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第十話 救出と希少職

公開修正中です、完成後改めて投稿します。

 「はぁ……はぁ……2人共大丈夫か?」

 目の前を塞ぐダークネスファング達の様子を伺いながら、後ろから追ってくる敵の様子を見ているウィンダと少女に声を掛ける。


 だが、集中しているせいか俺の声は2人に聞こえてないようだ。




 なぜ俺達がこんな状況になっているかというと、それはクリムゾンサイクロプス戦が終わった後のこと。


 ボスエリアを出た俺達は一度手を繋ぎ、索敵と連携で周囲の道を確認した時だ。

 「ねぇねぇ、クリス君」

 「どうした?」


 脳内の情報を見るため俺達は目を瞑っていた。


 「ここから10時の方向にたくさん反応があるのわかる?」

 「ん? あぁこれか、かなりの数が集まっているな。帰り道ではないから、まぁ大丈夫だろ」


 この森の中を大群で行動するのはダークネスファングしかいないため、その反応がダークネスファングのだという確信があった。


 俺達はダークネスファングの群れがいる、10時の方向を避けつつ歩き出してしばらく経った頃。


 ウィンダの足が止まった。


 「どうした、ウィンダ」

 「クリス君、後ろから物凄い数の敵が追ってきてる」


 俺はパッとウィンダの手を引いて、近くの木陰に身を潜める。


 少しすると、目の前をオレンジ色に光るモンスターが走り去っていく。

 その直後、ざっと50体はいると思われるダークネスファング達が通り過ぎていった。


 木陰から出て、オレンジ色のモンスターやダークネスファング達が向かった方に視線を向ける。


 「俺達の帰り道向こうなんだけどな」

 「ほかの道探してみよっか」


 ウィンダがこちらに手を伸ばす。

 俺はその手を取ろうと思った瞬間。


 「お願いだから、こっちに来ないでくださーい!」


 少女のような叫び声が聞こえた。



 もしかして、さっきにオレンジ色に光るモンスターか?

 ボスエリアに向かう途中ですれ違った時も少女らしき声が聞こえた。


 「ウィンダ」

 「えぇ、行こうクリス君」


 俺とウィンダはダークネスファング達の後を追った。


 ウィンダの索敵を頼りに追いかけるが、俺には1つ懸念がある。

 それはウィンダの魔力がもう残ってないということ。


 視界右上のウィンダの魔力ゲージを注視しても、1cmも無いように見える。


 だが、魔力回復薬はもう無いため、ウィンダの援護は使えない。


 どうするか迷っているとウィンダが声を掛ける。

 「クリス君止まって、もうすぐそこだよ」


 そこはどうやら行き止まりになっているようで、木陰から中を覗くと、先程のオレンジ色に光るモンスターを囲うようにダークネスファング達が敵意を向けていた。


 そのオレンジ色に光るモンスターの隣には少女が居た。


 「あの子はなんであんなところに」

 「さぁな、だけど今は助けに入らないと。でもウィンダの残り魔力じゃ戦えないと思うから、これを使ってくれ」


 俺は手に大鎌を具現化し、ウィンダに差し出す。


 「クリス君、これは?」

 「それは"魔吸のワルキューレ"といって攻撃した相手の魔力を奪う効果があるんだ。武器が無いよりマシだと思って」


 「ありがと」

 ウィンダは俺から大鎌を受け取る。


 「俺があの子のところ行くから、ウィンダはここで待機しててくれ」

 「わかったわ、気を付けて」


 俺はスキル"神速"を発動すると、入ってすぐ壁伝いに走り出す。


 「君、大丈夫か?」

 「え!? お、お兄さんどこから来たんですか?」


 こちらに気付いた少女は少し驚いていたが、思った以上に冷静だった。


 「たまたま通り掛かった時に、声が聞こえたから助けに来たんだ。俺以外にも、もう1人入口のところで待ってるから安心して」

 「あ、ありがとうございます」


 「と言っても、まずコイツらをどうにかしないとな」

 俺は大剣を具現化して構えると、刀身に魔力を込める。


 「はあ!!」

 入口の前にいるダークネスファング達に向かって、大剣を右から斜めに振り下ろし"刃魔(はま)"を飛ばす。


 「よし、今のうちに行くぞ」

 「は、はい。シャイン!」


 俺が先行して走り出すと、少女はオレンジ色に光るモンスターの背中に乗って俺の後を追いかける。


 「ウィンダ、行くぞ」

 「えぇ!」




 それからしばらく走り続けるが、どこかで道を間違えたのか前後をダークネスファングの群れに囲まれてしまった。


 「はぁ……はぁ……2人共大丈夫か?」

 目の前を塞ぐダークネスファング達の様子を伺いながら、後ろから追ってくる敵の様子を見ているウィンダと少女に声を掛ける。


 だが、集中しているせいか俺の声は2人に聞こえてないようだ。


 「くそ、もう魔力が残ってないっていうのに」

 「わ、私に任せてください! 行くよシャイン!」


 少女の声にオレンジ色のモンスターが応える。


 「シャイン、"フレアバースト"!」


 ―――フレアバースト―――


 オレンジ色のモンスターの口内が光だし、ダークネスファング達に向かって口を開けると、自分を遥かに超えるサイズの白いブレスが目の前にいるダークネスファング達を焼き払っていく。


 「なんて威力だ」


 オレンジ色のモンスターのおかげで、道が開く。


 「よし、行くぞ」


 俺達は再び森の出口を目指して走り出す。




 しばらく走り続け、ようやく外の光が見え出す。


 「後少しだ、頑張れ」


 だが、ここまで走り続けていたせいか、ウィンダが息を切らしはじめていた。

 すると少女がオレンジ色モンスターの足を止める。


 「お姉さん、この子に乗ってください!」

 「あ、ありがと」


 ウィンダがオレンジ色のモンスターの背中に乗ると、再び走り出す。

 「よし!」


 先行していた俺も走り出そうとした瞬間、両脇から先回りをしていたダークネスファングが6体ほど、木陰から飛び出してきた。


 「最後の最後で出てきやがって」


 ―――「神速」―――


 姿勢を低くして風の抵抗を減らし、神速でさらに加速してダークネスファング達に突っ込む。


 太刀を刃先が右側になりように、地面と平行に構える。


 一番手前にいるダークネスファングに一文字切りで攻撃し、勢いのままダークネスファングの左側面を切り抜けで追撃。

 

 抜けた先で待ち構えていた2頭を、左切り上げ、右切り上げで流れるように攻撃して軽く浮かせる。


 浮き上がったダークネスファングに追撃しようとしたその時。


 「クリス君、そのまま抜けて!」


 後ろからウィンダの声が聞こえ、視線を向けると。

 俺が仕留めきれなかったダークネスファングを、モンスターに乗りながら少女とモンスターに当てないように大鎌で追撃していた。


 一目見て察した俺は、浮いたダークネスファングの下を区切り抜ける。


 太刀の剣先を前に突き出し、前にいるダークネスファング1頭に突っ込んで突き刺し、そのまま森の外に連行していく。


 先回りしたダークネスファング達の後ろは、日が沈み掛けとはいえ日が出ており、連れ出されたダークネスファングを追うことが出来ないようだ。


 太刀に刺したダークネスファングが砂化し、地面に落ちる。


 息を整えながら森の方に視線を向けると、入口ギリギリでダークネスファング達が止まり、こちらに威嚇していたが程なくして森の奥へ帰っていった。


 「全員……無事のようだな」

 「うん、何とか」


 「まさか乗りながら大鎌振るってるとは思わなかったけどな」

 「無我夢中で振ってたよ。あ、乗せてくれてありがとね、当たったりしてないかな」


 ウィンダがオレンジ色のモンスターの頭を優しく撫でながら、全身を見回す。


 オレンジ色のモンスターは、明るい所に出ると白一色のホワイトタイガーのような見た目をしていた。


 「お疲れ様シャイン」

 少女は虎型モンスターの頭を撫でながら生肉を具現化し、食べさせる。


 2,3枚生肉を与えると、こちらを振り向き一礼をした。

 「危ない所を助けてくれて、ありがとうございます」

 「ううん私こそ、その子に乗せてくれてありがとね」


 「いえ。紹介が遅れました、この子は"シャイン"。"シャイニング・タイガー"というモンスターですが、私の家族です」

 「家族ってことは、飼ってるのか?」


 「一般的にはそう呼ばれても仕方がないですね。私達は"モンスターマスター"というモンスターを使役する力を持ってる民族です」

 「モンスターマスターだと!?」


 助けた少女は"モンスターマスター"という、この世界で大剣使いより希少な職業を持った1人だった。


 コーヒー色の茶髪で、毛先が肩に触れるぐらいの赤いリボンで結んだツインテール。

 

 柔らかいクリーム色のTシャツに色味の強い黄色のチョッキと、3段重ねのフリルとそれぞれの段に白のレースが付いたダークグリーンのティアード・スカートを履いていた。

 

 首にはエメラルドのような緑色が夕日を浴びて輝く、銀色のネックレスを下げた12歳ぐらいの女の子だ。


 「私の名前は"セーム・アレクトル"です、私達を助けてくれて本当にありがとうございました」


 「気にするな。俺はクリス・レジンスだ」

 「私はウィンダ・アルニスよ」


 「とりあえず日も落ちてきてるし、一旦リングルムに戻ろう。依頼の報告と聞きたいこともあるし」

 「わかったわ」

 「わかりました。シャインおいで」


 セームの呼び掛けに応じて、シャインが歩み寄ってくる。


 「ウィンダさん、もしお疲れでしたら一緒に乗りますか?」

 「ありがと、でも逃げるわけじゃないから大丈夫だよ」


 「クリスさんはいかがですか?」

 「俺も大丈夫だ、ありがとう」


 「そうですか、では」

 セームがシャインの背中に乗る。


 「じゃあ行こうか」


 俺達3人と1頭は背中に夕日を浴びながら、リングルムへと向かった。

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