれで心配だ。マリスとの一件のトラウマを刺激してしまうかもしれない。


(やめだやめ。色々考えたら心配事ばかり増えちゃう。腕のこと、ねーちゃん達に怒られるのも嫌だし死んだ方が楽だなぁ……きっと悲しい顔をするから。見たくないよ)


 よし! 黙ってこのまま死んでしまおう。無茶はしたが気分はそんなに悪くない。

 心配はあっても、意外な程後悔がない。先に死ぬのって良いな。誰かがいなくなって悲しい思いをしたりしないから。俺はエルフの血が入っているから、みんなに置いて行かれるはずだった。

 両親の時みたいに。あの頃のように寂しい思いをするくらいなら……こんな風に。勇者レインは、誰かのために死ねたんだ。それは幸せなことだ。


(俺って、幸せ者だなぁ)


 誰かに看取って貰える。エルフの俺が、人間に看取って貰える。大好きな人間の内の一人に。俺はこの瞬間のために、彼らの傍に居たんだなって思ってしまうくらい幸せ。


「!?」


 不意に胸が鋭く痛む。刺した時と同じ痛みだ。鼓動が再び動き出し……傷口から毒が注がれたかのよう。全身を巡る血が……毒を体中に広げ、体中が激しく痙攣。何だこれは、こんな痛みが続くくらいなら、早く楽にして欲しい。だけど、暴れる身体を抱き締め押さえ付ける者がいる。身体の中に液体状の炎を流し込まれている。身体が熱い。灼けてしまう! 自爆魔法の時だって一瞬で終わるのに、この苦しみは終わらない。心臓まで流れ込んだ炎が、無理矢理俺の鼓動を飛び上がらせる!


(こんなのっ、俺は……俺は視ていない!!)


 こんな酷いことをする奴は――……心当たりはあの場に一人。マリスはアニュエスに――……コントにーちゃんにベタベタ触っていた。それに【白の王】でコントにーちゃんを斬っている。あの時に、【白の女王】に偽のイメージ情報を植え込んだのか? 俺が勝手に未来視まで出来るようになったーなんて舞い上がって、奴の思惑通りに踊らされた!?


(くっそおおお! 何が貸し一つだよ!!)


 俺が借りを作る前から、あいつは仕込みを終えていたじゃないか。痛い痛い、身体が痛い。


(死体蹴りとか最悪じゃないか? あいつはあれでも本当に勇者だって言うのか!? マリスを一発ぶん殴る!! それまで死ねないっ!!)


 怒りから……息を吹き返してしまった俺の目に。飛び込んできたのは――……涙目で喜ぶにーちゃん………………ではなくて、泣きそうな顔で羞恥に震えるにーちゃんだった。


「ね。寝ている顔も可愛いなレイン。ささささ誘っているのか? お、おおおお俺に見せるその無防備な姿に俺は劣情を抑えきれな…………くっ、まだかマリー!! いつまでこんな台詞を続ければ良いんだ!?」

「まだです!! もっと時間を稼いで!! もっと色っぽく、余裕のない感じで!! 品のある獣のように!」

「無茶を言うなっ!! こんなことで世界が救えるわけがないだろう!!」

「何言ってるんですか! ロットちゃんを助けたい!! それは私も貴方も同じでしょう!?」





 これはどういうことでしょう。私は死を覚悟したのに生きている。


(身体の痛みが、消えている? 精神分離が間に合った……?)


 いいえ、私にはまだ身体がある。衣服には血が付着、短剣で刺された箇所には穴もある。それでも私の身体には傷一つ付いていない。


「ロットちゃん!?」


 彼女が何かしたのかと、私は大事な人の姿を探し――……再び意識を失いかけた。

 私の目の前では、良い夢と悪い夢が同時上映されている。


「え、……え? え!?」


 目を擦ってもその光景は変わらない。

 状況を見て好意的に解釈すれば、竜化の解けたコントさんが口移しで弱ったレー君に何かを飲ませている。穿った見方をすれば、レー君が気を失ってるのを良いことに全裸のコントさんが寝込みを襲っている衝撃的シーンです。

 訳は後から問い質すとして、どちらにせよキスですね。紛うことなくキスですね!! 許せない許す!! 許せないありがとうございます!! そこまでしたなら責任取って貰いますけど、そうしたってことはつまりそういうことですね!? 私は姑みたいにコントさんのこといびりますけどそれでもいいんですよね!? 宮廷画家を召喚したい。どうして私は召喚魔法を会得していないのか。いますぐ最高の絵を描かせて額縁に入れて飾りたい。――……此処までが良い夢です。 

 もう一つの方は、目を背けたいほど痛々しい……禍々しい魔力。【青の王】を手に、ぞっとするような哄笑のロットちゃん。赤い双眸はいつになく邪悪に染まり、【武具】に支配されてしまった姿。傍には臓物をえぐり出されたオグレス。彼女はオグレスを刺し……【青の王】を使って、コントさん達を召喚したのだ。私が気絶する前の事実と照らし合わせ、悪夢の方が私の現実だと思われる。


(そうだ、私が伝えられないまま……《神の子羊》を使って)


 腐川先生は既に殺されている。その事実を知ったロットちゃんは、師に化けたオグレスを撃退したが……【魔王の武具】に呑み込まれた。

 二つの夢、いいえ一つの現実を見つめ、一人だけ楽しそうな女がいる。ミザリーの身体を操る早乙女さん。彼女だけは恍惚として、この光景に見入っていた。


 二人の顔が離れた途端、レー君は苦しみ出す。聞いたことがないくらい、激しい悲鳴。聞いている此方まで死んでしまいそうな、痛みへの恐怖苦しみだけが宿った声だ。


「頑張れレイン、大丈夫だ。お前を死なせなどするものか! お前ならば竜の血は、必ず順応する! 辛いだろうが、耐えてくれっ――……」


 コントさんの声も苦しみに満ちている。見ていない内にあちら側でも色々進展があったよう。しかし、タイミングが良くなかった。次の獲物を決めかねていたロットちゃんが、レー君の声に反応をした。

 残忍な笑みを浮かべ【青の王】を振り上げる。

 空中に展開される、何重もの魔方陣。意識を手放したことで、刺さずに召喚が可能になった。【青の王】は異界に存在した、その封印を早乙女では解くことが出来ず――……ロットちゃんを利用して、魔王の力を開放させることが彼女の目的だったのか?


(いけないっ!!)


 私は速度強化で走り、二人を背中に庇う。張った結界は私の後方。


「マリー!? こ、ここは一体……」

「話は後です。今の悲鳴でロットちゃんがレー君にターゲティングしました。貴方の支度が調うまで、私がヘイトを稼ぎます」


 結界を破るより、結界の外にいる私を殺す方が簡単だ。後は私が彼女の怒りを買って、二人から注意を逸らす。そう決めた私へと、不快な笑みを浮かべた女が話しかけて来る。


「ようこそ。これで勢揃いですね、お姉様のパーティが!」


 ロットちゃんだけでも強敵。早乙女がそこに割り込めば非常に厄介。私は釘を刺しておく。


「……おいで、《絞首台(ガルゲン)》」


 彼女には目もくれずに手を翳し……呪いの言葉を呟いた。

 彼女には何も見えない。私の――……【黒の聖女(ブラックマリア)】の言葉の鎖。早乙女にかけた“条件付即死魔法”。肉体はミザリーだから効かないと、この女は私を舐めている。


「私がどうして癒やすか知っていますか? 人は矛盾の生き物です。誰かを癒やせば癒やすほど……私の《絞首台》は強くなる。忠告しましょう、嘘だけは吐かない方が良い。貴女が何者であろうとも、私の呪いは成就する」

「それはどうも。でもマリーさん、余所見していて良いんですか?」

「ご心配なく。私はずっと――……ロットちゃんを見ています。見るなって言われても、ずっと見てます」


 兄様と戦った時のコントさんは一人だった。私は幸せ。私は一人じゃない。だから必ず、兄様の時とは違う結果を勝ち取ってやる。

 見つめる、封じる、“七瞳”で。兄様の魔を、大勢の人間が吸い取ったように、悪しき魔力を私がロットちゃんから奪う! 私の目は頑丈、何回でも封印できる。コントさんが光明を見い出すまでの時間を稼ぐ!!

 焦点となるのは、その間どうやって彼女の動きを止めるかだ。


「ぐっ!」


 早い。あっという間に距離を詰められ、首を捕まれそうになった。速度強化を重ねがけ、既の所で私はかわす。

 考えながら戦うなんて出来ない。本能で戦わなければ、魔力切れで速さで負ける。


(ロットちゃんなら腐術が効くけど、今のロットちゃんにはどうだろう……)


 【武具】に支配された人間は、もはや魔王の化身。魔王の……魔王の?

 伝聞に伝聞。聞き齧った程度の知識だが、名も無き勇者と魔王の間の友情は残されている。その勇者の名が、レー君の父……ヴォルクさんだということをこの度私は知った。


(大事な友達の子供――……もしかして、レー君をターゲティングした理由って!?)


 頭の中で点と点とが結びつく。刹那、私は彼を呼んでいた。


「コントさんっ!!」

「ああ、待たせた! 今代わるマリー!! お前は後ろに下がって……」

「今すぐレー君を襲ってください!!」

「ああ! 俺に任せ……え?」

「今のロットちゃんは魔王の意思で動いています! 魔王はレー君のお父様を大切に思っていました! その忘れ形見に何かがあれば必ず動揺します!!」


 これは……ロットちゃんの本で、あった奴です!! これが、寝取られって奴ですねロットちゃん!! 魔王はヴォルク様に思慕を抱き、それでもレー君のお母様に掻っ攫われてしまったんですね!? 私達が描こうとしていた本と逆の感じですけど、現実って残酷なのでそんなものですよね。何と言う悲恋!! 魔王を応援したい!! でも、そうすると可愛いレー君は存在していないわけで……なんて究極の二択!! この苦しみ、魔王ならばきっと解ってくれるはず!! だというのにこの騎士は、狼狽えるばかりで何も理解していない。


「え、……いや、しかし……レインは今重症で、安静にさせなければ」

「結界内は継続回復魔法済みです! 世界救うために親友半殺しにした男が今更グダグダ言って男の一人もっ! 最っッッッッ高に可愛い美少年すら抱けないんですか!? 使わないんなら切り落としますよ!?」

「恐ろしいことを言うなっ!! だ、第一そ、そういう問題ではないだろう!? そういうあれは、両者の同意の上で……大体なんだその腐った理論は!? もし何の効果も無ければレインの抱かれ損、俺達は貞操失い損だろうが!!」

「……チッッッッ!! 解りました。どうしてもやれないっていうんなら、レー君だっこしながらこの原稿を朗読するだけで良いです」

「姫がなんという舌打ちを。時にマリー。そ、その薄い紙の束はまさか……」

「ロットちゃんの指導を受け、私が書いたコントさん×レー君の睡眠姦プロットです」


 結界内に紙束だけを叩き込み、外へ出ようとした騎士を私は再び閉じ込める。

 攻撃を避け続け、私は死んでもその結界を破らせない。結界内のやりとりで、隙が生まれれば勝機は見える!

 ロットちゃんの手から、【武具】を放させる。


「力を貸して、【黒の女王(セーブル・ジェイン)】!!」


 【防具】の加護で私は結界防御を高めた。【青の王】の力で二人を召喚しようとするのならまず、私の結界を破らなければならない。こうすることでロットちゃんから私への、ヘイトが更に増している。


(良い感じです! 攻撃が荒くなった。これなら動きが読みやすい!!)


 私に攻撃が当たらないことに怒った彼女は、次々召喚ゲートを開く。けれど召喚されるのはオークばかり。【武具】の支配は膨大な魔力を与え正気を奪うが、本人が使えない技は使用できない? 魔王が人の器を乗っ取ったに過ぎず、だから【武具】は優秀な者を継承者に選びたい。唯の人間である早乙女が選ばれなかったように。

 普段は頼もしい召喚獣。互いに見知った顔であるのでやり辛く、わざとやられた振りで召喚解除をしてくれる。或いは男以外とは戦えないオークばかりとロットちゃんは契約していたのだろうか? 私を見るだけで「チェンジ!!」のようなニュアンスで鳴き、魔方陣に帰ってしまう。喚んでも喚んでもそんな子達が出て来るので、ロットちゃんin魔王は混乱していた。もう涙目である。


「うぐっ!」


 しまった。涙目の彼女を可哀想に思い、距離を詰めたが誤りだ。私は全身に弱体魔法を喰らってしまう。

 彼女は召喚魔法だけの使い手ではない。私が自己強化をするよう、彼女は弱体化魔法に長けている。


(まずい……)


 弱った分、自分を強化する。延々とその繰り返し。このままでは魔力の差で私の限界が先に来る。

 結界か自分自身か。結界を優先的に強化しなければならないけれど、これ以上私が弱体化されては私がやられる。私が討たれれば結界も解ける。結界が破られれば計画は破綻する。


「……フッ」


 ロットちゃんが、笑った? 悪い笑みを浮かべた彼女は私と結界、二つを同時に強力弱体化する。攻撃魔法を打ち込まれたら、終わってしまう!

 私は自己強化を切り、結界強化に全てを注ぐ。仕方ない。このまま肉体を破壊されても、まだ手はある。精神分離で――……私がロットちゃんに宿り、魔王の意思を退ける。


「……っ!」


 攻撃魔法を、使わない? 極限まで動きを遅くされ、もはや身体も動かない。そんな私の首を絞め、彼女は片手で持ち上げる。ロットちゃんにそんな筋肉はないのに。肉体も強化されているのか。

 継承者は、素養があれば……選ばれて。時間経過で、どんどん出来ることが増える。最後には完全に――……魔王と同じ力を扱える?


(ロット、ちゃん――……)


 眼前で苦しむ私を見て、ほんの少し……指の力が弱まった。じっと彼女を見つめていると、彼女の赤い瞳から――……涙が浮かぶのが見える。貴女は今、その身体の内で必死に戦っている。だから私に……攻撃魔法を貴女は打てない。傷を付けないように首を絞めることしか貴女は出来ない。


「大丈夫、ですよ……ろっと、ちゃん」


 暴力には慣れている。このくらいで私は死なない。お師匠様に比べたら全然、平気です。

 怯えた瞳の彼女に向かって、私は微笑み両手を伸ばす。おいでと貴女を抱き締めるため。私の首を絞める手と、短剣を所持した手。自由になる手を持たない貴女は応えられない。それでも、それ以上はない。ロットちゃんの動きが止まった。今が好機!! 私は結界を解く。


「今ですコントさんっ!! 本気で()ってください!! もっと大きな声で!! 感情を、愛を込めて!! もう台本じゃなくて良いです!! 貴方の言葉で!!」


 貴方は傷付けることで得た勝利に深く傷付いたのでしょう? 恥や外聞がなんですか。仲間の命が掛かっているのにそんなものが大事なんですか? ロットちゃんを殺さずに、取り戻せる方法があるのならそうするべきです。貴方がしないというのなら、私は。ここに男体化薬があったなら、私が代わりにやるのに!


「くっ……すまないレイン!」


 何の言葉も出なかったのか。目を瞑り、勢いでキスをしようとするコントさん。

 驚いて、ロットちゃんの動きが止まる。そして二人の唇が触れたか触れないかというところで。


「ギァャアアアアアアアアアアアアアアアア嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ァアアアッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ」

(発狂した!?)


 結界では音を防いでいなかった。耳を劈く悲鳴のような咆哮。空気の振動で私達全員が行動不能に追いやられる。

 体勢を崩した上に弱体化、おまけに身体がビリビリ痺れ……すぐには立ち上がれそうにない。彼女の一番傍に居る私は無防備。今攻撃されれば――……終わる。


(駄目! まだっ……まだ、終わらないっ!!)


 幸い、精神分離は思考さえ動けば発動可能。身体を捨てればまだ戦える。どうせ私は大嫌いだったんです。目のない醜い姿で生まれ、人の目を奪ってまともな人間の振りをして生き延びたこんな身体。痩せっぽっちで丸みもなくて、女性らしさもない。捨ててしまえば良い、こんな肉体!


(行きます、《精神分離》っ――……!!)

すごくピンチなのに危機感ないのがこのパーティ。もう少しで終わらせられそう。


次作の構想出来ているので早く書きたいです。

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