29:少年と竜
「待ってたよ、コントにーちゃん」
「すまない……本当に、待たせた」
誰よりお前が一番の、勇者だと知っていたのに。お前を一人にしてしまった。レインは既に満身創痍。戦えるのは俺だけだ。
なんとかしなければ。そう思っても、力勝負で折れる相手に思えない。ルネ王女を説得しなければ、夢魔法は終わらない。恐らく、異界での騒動にも王女の夢が関わっている。赤領国が現に戻るためにも彼女の協力は必要不可欠。
ならば赤領王殺しを見過ごすか? 出来ない。レインの手を使って殺させることは断じて見過ごせん。
「アニュエ……いや、コント殿。何を……」
「……レインを頼む」
レインを一度抱き締めた後、赤の騎士へとレインを預ける。俺の言葉に驚くも、彼はしっかり頷いた。
「そこまでだ、ルネ殿。貴女が陛下を殺す前に【白の女王】は防御壁を作れる。ここは夢の世界だろう? 物理攻撃は使えない。全ての攻撃は【魔妃の鎧】が無効化する」
「それなら私は貴女が壁を解くまで貴方達を夢から逃さない。死ぬまで眠り続けることになるけど良いの?」
「……くっ、レインの手でルジェア王に危害を加えないで頂きたい。赤領国の開放にどうしても陛下の殺害が必要だというのなら――……俺がやる」
「ま、待てっ! ルジェアの問題を他国の勇者に押しつける訳にはいかん! やるなら俺が」
「そ、そうよ見ず知らずの勇者様! 貴方はまったく無関係だわ!!」
「ふふ。面白いだろうコントは。そこが僕がこの男の大好きで大嫌いなところだよ」
俺の言葉に驚くルネとアデル。マリスは離れたところで何故か満足気。レインは何も喋らない。
「凄い名案だと思うよ。君の考えに賛同してあげよう! 今度は僕が正義の名の下に、お前を殺せる理由が出来るねコント?」
「その時はまた、薬でも飲んで待ってやる。マリス、さっきの攻撃は何だ? 随分と女には手加減するじゃないか。俺を殺し損ねるなんて」
「手が滑っただけだよ。次はない」
マリスと嫌味を言い合いながら、赤領王とルネへ俺は一歩一歩近付いていく。彼女は俺に酷く怯えている風だった。
「本気……なの? 何なの、貴方」
「勇者だが」
「それは知ってる。でも、勇者でなくなるのよ? 貴方がこれからしようとしていることは!! 私を殺して終わらせたらいいのに!!」
「君を殺せばルジェアの血涙を制御できる者がいなくなる。そうなればもっと多くの犠牲が出る。最も犠牲が少ないのは赤領王を殺すことだ」
「貴方、いかれてる。守るために、殺すの? よく知りもしない相手のことを! 個人的な恨みもない奴を!?」
「よく知る人と、知らない人々を守るためなら私情を殺す。これまでそうやって生きてきた。今更立ち止まっては、これまで斬った相手に顔向けできない」
歩む俺の背を、つんとつつく指がある。もう片手で俺のマントを掴むことも出来ない彼が。
「あのさ、にーちゃん。いつまで一人のつもりでいるの?」
殿下に剣を向けた時とは違うとレインは主張する。
「駄目だってそういうの。パーティなんだから。俺こんなのだけど、ここにいるよ。俺がいても、仲間がいても……他に答えが見つからない?」
「レイン――……」
「それでも無理って言うんなら仕方ないや! ごめんね赤の王様! その時は、なるべく痛くないよう殺すからさ」
恨みもない、憎しみもない。散々酷い目に遭わされながら、レインは自分のことでは怒らない。勇者の朗らかな殺害予告に赤領王も苦笑する。
「……勇者レイン。其方は確かに英雄ヴォルクの子。其方の手に掛かるなら、迷いなく妻の元へ行けそうだ」
「王様……一応これ、最終手段だからちょっと待って。殺さずに済めばその方がずっと良いしさ」
今にも国と我が子を頼むと言わんばかりの赤領王に、レインは慌てて補足した。
「さ。にーちゃん、作戦会議! お姫様も俺の腕に免じて、話し合い終わるまで待っててくれよー!」
殺し合う親子、一国の危機。そんな状況もすっかりレインのペース。間に合わなかった、何も出来ないこの俺が。駆けつけたことが、彼の力になっている? 挫けそうな俺を、レインは勇者でいさせてくれる。
今だって、こんなにも救われる。あの日あの時、お前が隣にいてくれたなら。そう思わずにはいられない。
(お前は信じてくれているんだな。俺が何をしようと、俺のことを“勇者”であると)
「うわ、どうしたのにーちゃん? 泣くのは後々。俺の腕のこと? 心配してくれるの嬉しいけど時間が勿体ないって」
「そうだな……すまない。話をしよう。レイン、先程の話だが……お前のことだ。何か、勝算はあるんだな?」
「一つ……考えがあるんだ。俺だけじゃ無理でも、コントにーちゃんと、にーちゃんの友達がいるならやれる気がする」
俺の竜も仲間の頭数に数えてくれるのか。感じる喜びが二重。俺の感情以外も伝わってくる。今回の件で拗ねていた竜も、少しは機嫌を直してくれたようだ。
「確認したいんだけど、にーちゃんって、竜化すると魔力が桁違いに跳ね上がるんだよね?」
「あ、ああ。だが……あの形態での魔法は細かい作業には向かない」
「その魔力、俺に流し込んで貰うことは出来る? 出来るなら、……たぶん出来る。視て来たから」
「しかし、魔力を注ぐなどどうやれば」
「あー……それも“視て”来たから。先に謝っとくね。はい、作戦会議終わり! ってことでにーちゃんよろしく!!」
パチンとレインが両手を打って、話をその場で打ち切った。詳細は不明だがレインの直感ならば間違いない。人目が多くて気恥ずかしいが、折角の【防具】を脱ぎ去った。
「き、きゃあああ! い、いきなり何を!?」
恥じらい目を手で覆うルネ。いや、少し指の隙間が空いている。竜化した俺の姿を確認した後、彼女はすんと冷めた表情で手を下ろす。
「夢の世界なんだから、別に脱がなくても良いのにね。露出の気があるのかい?」
(マリス、お前はすかさず茶々を入れるな)
だが一理ある。流石は夢か。心を読めるレイン以外にも俺の言葉は通じている。今の悪態も周りには聞かれていた。
「にーちゃん、にーちゃん」
ちょいちょいと、足下でレインが俺を手招き。頭を下げて背に乗せろと言う合図か? 彼と目が合う高さまで頭を下げると、レインは一歩前へ出る。
「ほんとは血とかが良いんだけど、にーちゃんに怪我させたくないし……現実でどうなるかも解らないし……」
(レイン?)
「にーちゃん、帰ったら何が食べたい?」
唐突な質問に、好物料理を幾らか思い浮かべたところで――……
「……えい!」
レインは俺の牙の間に自身の頭部を打ち込んだ!?
俺は驚いたまま静止した。動けば牙で彼の首を落としてしまうかもしれない。何秒か何十秒か。不思議な構図を王族達から注視をされる。
「ぷはっ!!」
目的を遂げたのか? 涎まみれの頭部をレインは引き抜く。竜の涎でベタベタになった彼の姿は、何と言うか……扇情的だ。ロア辺りに見られたら俺が殺されそう。いや、ロアだけではない。アデルからもの凄い殺気を感じる。渦中の人、当の本人はそれをお構いなしに高らかに【防具】の名を呼んだ。彼が所持している【赤の女王】? 違う、レインが口にしたのは俺が先程脱ぎ去った――……
「“【白の女王】”」
レインの声を聞き、【防具】は彼の身体を包み込む。一人の人間が、複数の【魔妃】を纏うだと? マリスもアデルも呆気に取られる、勿論俺も。
「へへっ、匂いと魔力が付いたらいけると思ったんだ」
レインの野生動物的思考に、魔法大国ルジェアの皆さんも固まった。魔法理論を良く理解しないまま、とんでもないことをやり遂げる彼に対し理解が追いつかない様子。
「後これ、ダイヤねーちゃんから教わった、とっておきの“腐術”!」
(何!?)
指輪と鎧の【魔妃】を纏い、涎まみれで胸張るレイン。確かに、不思議とダメージを受けているのはルジェアの姫だけだ。彼女は苦しげに胸を押さえその場にうずくまる。
「な、……これは何!? 竜と少年っ……人外と少女と見紛うような少年がっ、竜の涎まみれ――……実質、キスでは!? 実質ディープキス!? 涎を摂取していなければありえないっ!! そうでなければ、体液からの魔力吸収は起こり得ない!!」
「腐術【異種族】って奴らしいよ。ほら、よくダイヤねーちゃんが族長物とか俺とか出すのそういう技なんだって」
(な、なるほど……)
ルネ姫は、俺とレインの異種姦に悶えていると。人の姿の俺では無く、竜化した俺との絡みが刺さったと。唖然とその場を眺めていたアデルだったが、彼女と通じるものがあるのか遅れて顔を赤らめる。
「はっ!? トカゲは二本あると言いますが!? まさか貴様ぁああああああああああああ!! 呪われた状態のレインに何てことをぉおおおおおおおおおお!!」
(お、落ち着けアデル殿! 【武具】を構えるな【武具】を!! レインがあの状況の時の俺の姿を忘れたか!?)
切り落とすと言わんばかりの殺意が怖い。この形態は友の身体でもあるので、勝手に虚勢をされては堪らない。
「二本!? でも今の勇者様は男……つまり一本は普通に使うとしてもう一本で弄ぶ的な使い方を!? うぅう! あんな大きな身体の、きっと恐ろしいほど大きな物で!? なんなのこの胸のざわめきはっ!!」
「御覧ください陛下、我が国の勇者にかかればあの通り。彼は一時期僕のパーティに属していたこともありまして……」
媚を売るな媚を! 今の今まで敵側だったマリスがまたこの場で遊び始める。レインの腐術を赤領王に売り込み何を企んでいるのか。目を白黒させながら、赤領王はううむと唸る。
(ええい、皆で俺の下半身ばかりを見るな!! 俺は兎も角、竜族に対して不敬では!?)
そもそも竜の身体構造では、普段は体内に収納済み。幾ら見られても見せないからな。王族に貴族に勇者の子……錚々たる顔ぶれで、この状況はおかしいだろう? おかしいと思っているのは俺だけか!?
「レイン……恐るべき勇者よ。魔力を使わずに、あの娘をここまで無効化するとは――……」
流石は一国の王。素晴らしい貫禄だ。こんな馬鹿げた状況でもシリアスムードを醸し出してくれる。
赤領王の驚きはもっとも。腐術を初めて目にした者は誰でもそうだ。哀れ、いきなり腐術でもレベルの高いものをぶつけられたルネ姫は、その場で痙攣しながら悶絶。未知なる感覚に戸惑い行動停止に追い込まれていた。レインの身体を張った行動のお陰か……確かに、俺がいなければ出来ない技………………? え? 俺が【防具】に認められるための工程必要あったか?
「勿論、必要あるよコントにーちゃん。やりたいことがまだ二つある。そのために、【魔妃】は必要なんだ。魔力は……幾らあっても足りない」
俺の不安を打ち砕き、レインが不敵な笑みを浮かべた。
「お姫様が寝ている今がチャンスだ」
「勇者レインよ……まさか“あれ”を視たのか!?」
「……ここへ逃げ込むときに、複数の【防具】を使ったんだろう? それなら開く時には複数の【武具】が要る。足りない分は魔力で補うし、【防具】の力で結界を弱らせる」
レインの指輪【赤の女王】は、現実から夢世界への道を繋げた。俺の鎧【白の女王】は魔法を無効化する。ルジェアの血涙……赤領国の【赤い盾】は結界。指輪が現実と夢を繋ぎ、鎧で結界を無効化――……までは行かなくとも綻びを作らせる。そこに【武具】の力で大穴を空け、夢に囚われた赤領国を現実世界へ連れ戻す。ルネが気を失っている間に、だ。
(俺の呪いが解け、竜化が叶ったから……思い付いた、か)
突拍子もない作戦だが、レインの言う通りやれない気はしない。
(しかし、彼女が目覚めたらどうするつもりだ?)
「これ、ねーちゃんのボツ原稿。お姫様は縛っておいて、もし起きたら手の空いてる人、それ見せといて。肝心のシーンの前で寸止めすれば時間を稼げるし、精神が乱れれば結界も弱まるはずだ」
(り、竜化俺×レイン本…………? 何故ボツに?)
「流石のねーちゃんも竜は敵に回したくないってさ。あとにーちゃんの存在自体竜と常時してるようなものじゃないか疑惑が芽生えたとかで、実質それって三人でってことになるから表記に困って――……」
(ぎゃあああああああああああああああ!! レインレインストップ! それ以上は駄目だ!! 俺の友にも聞こえてるから今っ!!)
これ以上の厄介事はご免だ。マリスの件がひとまず落ち着いたというのに、竜にまで変な知識を植え付けられては堪らない。
「縛って朗読か。面白そうじゃないか、その役僕がやってあげても良いよ」
「ありがとなマリス。あ、ついでに【白の王】を今だけアデルに貸してくれよ。赤領国を目覚めさせるには、【赤】の持ち主に力を集めなきゃいけない」
「え、それは嫌だけど? 君のやり方方式でのレンタルってことだろう?」
「くっ……すみません姫。幾ら貴方の言葉でも、俺は」
レインの提案に大人しく従う奴らではなく……肝心の【武具】使い共が不満を漏らす。
趣味以外には気乗りがしないマリスは当然、アデルも俺以上に頭の柔軟性がない。こいつらも、少しはキャロットにでも振り回されてしまえば良い。いや、流されすぎて……俺が丸くなったのか?
「……にーちゃん」
レインは俺ににこりと微笑んで、マリスとアデルを指差した。レインとの、意思の疎通は容易。竜の手で俺は二人を掴み上げ、この場に腐れ魔法使いがいないことを哀れんだ。
「一国の命運が掛かってるんだ。勇者がキスの一つや二つでぶつくさ言うなよな」
口直しがしたいならあとでやってやるからと、レインの男前な言葉にはアデルのみならず……少し俺もドキっとしてしまった。不覚にもマリスも一瞬ときめいたのか、口を拭う悔しげな表情もやや赤い。
「…………この貸しは、高く付くよレイン。でもいいさ。君の企みがどの程度の物か見てやろうじゃないか」
いつもの悪役台詞もそんな顔では決まらないな。ミザリーに見せてやりたい。マリスはそのままに、俺はアデルだけ解放する。
「アデル、武具の名を」
鎧と指輪の【魔妃】を纏ったレインを目の前に、アデルはぼうっと見入っていたが呼びかけられて頷いた。
「ええ。【白の王】!!」
レインの言った通り匂い……ではなく、マリスの魔力がアデルに流れ込むことで、マリスの【武具】がアデルを主と錯覚しアデルの呼びかけに応じる。瞬時にアデルの手へと収まった。
「……進め、【赤の女王】!」
指輪から発せられる八条の光。チェスの女王が如く、赤き光は辺り一面に広がった。
「姫、【武具】で何を攻撃すれば……」
「斧は空に掲げて、剣は真っ直ぐ前に……うん、それでいい」
赤くなった夢の中。新たな色に気付くには、皆少しの時間が必要だった。一番先にそれを知るのは剣を手にしたアデルだろう。
レインは自ら【白の王】に胸を貫かせ、白銀の剣を赤へと変える。動揺し斧を落としそうになったアデルの手をレインは片手で支え……【武具】の名を言うよう彼へ迫った。
「ぅぐ……っ、【赤の王】ォオオオオオオ」
それは怒りか悲しみか。アデルの感情を乗せた叫びが響き……俺達もその状況を知る。勢いよく大地へ振り下ろされた斧は、地を割り、夢を崩し……まやかしの風景を掻き消すと、下方に赤き結界が現れる。
【赤い盾】は、赤の光に包まれた俺達を――……同じ物として取り込み、壁の向こうへと排出。眩しい光は赤くない。夜は明けていた。赤領国が取り戻した青空と……照りつける光の下一人。血まみれの勇者だけが地に伏していた。
「レ、イン……?」
あの部屋で目覚めず赤領国へと落ちたことなどどうでも良い。竜化が解けて俺が裸なのも気にはならない。お前だけが犠牲を払った事が許せない。
彼の傍らで慟哭を上げるアデルから、レインを奪い返して顔を見る。辛うじて呼吸はあるが、もはや手の施しようがない。マリーがこの場にいたとしても、治せない程傷は深い。
「…………くそっ!!」
俺に彼女と同じ魔法が使えたならば。お前の傷を俺が奪ってやれるのに。
瀕死のレインを抱き締めることしか出来ない俺の傍へと、少女の白い足が近寄る。夢の世界よりも幾分幼い。
肉体を得……現実世界で初めて目覚めた赤の姫は、自分がしでかしたことへの罪に震えていたが……。
「死なないで、勇者様。貴方にお礼を言いたい。初めて、息をしたの。これが空気の味なんだ、匂いなんだって解ったの」
「…………ぅ、ネ」
「貴方が死んでしまったら、私の身体も死んでしまう。私は、血の匂いしか知らずに死ぬの? 貴方にちゃんとお礼を聞いて貰えずに、私は死ぬの!?」
ルネはレインの傷へと触れて、目を伏せ息を吸う。それが最後の息になるとも恐れずに。
レインから貰った身体を彼へと返すことで、レインの延命を図ろうと……
「!?」
「……アリ、ス」
彼女の心を読んだのか。レインは片手でルネへと触れて、首を微かに横へ振る。
「男、の子が、…………アデル。女……の子なら……アリス」
指輪は再び赤く輝き、赤の王子と王女を包み込む。自分が死んでも【魔妃】の力で、名前で別の物だと定義する。切り離した一部分が、無事に生き残れるように。
「どう、して……!? どうして私なんかに、そんなっ……貴方は優しいの!?」
「違う。お前だけではない。姫は……レインは。真の勇者はっ……どんな者でも救うのだ」
子供のように泣きじゃくり、アデルは言葉を吐き捨てる。アデルにも手を伸ばそうとして、レインは腕がないことに気が付いて……おかしそうに笑っていた。そんなこと、笑うようなことではないのに、お前は。レインはそうして、優しく笑ったまま……時を止めた。
それを見た時、俺の時間も止まってしまった。今度は彼の名前も呼べない。唇を強くかみしめて、嗚咽を堪え続ける。
「【武具】は“真の勇者”の血を好む。真価を発揮するにはヴォルクの血が必要だからって、思い切ったことをするねぇ彼は」
(……黙れ)
面白がって近寄るな。レインの死を笑うな死神め。マリス、お前は嬉しいだろう? とうとう魔王が甦るんだ。俺達をからかい誘導し、レインに危険を冒させたのもそのためだろう!?
お前への全ての感情を、今捨てる。過去も記憶も思い出も。新たに此処で、憎しみだけをお前に抱く。
「本当に僕が黙っても良いの? この場で君が地に頭を付けて頼むなら、彼を死なせずに済む方法を教えてあげるのに?」
俺の視線をマリスは喜び、今際の際の彼のよう……俺に優しく笑って見せる。最上級の嫌味。
「もう一度竜化しろ、コント。僕も、まだレインに死なれては困る。お前の血を、その子に飲ませろ」




