第十六話 ノヴァの知る真実
急いで仕上げたので、不可解な部分があると思います。
どうか脳内変換でお願いします。
俺とマークは一足先にルキリスの街の南西、城壁の外に作られたマーガ開発の為の巨大な建物へと辿り着いた。
マークの荒々しい操縦にもめげず、俺はだるい体を気合で動かし、どうにか資料室まで歩いて移動した。
俺が少しだけ休んでいると、ミレイユさんが声を掛けてきた。
「その様子だと、モンスターの件は問題なく解決したのですね?」
資料室にある椅子にもたれ掛かる様にして座っていた俺に、ニッコリとした表情でそう聞いてきた。
「ええ。途中でドラゴンが出てきた時は、流石にどうしようかと思いましたけどね」
と、少しだけ苦笑いしながらそう答えた。
ミレイユさんは右手を軽く握り、口に当て、クスっと笑っていた。
知らないだろうが、あのドラゴンはマジでヤバかった。ノヴァ氏の助けが無ければ、あの戦闘で俺は死んでいたかもしれないのだ。そう考えると、今回は本当に運が良かったとしか言いようが無い。
「ドラゴンですか…。しかし、ダインさんがそこまで苦戦するとなると、やはり皆さんで協力して討伐されたのでしょうか?」
「いえ…。たった一人の人物に助けられましたよ。それに…。そのドラゴンは…」
俺がそこまで言うと、ミレイユさんは訝しげな表情となる。
その表情を見て、俺は「話すと長くなります…」と言って、説明を開始した。
ドラゴンは、ダーメル王国国王ワイナルが、デロスと言う謎の人物によって変身させられたという事。俺を助けてくれたのは、全身白を基調とした軽鎧を身に付けた不思議なエルフの男性である事等だ。
そして今から、そのノヴァ氏を交えて、ルキリア国王と謁見をする事になっている事までを話した。
「そうですか、色々と大変な事になっているのですね…」
「はい…」
「王城に行くのなら、この施設の正面玄関に馬車を置いていますので、私と一緒に王城へ戻りませんか?」
「それは好都合ですね。俺も流石に今日はクタクタですから」
ミレイユさんは「フフフ」と、慎ましく笑っていた。
その後少しだけ、今後の施設の方針や増設の備え等を話していたら、マークがマーガの車庫入れを完了させて俺を迎えに来た。
「ダイン、終わったぜ。今から王城に出向くんだろ?」
「ああ。ミレイユさんの馬車がこの施設の正面玄関に置いてあるって言うから、俺は一緒に向かう事にした」
「そうか、なら俺も一緒に乗っていくぜ」
そんな会話を交わし、俺達3名は馬車に揺られ、ルキリア王城へと向かう事になった。
王城へと向かう最中、馬車の中ではマークがエドガーを背負いながらモンスターと戦った時の話しを聞かせてもらった。
ミレイユさんは常にニッコリしながら話しを聞いていた。俺は一度聞いていたが、詳しく聞いていなかったので補完する形で話を聞くことになった。
そんな感じで、マークの戦闘話に火が付き、永久に語り続けるのではないか? と思われたとき、御者のオッサンから王城到着の声が掛かった。
ミレイユさんも、途中から呆れた笑顔で話しを聞いていた様子だったし、俺は半分寝そうになっていたので非常に助かったのである。
さて、その事は置いておいて皆と合流しなくてはならないが…。どこに居るのやら…。
そう思いながら城内に入ると、皆既に謁見の間の近くに集まっていた。
時間的に19時頃であり、城内には蝋燭の火が灯っていた。
馬鹿デカイ城内を十分に照らす為、大き目の蝋燭が使用されている。以外にも明るく、辺りの様子も良く見える。
俺達が到着するなり、早速謁見の間の扉が開かれる。
もう少しゆっくりしたかったが、仕方ないだろうな…。
謁見の間に入るのは、俺、リディス、マーク、シンシア、ダストン、フィリップ、ミーナ、アイシャ、エドガー、ゴードンの子供10名と、俺とミーナの父であるライアス、ディクス爺ちゃん、リディスとフィリップの父であるジョージさん、アイシャの父であるアイクさん、ミレイユさん、そしてノヴァ氏の大人6名である。
子供と大人の割合がおかしいが、この際気にしないでおこう。
俺達16名が謁見の間に入るなり、国王陛下から声が掛かる。
「ふむ、戦闘直後で疲れているだろうし、食事もまだであろう。面倒な挨拶は抜きにしよう…。して、今回の主役は…」
国王ガルドスは、そこで一旦話しを中断し、ノヴァ氏を見て再度言葉を続ける。
「お主のようだな…。白いエルフの者よ」
ノヴァ氏は国王の言葉に、フッと小さく笑い、それに答える。
「ああ。マルーノの王よ。これより私が事の事情を説明しよう」
ノヴァ氏がそう言うと、国王の右隣で佇む大臣さんが声を上げる。少し怒った様な顔付きだが…。大丈夫か?
「き、貴様…。国王陛下に対し無礼であろう!」
「良い、白きエルフの者よ、続けられよ」
国王は大臣を左手で制し、落ち着かせると、ノヴァ氏は説明を開始した。
「先ずはモンスター共の残存勢力の討伐は今も続いているようだ。この事は、ディクス氏から話しを聞いていると思う。例のドラゴンの件を、私自らが話しをする事で良いのだな?」
「左様、概ねの状況は既に余も聞き及んでおる」
「了解した…。そのドラゴンの話しをする前に、この星…。惑星ティーズの事を話さなければならないだろう」
ノヴァ氏が惑星ティーズの話しをしようとすると、謁見の間はシンと静まり返った。
俺、リディス、マーク、シンシア、ダストン、フィリップ、ゴードンは既に、この星がティーズと言う惑星である事を知っているが、他の11名はまだ知らない。その為、その表情は真剣そのものである。
「先ず、結論から言わせてもらうが…。この星は一度滅びかけている」
は!? 何だって? 滅びかけてる? 「滅ぶ」と言う単語が出てきた瞬間、皆の表情が引き締まっていた。
そんな俺の脳内とは裏腹に、ノヴァ氏は更に言葉を続ける。
「その原因となったのが、災厄結晶と言う自然現象が招いたとされている。だがしかし、私は人為的に起こされたのではないのかと思っている」
なるほど、人為的にそんな事をしでかす奴と言えばデロスしかいないだろう。
ワイナルの言葉が正しければだが…。しかし、カオスクリスタルって何だ? またしても訳の解らない用語が飛び出したが…。
ん? 待てよ…。ところで何時滅びかけたんだ? と、俺が思っていると、国王陛下が口を開いた。
「ふむ、人為的にその災害を齎したのがデロスと言う男であろう事は余にも想像できるが…。滅びかけたとは一体何時頃の話しであるのか?」
国王陛下の表情は引き締まったままであったが、言葉の節々には若干の困惑が見られる。
ノヴァ氏はその質問に対し、少し思案した表情の後、重々しく口を開く。
「ああ。私もデロスの仕業であるだろうと思っているが、今までに発生した多色の魔結晶をその身に宿すモンスターは自然発生していた。私は長年そのモンスターを駆逐してきたのだが…。その話はまた後でしよう。この惑星が滅びかけたのは今から凡そ5万年前だと推測される。何故、5万年前か? と、私に聞かれても正確には答えられない。恐らく5万年経っているだろうという事位しかな。その5万年と言うのは、当時の私の同士が開発した、惑星再生紋記号魔法で設定された、惑星の再生に必要な年月の事であるからな。だから凡そ5万年と言ったのだ」
いやいや、5万年って…。て事は、ノヴァ氏はタイムスリップか何かで、この時代のティーズに来たという事になるのか?
「私の同士…。ブルーノが開発した惑星再生紋記号魔法によって、長い年月を掛け、惑星ティーズはこうして再生している。彼が言っていた言葉を伝えよう…。もし、惑星間戦争等が起きてしまい、惑星が死に掛けた時に、この装置が自動的に作動するようになっている。とは言っても、そんな事柄が起きない方が良いと、そう言っていたが…。事は起きてしまった。我々ティーズの者達の中でも屈指の実力を持つ者達が、その脅威に対し、果敢に戦いを挑んだのだ。その脅威と言うのが、先程述べた災厄結晶をその身に宿すモンスターだ。当時の外見は巨大なドラゴンだった。その時に私を助け、単身で災厄結晶に挑んだのが…。私の親友で、最初の黒の魔結晶を持つ者だったのだ。彼は恐らく、災厄結晶と相打ちになったのだろうな…。私のように、この時代のティーズに来ていない事からも分かる事だ」
最初の黒の魔結晶の所持者か…。どんな人物だったのか非常に気になるが、今はノヴァ氏の話を聞く事としよう。
しかしだ、何故にドラゴンの姿形をとったのかが疑問である。出来ればその事も話してもらいたいが、ノヴァ氏はバトルジャンキーな感じがするので、聞いても無駄な気がする…。
俺がそんな思考をしている最中にも、ノヴァ氏の話は続く。
「私はその戦いの最中、自分の巨大人型魔導戦闘兵器を全速力で飛翔させ、時間転移紋記号魔法が備えられている施設へと赴いた。その戦いで生き残ったのは、私を含め、僅か2名だった…。戦いに参加したのは私を含め7名だった。生き残ったもう1人は恐らく、私とは別の時間軸に飛ばされたのだろう。ここ200年程探してみたが、彼女の噂は聞かなかったからな」
当時の巨大人型魔導戦闘兵器は「マキナ・ギアス」と言うらしいな。
なんだか、命令すると絶対遵守しそうな名称だが、気にしない方が良いだろう。
だが…。ノヴァ氏並の強さを誇り、完成されたマーガが有りながらも苦戦する相手って、どんな化け物なんだろうか…。想像するだけで冷や汗が出てくるじゃないか!
まぁ、マーガに関しては今更名称の変更もしたくないし、偉大な先人達には悪いがマーガのままで通させてもらうことにしよう。
マキナ・ギアスってのも厨二っぽくて格好良いけどね。
「その女性の名前はグリーナと言う。もし、その名前を聞く事があれば、私が探していたと伝えてもらいたい」
ノヴァ氏はそこで一旦話を区切った。
すると、国王陛下が疑問をぶつけてきた。
「俄かには信じられんが…。紋記号魔法とは、そこまでの振る舞いが可能であるのか? それに、災厄結晶とはそこまで驚異的な力を持っているということなのか? それにだ、白のエルフよ、お前は200年前からこの地に居たという事は…。もしや伝説の白い勇者ではないのか?」
うお、質問攻めだ。
俺なら一歩下がりそうな位の鬼気迫った顔で、そうノヴァ氏に問いただしていた。
「その質問に全ては答えきれない。私は戦闘に重きを置く者だったからな、紋記号魔法については知識不足だ。ブルーノが居れば答えてくれていただろうが…。災厄結晶については驚異的であると判断してもらって構わない。アレはこの世に存在してはいけない危険な代物だからな。白い勇者と言う事に関しては正解だ。確かにそのように呼ばれた事はあったが、私自身自負はしていないし、名乗った事も無い。誰かが勝手にそう呼んでいただけだ」
ノヴァ氏が白い勇者であった事を暴露すると、辺りは更に静けさを増した。
無理も無かろう、俺だって驚いている。
まぁ、最初出会った瞬間に、もしかしたら? って思いもしたがね。
俺がそんな事を考えていると、国王陛下が椅子から腰を上げノヴァ氏の元に駆け寄って来た。
そして、徐に右手を差し出し、有効の握手を求めている。
ノヴァ氏もこれに応じ、同じく右手で有効の握手をしている。
「そうか! お前が白い勇者であったのか! これまで良くぞこの世界を救ってくれた。皆を代表し礼を言おう!」
「いや、礼には及ばん。私は親友との約束を果たしているだけに過ぎない」
「そう謙遜するでない、実際にこの世界には、お前の伝説や英雄譚が存在する。だがしかし…。エルフと言えども200年とは少々長生きであるが…?」
「私の体は特殊な細胞で構成されている。老化を和らげ、戦闘体としての寿命を大幅に向上させあるのだ」
「……細胞とは? いや、勇者であれば何でも有りであろう!」
「フッ…。そういう事にしておこう」
ノヴァ氏は最後に少し笑みを浮かべ、国王陛下にそう答えた。
二人は厚く握手を交わしていた。
「そうよな…。お前の名は? 白い勇者よ」
「私の名はノヴァ・ホワイト。ノヴァと呼んでもらって構わない。マルーノの王よ、名を聞こう」
「そうか、ノヴァと申すか。余の名はガスクルード・ガルドス・ルキリアと言う。このルキリア王国の13代目の国王である」
「了解した、ガスクルードだな」
2人はお互いに名乗り合い、有効を深めている様子だった。
そしてその後、国王陛下が俺を見て真剣な表情で話し掛けてきた。
「ではダインよ!」
俺は背筋をピンと伸ばし、以前カディウスさんから教えてもらった謁見の間での正式な仕草をする。
俺に見習って、俺の友達メンバーも同じような仕草をする。
「はい!」
「お前に勅命を下す! 災厄結晶に対抗する為の巨大人型魔導戦闘兵器の製造に取り掛かるのだ!」
「御意!」
「そしてこの時より、お前には巨大人型魔導戦闘兵器製造の為の特殊団体の長を担ってもらう。学業に関しては余が都合をつけよう。それとだ、その特殊団体の幹部には、お前が最も信頼する者達を選ぶが良かろう」
「はっ!! 有り難き幸せ! ダイン・リヴォース、この身を粉して事にあたらせて頂きます!」
「うむ!」
何だか知らないが、マーガを自由に作れる事になったようだ。しかも、学業に関しては都合がつくらしい。
俺的には、折角学院に通っているので、完全に辞めたりとかはしたくないし…。この事は後でじっくり考えよう。
幹部候補は既に決まってる。俺の友達メンバーは全員だ、後はミレイユさんとエンリケさん、出来ればカディウスさんも来てくれると嬉しいんだけど…。
俺がそこまで考えていると、話はデロスの事に切り替わった。
「してノヴァよ。デロスと言う者は一体何者なのだ?」
「ああ。デロスはこの星の者ではない。奴は異星の…。敵対惑星だったゲルシュタン星の者だが、惑星再生紋記号魔法の発動に巻き込まれ、この星に再度生まれてしまったイレギュラーだ」
「ほお…。惑星再生紋記号魔法について詳しく話してもらえるか?」
「ああ。先程も話したが、私は紋記号魔法の知識は乏しい。ブルーノから聞いた話によると、惑星の生物の遺伝子情報と精神情報を魔粒子から集め、再構築する仕様であるとしか聞いていない。恐らく、デロスの遺伝子情報も精神情報と一緒に、この惑星で再構築されたのだろう。ブルーノはこうも言っていた、精神情報に関しては、再現は非常に難しいと…。完全に本人を再構築するのは、技術的にも無理があるとも言っていたが…。デロスはどういう訳か、ほぼ完全な状態でこの惑星に蘇ったようだな。デロスは危険な研究を推し進めていたとも噂を聞いた事があったが…。それがまさか、災厄結晶の製造であったとは…」
「そうか…。では、我が国もデロス探索の手伝いをしよう。危険な人物である事を世に広める事にする」
「ああ。助かる…。ワイナルとか言ったか…。あの者が最後にデロスの事を話してくれたのは助かった」
「そうか…。ワイナル殿が…」
「そうだ、あの者のお陰で、私は真の敵に標的を絞る事が出来た。冥福を祈るとしよう」
俺達は最後に貴重な情報をもたらしてくれたワイナルに黙祷を捧げる事にした。
この後、国王陛下が気を利かせてくれて晩餐会となった。
この場に居ないマルナには非常に申し訳ないが、ここは有り難く頂くとしよう。
晩餐会では、女性陣が皆ドレスに着替える事になった。俺達男性陣も正装をする事になる。
リディスとシンシアのドレス姿は見惚れる程に美しかった。特に胸元辺りがアレだったので眼福でした。
その席で、ノヴァ氏は国王陛下となにやら色々と今後の事に関して相談しているようだった。
晩餐会は22時まで続き、俺達が帰宅したのは深夜0時を過ぎていた。
俺は体内魔力の消耗が激しく、帰りの馬車の中でぐったりとしていた。
家に帰ってからマルナに、非常に羨ましそうな目で見られたのは良い思い出である。
ノヴァ氏はその戦闘力を生かし、単独でデロス捜索を開始すると帰り際に言っていた。
俺が長を勤める事になる特殊団体については、後日正式に謁見の間にて申し渡す事になった。
そして、そんな長い長い1日から一週間後…。
マーガ開発及び、特殊戦闘集団の結成が発表された。
団体名は「黒天の団」主に、巨大人型魔導戦闘兵器の開発を行う組織で、各方面から要請があれば、それに応え、戦闘をも行う特殊集団である。
代表的なマーガは俺達が最初に作り上げた機体の量産タイプを発表する事にした。
機体名は黒天機壱型である。まだ1機しか出来上がっていないが、後数ヶ月もすれば数十機がこの世界に顕現する事になるだろう。
それと、黒天の団の構成メンバーは以下の通りとなる。
団長・開発責任者:ダイン・リヴォース
副団長・開発副責任者:カディウス・サライアス
団長補佐:リディス・グルーノ
戦闘実働隊総隊長:マーク・アイゼン
戦闘実働隊副総隊長:フィリップ・グルーノ
戦闘実働隊・壱番隊隊長:ゴードン・ルーイング
戦闘実働隊・弐番隊隊長:シンシア・エスパダ
鍛冶隊隊長:ダストン・ドランク
機体組み上げ部隊隊長:エンリケ・ファイダム
外務・交渉の総責任者:ミレイユ・パナンタ
と言う構成になる。
ミーナ、アイシャ、エドガーは、流石にまだ一桁の年齢の為、役職は無しとなる。
その内、黒天の団が大きくなった時、なにかしらの役職には就かせてあげたいと考えている。
それと、俺達中等部のメンバーの学業に関する都合だが。戦闘に関する授業は全て免除され、座学に関してはレポートを纏めるだけで良いとなった。
個人的には、もう少し学生生活を楽しみたかったが…。致し方あるまい、相手は超が付くほど凶悪なのだ。のんびりもしていられない。
まぁ、レポートと聞いて真っ先に顔色を悪くしたのは言わずもがな、マークである。今日もブースカ文句を言って、やる気の無いレポートを作成している。
それと、学園には礼儀作法と言う授業が有るが、これに関してはミレイユさんから生きた礼儀作法を学べるように、国王陛下が命令したらしい。実に有り難い事である。
今は黒天の団結成の発表から1週間程経過している。日に日に礼儀作法を吸収していっている感じだ。
学院には登校する事が無くなったが、俺達10人の少年少女は今日も今日とてレポートの作成に勤しんでいる。
以外だったのがカディウスさんの入団である。
飛行船の開発が忙しいだろうに…。と思っていたが。本人曰く「こちらの方がより面白い発見がありそうな気がする」と言って、入団を決断したようである。
ならばと言う事で、いっそ副団長に就いてもらおうと思い、半ば無理やり副団長になってもらったのである。
同時に開発副責任者として、戦闘用の飛行船の開発にも携わってもらう事を話すと、嬉々として引き受けてくれた。
個人的な話になるが、リディスの役職に悩んだ結果…。彼女は俺の補佐になってもらうことにした。
本当に大事な者は、遠ざけておくのが良い。と昔から言われているが、彼女のたっての希望も有り、団長補佐として任命した次第だ。
マークとフィリップはバトルジャンキーなので、妥当な役職であろう。マーク単体では不安なので、礼儀正しいが棘の有るフィリップを補佐として付けてある。これで何も心配は…。いらないだろう! 多分…。
ダストンには鍛冶部隊の隊長になってもらったが、本人曰くまだまだ駆け出しだと言っているので暫定である。
彼の父である、ディクトルさんの下で目下修行中である。はやく一人前と認められる事を祈ろう。
エンリケさんは、毎日嬉々としてマーガを組み上げている。
発表から1週間も経つと、その作業効率は格段と上がっているようだ。既に3機が完成している。その裏に、エドガーの頑張りがあった事をここに記そう。エドガーも何かの役に立ちたいと思ったのだろう。
因みに、黄の魔結晶を持つ者の体内魔力は、他の色の魔結晶を持つ者よりも少ないとされているが、エドガーはそれを、しかも8歳で突き破ってしまった。一昔前のヤンチャ坊主が、嘘のような変わり栄えである。
各部隊員の皆様方は最初、俺達の年齢に反感を持っていたようだが、俺とマークの本気の模擬戦を見学してもらうと…。手のひらを返したように態度が一変した。どうやら相当になめられていたようだ。今となっては、彼らは忠実な部下である。
壱番隊は近接戦闘なので、ゴードンに隊長を任せた。案外良い配置だったと、その後思い知る事になるが、この時は暫定でしかなかった。
弐番隊は遠距離戦闘なので、シンシアに隊長をしてもらった。彼女の弓の腕はマスタークラスらしく、弐番隊の隊員からは慕われている。
ミーナとアイシャは、今や団内のマスコット的な立場を獲得している。
ミーナ戦闘技術はライアスも認めるほどである。平の団員に混じって訓練していても、頭一つ抜けて目立つ程だ。
アイシャは緑の魔結晶の効果を遺憾なく発揮し、ミーナにボコボコにやられ団員達を手当てしている。彼女の杖術の腕も、カディウスさん仕込でグングンと成長している。
ミレイユさんの交渉術は素晴らしいとしか言い様無い。流石は国王直属の秘書であっただけはある。と言うか、良く俺にミレイユさんを預けてくれたもんだと思う。国王陛下の広い心に敬礼!!
まぁ、そんな感じで、毎日が忙しく過ぎ去っていく。
そして…。
月日はあっという間に過ぎ去り、黒天の団結成から、約3年半が経過した。俺は15歳を向かえ、この世界で成人した。
第三章終了です。
次章より、沢山のマーガが登場します。
補足として、マルナは主婦道まっしぐら、ライアスはルキリア王国軍突撃隊隊長のままです。
ダイン達の戦闘技術顧問はライアスです。




