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「男は現行犯逮捕されています。この地図をごらんください男は廃園となったドリームランド跡地に大学の仲間と肝試しと称した不法侵入をし、友人の制止を振り払い旧ドリームキャッスル現養豚ト殺場に乗り込みます。そこで足を滑らせ、治療に当たった杉本武様56歳を撲殺。そこから工場内へ侵入3名の従業員を現場にある鉈で殺害。バラバラにした上で寝ていたところを逮捕されました」
お昼のニュースで女子アナが淡々と文章を読み上げる。
新聞や報道関係者はこの事件を次々に取り上げた。
日本国民の殆どが知る事となったこの事件。
ドリームランド跡地には警察が連日ごった返している。
「非常に遺憾な事件ですが、犯人は混乱しており工場の豚を人間と思い犯行に及んだ模様です。犯罪心理に詳しいコメンテイターの田中大さんを本日はお招きしました。田中さんいかがでしょう?」
「うーむ、彼は仕切りに正義や仇という言葉を繰り返していますね。しかし内容は稚拙で、聞くに堪えない主張が多いです。精神鑑定で死刑から逃げようと考えているのかもしれません」
「例えばどのような事でしょうか?」
「パンフレットの上に転がったコインが、コロサレルを指示したから逃げ出したとかね」
「そ、それは無理がありますね……そのパンフレットはこちらにコピーがあります。ハロウィン仕様のパンフレットであった事は、認定済みです」
「10中8.9精神鑑定狙いでしょうね」
女子アナが、ボードに拡大化したハロウィンパンフレットを張る。
そして長い指し棒で一文字一文字、事件の文字を追っていく。
コメンテイターの田中先生は時間の無駄とあきれた様子だ。
こかげがあって気持ちいい。
「こ」
ロンドンを基調とした庭園。
「ロ」
名物はなんといってもドリームランドの春桜さ ちり際は、花びらが川を覆いつくすよ
「さ」
レガシーのみの迫力満点ゴーカート! 君は乗る側? 見る側?
「レ」
お土産名物! ルイ16世とマリーアントワネットが愛したお菓子。
「ル」
「コインで塞がれてない左隣を繋げると、こロさレルとなったわけですね。いかがですか田中先生?」
「子供遊びと殺人を身に着ける、もしかしたら猟奇殺人なのかもしれませんね。あれ? もっかい見てもいいですか? コインの乗った場所の左隣といってましたよね」
呆れていた田中の目が、ハロウィンのパンフレット拡大図を見つめる。
顎に手を置き、髭を撫で目は真剣に話さない。
「あ、あの? 田中先生?」
「コインの乗った場所を並べると、いや偶然だな。いや、計画的殺人か。いや……」
「え、どうかしたんですか!? 説明をお願いします!」
こかげがあって気持ちいい。
この右隣はか 「か」
ロンドンを基調とした庭園。
ロの右隣はン 「ン」
名物はなんといってもドリームランドの春桜さ ちり際は、花びらが川を覆いつくすよ
さの右隣はち 「ち」
レガシーのみの迫力満点ゴーカート! 君は乗る側? 見る側?
レの右隣はガ 「ガ」
お土産名物! ルイ16世とマリーアントワネットが愛したお菓子。
ルの右隣は「イ」
「つまりだ、かンちガイ……勘違いなんてね」
「あ、本当だ……これは確実に計画的殺人ですね」
「そ、そうなるかな。うーんこんな事件は初めてで、こんな行為不利になるだけだしね」
「皆さま当番組から事件の発展を進める発見を見つけ出しました!!」
この物語の主人公は死刑宣告、現在控訴して争っています。
友人も家族も一つの勘違いで、手のひらを返され全てがいなくなります。
世論の怒りは彼から人権を奪い家畜へ落とし。
彼は檻の中で、ささいな勘違いからいつ殺されるか分からない家畜となりました。
果たして勘違いだったのでしょうか?
国の人を食料としてた、隠蔽の可能性はないのでしょうか?
同じ立場なら、噂の行方不明者として食卓に上っていたかもしれません。
世界の人口は増加の一歩を進んでいます。
畜産業はその人口の食を支える為、日々効率を重視した形に進化しています。
効率とは肉を生み出す効率……つまり死を生み出す効率です。
小規模な家族経営の畜産場はつぶされ、大規模な畜産工場が建ち並びます。
命を軽く見れば見るほど、肉の値段は安くなるのです。
豚は犬より賢いという研究結果があります。
豚は、犬にはできないとされる鏡像認知ができる。その知能はチンパンジーとほぼ同等という考え方が一般的となった。口頭からさまざまなノイズを発して、コミュニケーションを取りながら社会生活を送ることができるのだ。豚は素晴らしい長期記憶を持っており、言語を理解する。更に驚くべきことに、過去の間違いを学び、同じミスは二度と犯さないように行動するという。
「私は、豚が好きだ。犬は我々を尊敬し、猫は我々を軽蔑する。が、豚は犬と同じように振る舞うのだ」
―――ノーベル文学賞受賞者 ウィンストン・チャーチル
自分の愛犬を5か月以上、立ったまま動けない窮屈な檻に閉じ込められる愛犬家がいますか?
もはや愛犬家でもなんでもない虐待です。
痛みも感情もある生物を、ただ生産し死ぬまで物と扱い殺す。
人権ならぬ豚権利も考えた方がいいかもしれません。
しかし豚肉の生産量が落ちれば、どうなってしまうかは想像するにたやすいことです。
自分達がすぐ出来る行為は、いかに残さず食べるかくらいでしょうか。
今家畜として殺されているのは豚ですが、それは人間が食物連鎖のトップにいるからです。
これが、宇宙人などもっと進展したテクノロジーの種族に襲撃された場合。
人間が養豚場の豚の扱いをされても、自業自得なのかもしれません。
自分や家族、大切な誰かが養豚場の豚になってベルトコンベアーで運ばれる……
何故怒りがこみ上げるのか、豚の遺族がいたとして自分でも説明できません。
そして僕は今日も肉を食べるでしょう。
ベジタリアンも命を奪っています。
命の重さに重い軽いを決めるのはエゴです。
頭が悪いから、感情がないから痛みを感じないから。
目を背けてるだけではないですか?
他の命を食べても生きたい。
他者を犠牲にしても生きたい、弱肉強食の輪からは逃げられない。
それでも生きなければならない、この世界は試練なのかもしれません。
本当はあと4話あったのですが……
尺と期日の関係で、最終頁の逮捕で終わってしまいました。
臓器輸出あたりは書くと駄目みたいです。
また機会がありましたら、他のジャンルも挑戦してみたいです。
宜しければ、ポイントや感想頂けると幸いです。