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サイドストーリー ウィンダ編

公開修正中です、完成後改めて投稿します。

 私の名前は"ウィンダ・アルニス"と言います。

 ヘルニクスアルニスという街で生まれ育った冒険者です。

 

 既に察してる人もいるかもしれませんが、私はこの国の第二王女として生まれました。


 お母さんの言いつけで、街の人はもちろん誰にも王女である事を隠して生きてきました。


 これは、そんな冒険者として活動している時に彼と出会うまでのお話です。




 彼と出会ったのは、1ヶ月程前にリングルムでレベル上げをしに訪れた時だ。


 いつか亡くなったお父さんのように、強くてカッコイイ冒険者になりたくて、家の用事がない日は、依頼を受けに出掛けている。


 そのため、普段からレベル上げのために、隣街のリングルムに足を運んでいた。


 早朝に家を出て、毎日リングルムに野菜を卸しているおじさんにお願いして、一緒に乗せてもらっている。


 彼を初めて見掛けたその日も、いつも通りリングルムまで乗せてもらった。


 その日は、道中で"スライム"などの水体系モンスターや鳥類系のモンスター、獣類系モンスターと対峙することが多かったのを今でも覚えてる。


 もちろん私も一端の冒険者なので、馬車を襲いに来たモンスターを倒しながら進んだ。




 リングルムの近くまで来た時、行商人がモンスターに襲われている所を目撃した。

 私はおじさんに頼んで止まってもらい、荷台の平な天井に乗り移り、私の愛用武器"魔力狙撃銃"を構える。


 しかし、襲われている人が馬車を降りて逃げ回るせいで、モンスターだけを狙うことができず、どうしようか迷っていると。


 目にも止まらない速度で駆け込んできた人がいた。


 その人は逃げ回る行商人の後ろを追いかけ回す、拳ぐらいの鳥類系モンスターを鷲掴みにする。

 右手に具現化した細身の剣に押し当てて倒すと、行商人にお礼を言われた彼は、颯爽とリングルムへ入っていった。




 それだけならよく見かける光景なので、私が彼に興味を持つ事はなかった。


 リングルムの街中で彼を見掛けたのは、狙撃銃の修理のために工房を訪れた時だ。


 お店に入ると、彼がカウンターで工房のおじさんとお話していた。

 横からチラッと覗くとそこには、銀色の羽根が数枚置いてあるのが見える。


 私はそれだけで、あの羽根がどのモンスターの素材かすぐに分かった。

 リングルムからすぐ近くにある山岳地帯に生息している"サーベルウイング"の素材だ。


 サーベルウイングは、翼が鋭い刃状になっている全身が白色の鷲のようなモンスターで、速い上に魔法の耐性が強いため、私の魔力狙撃銃では相性が悪い。


 なので、言い方は悪いがどう見ても近接攻撃しそうな彼が、サーベルウイングをどうやって倒したのか気になって仕方がなかった。




 でも、声を掛ける勇気もなく、ただ彼の後ろ姿を見ているだけだった。


 しばらくして、彼が依頼したであろう武器を受け取る所を見て、さらに驚いた。


 彼が依頼したのは、世界でも使用率が低い"大剣"だったからだ。


 私は、店を出た彼を無意識に追い掛けて、声を掛けてしまった。

 何の考えもなしに声を掛けたのは、正直反省点だったけど声を掛けたことに後悔はない。


 「あの、すみません!」


 振り返った彼は、黒に近い茶髪に、優しそうな茶色の瞳をしていた。

 今まで何人もの冒険者とクエストに行ったけど、下心がない純粋な瞳は初めてだ。


 私を見つめる彼の瞳に惹かれてしまったのだ。


 ハッと、我に返ると、彼は私の顔を見て驚いていた。


 彼と私は初対面のはずだから、昔会った事があるとか無いはずだ。


 「なん…で…」

 彼が呟く。


 「あ、あの……」

 「ごめんごめん、えっと君は?」


 「はじめまして、私ウィンダ・アルニスって言います」

 「俺はクリス、クリス・レジンスだ」


 「実は、今一緒にクエストに行ってくる人を探していまして、その背中に背負ってる武器が珍しくて、声掛けちゃいました」


 これが私と彼が出会った日の話。


 レッドサイクロプス戦から1ヶ月が過ぎた今、あの時の事を考えると、あの瞬間私は一目惚れをしたんだって自分でわかるぐらい大好きな思い出だ。

 でも、一番彼を意識したきっかけは森から帰る途中で女の子を助けた時だったたかな。


 ハイウルフの時も、デュラハンの時も、レッドサイクロプスの時も、彼の背中はすごくカッコよくて安心して私も戦えたと思う。

 危険な場面もあったけど、私にとっては良い思い出だ。


 なんで安心したかというとね。

 昔、お父さんの狩りに着いて行った事があって、馬車の窓越しに見ていたお父さんの背中と、私や助けた女の子を守るクリス君の姿が一緒に見えたからなんだ。


 持ってる武器も、後ろ姿も、背丈も、格好も違うのに不思議だよね。


 でも私には、私を守ろうとするカッコイイ背中だった。


 もちろん、今でも彼の事は好きだし、会えることなら今すぐ会いたい。


 あの日、私は長期外出する予定ではなかったから、家に帰らなくちゃいけなかった。

 そして帰ってきたら、今度は妹が行方不明になり、旅に出られない状況になっていた。


 もしこんな状況じゃなかったら、お母さんに許可を得てすぐにでもクリス君の後を追ったと思う。

 と言っても、彼は森で助けた少女を村に送り届けただけだから、村までは追いかけられても、その後の彼の行動が分からない。


 それでも、追い掛けたい気持ちを抑えて、今は行方不明になった妹を探すのが先だ。


 あ、妹っていうのは私の双子の妹で"ウェン"って言うんだけど、お父さんに似た私とは別で、ウェンはお母さん似で魔法を誰よりも上手く扱える子だった。


 そんな妹が、どこに行ったのか私達家族は分からない。


 だから、待っててねクリス君。

 妹を見つけて、落ち着いたらすぐに追いかけるから。


 いつまでも一緒にいようね、大好きだよクリス君。

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