貴女に話す私の物語
そこは、現実世界から離された
まるで絵本に出てくるような空間。
花が咲き乱れた庭に白い外観の家。
ガーデンテーブル、チェアに向かい合い座る
とても綺麗なブロンドヘアーをした二人の女性。
アンティーク調のティーポットから香るハーブティー。
「今朝、摘んだものよ」
耳にかかる髪を手で整え、香りを深く味わう様に目を閉じる。
初めて彼女を見た時感じた事を今でも覚えている。
私と同じブロンドの髪、瞳の色。
この場所は彼女の為にあるのだと思わせる位に彼女は
現実離れした美しさと神秘さを持ち合わせていた。
見とれていた私に「貴女もお人形さんみたいに可愛いわよ
おチビちゃん」と彼女は言った。
心を読まれていたの?と私の戸惑う姿に控えめに笑っていた。
「貴女がここに来て
もう数ヶ月かしら」
彼女は私のティーカップにハーブティーを注ぐ。
「良かったらお話しましょう
今日はいい天気で暖かいわ」
「…何を話せば良いのか」
「シンシアクルス、貴女自身のこと
初めて逢ったときに聞きたかったのだけれど
時間が無かったものね」
私の事?
思い返せば私の人生の岐路は三度あった。
どれも別れが切っ掛けだった。
「話しにくい事かしら?」
「いいえ、どこから話して良いのか」
「そうね、生まれはどこかしら?」
「サントルヴィルです」
「随分と都会ね」
「でも、私が病弱なのを両親が気にかけて
少しでも空気が綺麗な所へって離れたんです」
風が吹き、草木が揺れる音がする。
この音が私の記憶の蓋をゆっくり開く。
幼い時の記憶、気付かない間に閉まっていたんだな。