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サイドストーリー ウィンダ編

 私の名前は"ウィンダ・アルニス”、ヘルニクスアルニスという国で生まれ育った冒険者だよ。


 国の名前が長いから、よく”アルニス”って省略されることが多いんだけど、この国を作った初代国王の名前が”ヘルニクス・アルニス”だから、変えるに変えられないってお母さんが言ってた。

 

 もしかしたら既に察してる人もいるかもしれないけど、私はこの国の第二王女として生まれたの。


 お母さんの言いつけで国民はもちろん、他国の人にも王女である事を明かさずに生きてきたんだけどね。


 これはそんな冒険者として活動している最中に、彼と出会った時のお話なんだ。




 彼と出会ったのは、1ヶ月程前にリングルムでレベル上げをしに訪れた時だ。


 いつか亡くなったお父さんのように強くてカッコイイ冒険者になりたくて、家の用事がない日は依頼を受けに出掛けている。


 そのため普段からレベルを上げに、隣街のリングルムに足を運んでいた。


 早朝に家を出て、毎日リングルムに野菜を卸しているおじさんにお願いして一緒に乗せてもらっている。


 彼を初めて見掛けたその日も、いつも通りリングルムまで乗せてもらっていた。


 道中で"スライム"などの水体系モンスターや鳥類系モンスター、獣類系モンスターと対峙することが多かったのを今でも覚えてる。


 もちろん私も一端の冒険者だから、馬車を襲いに来たモンスターを倒しながらリングルムに向かっていた。


 アルニスから馬車に揺られて4時間ほど経ち、ようやくリングルムの外壁が見えてきた頃の事だ。


 突然馬車が止まり、おじさんが声を掛けてくれたの。


 「ウィンダちゃん、あそこを見てくれ」


 私が荷台からおじさんの指差す方を見ると、行商人がモンスターに襲われている所が見えた。


 私はおじさんに頼んでここで待つように伝え、見晴らしの良い荷台の平な天井に上がる。

 私は愛用武器である、"魔力狙撃銃"を具現化して荷台に腹ばいになり狙撃体勢に入った。


 「あのおじさん逃げ回りすぎだよ、無理もないけどもう少し一定方向に逃げてくれないかな」

 襲われている人が馬車を降りて不規則に逃げ回るせいで、モンスターだけを狙うことができずにいた。


 どうしようか迷っていると、逃げ回る行商人の陰からゆっくり近付いて行く人陰が目に留まる。


 その人は姿勢を低くして荷台の陰に隠れると、タイミングを見計らい拳ぐらいの鳥類系モンスターを鷲掴みにした。


 右手に具現化した細身の剣に押し当てて倒すと、行商人にお礼を言われた彼は、颯爽とリングルムへ入っていく。


 それだけならよく見かける光景なので、私が彼に興味を持つ事はなかった。



 リングルムで彼を次に見掛けたのは、狙撃銃の修理のために工房を訪れた時だ。


 お店に入ると、彼がカウンターで工房のおじさんとお話していた。

 横からチラッと覗くとそこには、銀色の羽根が数枚置いてあるのが見える。


 私はそれだけで、あの羽根がどのモンスターの素材かすぐに分かった。

 リングルムからすぐ近くにある山岳地帯に生息している"サーベルウイング"の素材だ。


 サーベルウイングは、翼が鋭い刃状になっている全身が白色の鷲のようなモンスターで、速い上に魔法の耐性が強いため、私の魔力狙撃銃では相性が悪い。


 なので、言い方は悪いがどう見ても近接攻撃しそうな彼が、サーベルウイングをどうやって倒したのか気になって仕方がなかったが、声を掛ける勇気もない私はただ彼の後ろ姿を見ているだけだった。


 しばらくして、彼が依頼したであろう武器を受け取る所を見て、私はさらに驚いの。


 彼が依頼したのは、世界で最も使用率が低い"大剣"だったからだ。


 私は、店を出た彼を無意識に追い掛けて、声を掛けてしまった。

 何の考えもなしに声を掛けたのは、正直反省点だったけど声を掛けたことに後悔はない。


 「あの、すみません!」


 振り返った彼は、黒に近い茶髪に、優しそうな茶色の瞳をしていた。

 今まで何人もの冒険者とクエストに行ったけど、下心がない純粋な瞳は初めてだ。


 私を見つめる彼の瞳に惹かれてしまったのだ。


 ハッと、我に返ると、彼は私の顔を見て驚いていた。


 彼と私は初対面のはずだから、昔会った事があるとか無いはずだ。


 「なん…で…」

 彼が呟く。


 「あ、あの……」

 「ごめんごめん、えっと君は?」


 「はじめまして、私ウィンダ・アルニスって言います」

 「俺はクリス、クリス・レジンスだ」


 「実は、今一緒にクエストに行ってくる人を探していまして、その背中に背負ってる武器が珍しくて、声掛けちゃいました」


 これが私と彼が出会った日の話。


 レッドサイクロプス戦から1ヶ月が過ぎた今、あの時の事を考えると、あの瞬間私は一目惚れをしたんだって自分でわかるぐらい大好きな思い出だ。

 でも、一番彼を意識したきっかけは森から帰る途中で女の子を助けた時だったたかな。


 ハイウルフの時も、デュラハンの時も、レッドサイクロプスの時も、彼の背中はすごくカッコよくて安心して私も戦えたと思う。

 危険な場面もあったけど、私にとっては良い思い出だ。


 なんで安心したかというとね。

 昔、お父さんの狩りに着いて行った事があって、馬車の窓越しに見ていたお父さんの背中と、私や助けた女の子を守るクリス君の姿が一緒に見えたからなんだ。


 持ってる武器も、後ろ姿も、背丈も、格好も違うのに不思議だよね。


 でも私には、私を守ろうとするカッコイイ背中だった。


 もちろん、今でも彼の事は好きだし、会えることなら今すぐ会いたい。


 あの日、私は長期外出する予定ではなかったから、家に帰らなくちゃいけなかった。

 そして帰ってきたら、今度は妹が行方不明になり、旅に出られない状況になっていた。


 もしこんな状況じゃなかったら、お母さんに許可を得てすぐにでもクリス君の後を追ったと思う。

 と言っても、彼は森で助けた少女を村に送り届けただけだから、村までは追いかけられても、その後の彼の行動が分からない。


 それでも、追い掛けたい気持ちを抑えて、今は行方不明になった妹を探すのが先だ。


 あ、妹っていうのは私の双子の妹で"ウェン"って言うんだけど、お父さんに似た私とは別で、ウェンはお母さん似で魔法を誰よりも上手く扱える子だった。


 そんな妹が、どこに行ったのか私達家族は分からない。


 だから、待っててねクリス君。

 妹を見つけて、落ち着いたらすぐに追いかけるから。


 いつまでも一緒にいようね、大好きだよクリス君。

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