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黒い天使が住んでいた部屋はいい匂いがする

なんだ、ここは?

右を見ても左を見ても、上を見ても下を見ても、遥か先まで大小の様々な島が浮いている。


「凄い!本当に浮遊大陸はあったんだ、父さんは嘘つきじゃなかったんだ!」


いかんいかん、テンションが上がって、思わず意味のわからないことを叫んでしまった。

天使を見ると、やはり驚いているが少し様子が違うようだ。


「ところで天使ちゃんは、ここがどこか知ってるの?」

「あぁ、ここは天界や」


天使は、あっさりと俺の質問に答えてくれた。

天界?いわゆる天国ってのとは違うのかな?


「なんでや、私は確かに下界に落とされたはずなのに?」

「えっ、落とされたってどういうこと?」

「言葉通りのことや。で、ここは私が住んでた所や」


天使は、ここの住んでいたのか?

あれ?こんな島が浮いている世界に住んでるのに、落下防止対策とかしてないのか?


「大家の兄ちゃんが考えてることはわかるで。もちろん、ここには落下防止対策はされとる。ただ、私はある理由で嵌められて落とされたんや」


また、凄みのある険しい顔になる天使。


「普通は下界に落ちたら、天界に戻るのは無理やって言われとる。だから、諦めて大家の兄ちゃんの部屋に居座ろうと思ったんやけど」

「あの、部屋から出たら天界に戻ってたということか」


多分、女騎士の時と同じ仕組みだろう。

後ろを向くと、俺の管理するアパートが寸分変わらぬ姿で存在している。


「あぁ、理屈はわからんがこいつはチャンスや。私を嵌めた奴らに仕返ししてやるで」


そう言って、天使が悪い顔をする。

普通に見た目は、ふわふわっとして透明感のある砂糖菓子みたいな美少女なのに残念すぎる。残念天使だ。


「とりあえず、私の住んでいた島に行くで。そこで、必要なもんを回収して、嵌めた奴らの動向を伺うわ」

「似たような島がたくさんあるけど、場所はわかるの?」

「ここは幸運なことに、うちの近くや。私は、飛べるけど大家の兄ちゃんはどうする?なんなら、ここで待っててもいいんやで」


うーん、やっぱり飛んで移動するんだな。

よく見れば、他の人が飛んでいる。


「一つ質問なんだけど飛んで移動したら、その天使ちゃんを嵌めた奴らに見つかる可能性がないか?」


「うぐっ、そうやな。でも、ここから歩いて行くにはちょっと遠いなぁ」


周りを見る限り道は整備されてるようだし、また車の出番かな?


「俺に、いい考えがあるんだけど」


そう言って、アパートの前に停まっている車に駆け寄る。



天使の住んでいた場所の方向を聞き車を走らす。


「なんや、この乗り物!?飛び豚の荷車より速いやんけ。しかも、この穴から涼しい風が出てくるやん」


飛び豚の荷車がどんなものなのか気になるが、エアコンの送風口に顔を近づけて涼んでいる天使の可愛い顔を見るとどうでもよくなった。


「まだ、この道を進んでいればいいのかな?」


ある程度走って、道があっているのか天使に聞いてみたのだが。スースーと、寝息を立てて寝ているようだ。


「天使ちゃん、マジ可愛い」

「うーん、むにゃむにゃ。もう、食べられへんよ」

「寝言も可愛い」


一体どんな夢を見ているのかな?


「はれ?私寝てた?」

「おはよう天使ちゃん。ずいぶん走ったけど、今どの辺りかわかる?」

「おはようさん。うーん、おっ、あの塔が見えるなら少し進んで大きな道があるはずやから、そこを右の方に行ってや」


天使の案内に車を走らせる。


「あそこが、私が住んでた所だ」


そう行って、天使が指差す方を見ると、いわゆるタワーマンションの様な建物があった。

俺は、車を停めておけそうな場所を探す。


「よし、とにかく私の部屋に行くぞ」


天使が建物の陰に隠れながらタワーマンションに近づいて行く、俺もそれに続く様に後を追った。


「誰もいないようやな」

「ま、待ってくれ天使ちゃん」

「なんだ、だらしないやん」

「だって、ここまでひたすら階段登ってきたんだから」

「このくらいで根を上げるなんて、男らしくないやん」


疲れて息を切らしている俺に辛辣な言葉をかける。

天使は飛べるからいいけどさぁ。

タワーマンションなのにエレベーターらしきものがなかったのは、この世界の人は飛べるからなんだなと今更思った。


「この通路の先、一番奥が私の部屋なんやけど、誰もいないか大家の兄ちゃんが確認してきてくれへん?」

「わかった。誰もいなければ手を振って合図するよ」


そう言って、踊り場から通路に出て他の人がいないことを確認する。

一番奥まで進み、扉のノブに手をかける。

扉は、押しても引いても開かない。


「よし、誰もいないな。天使ちゃんに合図を送ろう」


階段があったほうに向かって手を振る。

すると、身を低くして天使が素早く飛んできた。


「大家の兄ちゃんあんがとな」


天使がお礼を言いつつ鍵を開け扉を開く。

周りを警戒しつつ、ゆっくりと中に入っていく。


「はよ入り、誰かに見られたらあかんから」


天使に誘われて玄関の中に入る。

扉を閉めると、鍵をかけろと言われたのでそうする。


「ふむ、部屋の中は無事なようやな。とっとと必要なもん回収していくで」


天使が探し物をしているうちに、部屋の中を見て回る。


「ここが、天使ちゃんの住んでた部屋かぁ」


なんか、花のような果物のような甘い匂いが鼻腔をくすぐる。肺いっぱいに、匂いを吸い込もうと大きく深呼吸をする。


「やばい、頭がクラクラするほどいい匂いを吸い込んでしまった」

「なんや、大家の兄ちゃんは匂いフェチなんか?」


声に気がつくと、ニヤニヤと笑っている天使がそこにいた。悪い顔の笑い方だ。


「自分の匂いって自分じゃわからんが。もし、仕返しが成功したら、思う存分匂い嗅がせてやるで」


とんでもない誘惑をしてきた。


「もちろんや、契約書があるから嘘はつかれへん。なんやら、直接匂い嗅いでもええで」

「ぜひ、お願いします」


返事は即答だった。



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