第一話 世界創造者
「君は……誰なの?」
訊ねるとその光は、自分の顔と同じぐらいの大きさまで収縮した。
この真っ黒な世界に突如現れた真ん丸とした球体は、どこかのマスコットのような可愛らしい雰囲気を感じさせる。
その球体は、黒一色の目を輝かせながら話し出した。
「ボクの名前は”ワークリー” 、ちょうど君みたいな人間を探していたんだよ!」
「わーくりー?」
俺は何が起きたのかさっぱり分からない。
さっきビルの屋上から飛び降りたはずなのに、気付いたらここにいた。
早くあかりのところに行きたいのに、なんでこんな光と話してるんだ?
それに、他に誰か居たような気がするんだが……気のせいか?
「ボクは君のように自分の世界から去ろうとしてる人間に声を掛けて、新しい人生を一緒に作ってあげてるんだ」
ワークリーは俺の目の前で、左右に行ったり来たりして楽しそうに言う。
「どういう事だ?」
「君は自分の人生が嫌になってあんな所から飛び降りた、だけど君の目的って死んだ恋人のところに行きたいだけでしょ?」
「そうだけど……」
「死んだら会えるっていう保証はどこにあるの?」
「……まぁたしかに、ないかもな」
「でしょ! だから君に、一つ提案がある」
そう言いながら、ワークリーは鼻先に触れそうな勢いで近付いた。
「うおっ……提案ってなんだよ」
「ボクと一緒に世界を創る、”世界創造者”になってみない?」
ワークリーは俺のそばをふよふよと離れてすぐ、すごく嬉しそうな声でこう言った。
「自分で新しい世界を創るって事か?」
俺は半信半疑で首を傾げながら、訊ねた。
ワークリーが驚いたように目を丸くする。
「順応早いね!」
「こっちは死のうとしてた所を邪魔されたんだ……さっき言ってたワールドなんちゃらって何?」
俺は少しイラつきながら言った。
ワークリーは微笑みながら答える。
「”世界創造主”、その名の通り世界を創る者だね。ボクの世界を生み出す力と君の創造力があれば、何だって創れちゃうよ!」
「例えば?」
「そうだね、例えば……君が好きそうなゲーム風の世界だったり、学園ものだったり、創れるジャンルは様々だよ。君が創る世界なら年齢だって自由に選べるし、魔法やスキルなんかも生み出せるよ!」
「……分かった、創るよ。その自分の世界っていうやつを」
俺は半信半疑ではあったが、今の人生から逃げたかったのは本当だ。
ただ、さっきの頭痛が尾を引いているのか、微かな違和感が残っていた。
「やった! 君なら絶対そう言うと思ったよ! そういえば、まだ君の名前を聞いていなかったね?」
俺は少し笑いながら答えた。
「俺の名前は、夜咲たくみ」
「それじゃあ、たくみ、ボクと一緒に楽しくて面白い、新たな世界を創っていこう!」