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第五話 ルキリア王城での謁見

 皆さん、俺は今日王城に旅立ちます。

 嗚呼、どうなってしまうのでしょう? 心配でなりません…。

 と言う位緊張している。

 昨日は何故かぐっすりと眠れたしまった。

 転生してから何時も思っているが、何でこんなにぐっすり眠れるのか不思議でならない。

 朝目が覚め、台所に向かったら、マルナが俺をニヤニヤ見ていた。

 何でだろう? と思ったが、直ぐに思い当たる節があるのに気がついた。

 マルナは俺を見ながら…。


「ダインも成長したのね~! 母さん嬉しいわ~! それで、リディスちゃんとはどうなったの?」


 とか聞いてきたので、俺はテキトーに誤魔化しておいた。

 実際、まだ大人の階段は上っていないので、一緒に夜景を見ていただけだよ。と言っておいた。

 その後は何時も通りに朝食を頂き、カディウスさんが迎えに来たので、一緒に王城を目指している。

 今現在は、国王陛下が用意してくれた馬車に乗って移動中である。

 出発前にマルナから交通手形を渡されたので、学園で使用している普通サイズの鞄に入れある。

 ついでなので、マーガの設計図も一緒に複数枚持ってきている。

 話のついでに、国王陛下とカディウスさんを脅かしてやろうと思っている。

 ん? 不敬罪にならないかって? これを見たらそんな感情飛んでいくと思うよ! 多分…。

 今は馬車に揺られながら、カディウスさんと会話している。

 今日こそは聞かなくてはいけないな、妖精結晶の事を!


「カディウスさん、妖精結晶の話を伺っても良いでしょうか?」


 カディウスさんは、少し申し訳なさそうな顔をしていたが。直ぐに表情を真剣なものに変え、俺の問いに答えてくれた。


「ああ、済まなかったな、すっかり開発に没頭してしまって忘れていた。妖精結晶とは、魔法の効果その物を向上させる効果がある代物だ。どういった作りになっているのかは、妖精が隠しているので、我らエルフの里出身者でも分からない。だが、一説によると、非常に高密度の魔粒子結晶体ではないのか? と言う話があるが…。妖精結晶は非常に硬くてな、その構成要素を解明出来ていないのが現状だ。それと、100年使用しても劣化しない。実際に、王城には100年使用された妖精結晶が存在している。私も1度だけ見た事があるが、傷一つ付いていない綺麗な状態だった。私も我が目を疑ったがな…。以上が私の知る限りの事だ。良ければ君の意見も聞かせて欲しい」


 ふむ、カディウスさんでもそこまでしか知らないとなると、いよいよもって謎の物質となるな…。

 しかも経年劣化しない上に、非常の硬質ときた。解明不可能ならば、老人妖精に絶対に吐かせないといけないな。

 高エネルギー結晶体って線は、既に研究されている内容のようだな。

 しかし、俺の意見か…。


「そうですね…。俺の見解では、妖精結晶には、何かしらの通信置的な部分があるのでは無いかと思います。まだお話ししていませんでしたが、妖精には、紋記号魔法を自由に操作する能力があるようです。実際にこの目で見たので間違い有りません。それと、通信装置といったのにも理由があります。エピタルの森には、妖精の住処が存在するのですが、そこに立ち入る際に妖精結晶に念じる事で、妖精の住処へ至る紋記号魔法で構成されたと思われる門が出現します。俺が出会った妖精に念じるのですけど、向こう側からの返答が無いのが気掛かりでしたけどね。」


 カディウスさんは俺の話しを真剣に聞いている。

 俺が話し終わると、カディスさんは一度頷く。


「うむ、通信装置の要素は確かに有るだろう。王国軍が妖精結晶の数を揃えている事が、それを証明している。だが驚いたな、紋記号魔法で異なる空間を繋ぎ合わせるとはな…。私もまだまだ研究不足のようだ。内部はどうなっていた?」

「内部は広大な紋記号魔法の空間が広がっていました。大きさからして、俺の家の訓練施設の数十倍以上かと…」

「そこまで広大な空間が広がっていたのか…。もしかすると、まだ私の知らない空間連結紋記号が存在するのかもしれないな…」

「恐らく、カディウスさんがそう言うと思って、見慣れない紋記号を書きとめておきましたよ」


 俺は即座に鞄から洋紙を取り出し、カディウスさんに手渡した。

 カディウスさんはそれを右手で受け取ると…。ああ、早速見入っている。

 空間連結紋記号は、俺もまだ完全には理解していない。

 昔カディウスさんから触りだけ教えてもらったが、何のこっちゃかさっぱりだった。

 あ、カディウスさんがプルプルしながらこっちを見ている。何か解ったのかな?


「ダイン君…。これは素晴らしい発見だ! 私の見立てでは、空間連結紋記号の上位互換だ! これを用いれば、従来の10倍以上の空間を生成出来る! だが…。こちらの紋記号はまったく検討が付かないな…。」


 カディウスさんはそう言って、幾つか書いてある紋記号の一つを指差していた。

 俺にはそれが何なのか検討が付いている。


「カディウスさん、信じられないかもしれませんが、妖精の住処では、外とは全く違う時間が流れているのです。つまり、時間が止まっている、もしくはゆっくり流れている。と予想できます。」

「そうか! この紋記号は、時間制御を意味していると考えられるのだな! だがしかし、これだけでは無い様に思えるな…。ダイン君、次に妖精の住処を訪れる様な事があれば、是非ともこの洋紙に書かれていない紋記号を書きとめて欲しい」

「了解です、任せといて下さい!」


 俺とカディウスさんは、この後も紋記号魔法の話題で盛り上がった。

 魔粒子を動作エネルギーに変換する紋記号円の話題も出た。

 最初に見つけたものよりも、より効率化出来る組み合わせを発見したそうだ。

 俺もそれには興味をそそられるので、食い入るように聞いていた。

 どうやら、球体状の装置にするとの事だった。

 そんな趣味の話をしていたら、あっという間に城門の前に到着した。

 ヤバイ…。緊張し過ぎて、歩き方が可笑しくなりそうだ…。


「さぁ、付きましたよ。お二方は此処で降りて下さいませ」


 御者のオジサンにそう言われたので、俺とカディウスさんは、屋根付きの豪華な客席から降りる。

 城門の左右には、厳ついデモニックの衛兵が二人立正している。

 カディウスさんは非常に手馴れているようで、衛兵の二人になにやら説明している。


「ダイン君、中に入ろう」

「は、はいぃ!」


 俺はゴードンの様に語尾を上げながら、カディウスさんの右横を歩いて王城に入る。

 ルキリア王城に入ると、広大な広間に出た。何十メートルあるのやら…。

 その広間の端の方では、リアルメイドさんが掃除等を行っている。

 いや~、リアルメイドさん…。実に良いね!

 あ、1人のメイドさんが、上司と思われるメイドさんに叱られている。

 前世のアニメやドラマで見た光景だが、まさか現実として見る事になろうとは…。

 てか、なんでこの世界の女性は、あんなにお胸が大きいのかが非常に気になる。

 ん、おおぉ! 俺の左右に、リアル王城階段があるぞ! なんかテンション上がってきたぁ!

 ぬおぉ! 今度は目の前に荘厳な装飾が成された扉がある! なんとファンタジー!


「ダイン君? 何故そんなに目を輝かせているのだ?」

「あ、いえ…。ちょっと気分が高揚しておりまして…」

「そうか、次が我らの番だ。少しそこの椅子で休もう」

「はい」


 俺とカディウスさんはしばらく待つ事になった。

 俺が脳内で興奮している最中に、扉の左右に居る兵士の方と話していたそうだ。

 気が付かなくてごめんなさい…。っと心の中で謝罪しておく。

 待つ事10分程で、俺達の番になった。

 ん? 俺達意外には謁見する人は居ないのかな?

 あ、扉が開かれるぅ! 緊張するぅ!


「それではこちらへ…」


 俺はカディウスさんの右隣を歩く。

 カディウスさんは一切緊張した様子を見せていない、堂々とした様子で歩いている。流石だ…。

 謁見の間はやたらと広く、そして天井もやたらと高い。西洋の映画とかで良く有る光景だが、リアルで見ると感動してしまう。

 今俺の目の前には、白くて背の高い椅子に座っている人物が目に入っている。

 耳は長く無く、体表の色も俺と同じような色、額には魔結晶が無い事から、その人物がマルーノだと分かる。

 栗色の髪をオールバックにし、大様らしい髭を生やした雰囲気たっぷりのオジサマだ。

 その人物こそ、ルキリア王国第13代国王、ガスクルード・ガルドス・ルキリアである。

 その右脇に控えるのエルフのオッサンが大臣だろう、左脇に控えるのはお気に入りの兵士さんだろう、非常に厳つい…。

 ひぃ~、もう到着してしまったぁ! えっと~、先ずは跪くのだったよな…。あ、カディウスさんの真似をしよう! そうしよう!

 チラっと左横を見ると、カディウスさんが跪いていたので、俺も真似っ子する。


「国王陛下、呼び出しに応じ、ダイン少年を連れて参上いたしました」


 カディウスさんが小声で俺に(ダイン君、名乗りなさい)と言ってきたので、覚悟を決めて自分の名前を言う。ゴードンみたいに語尾が上がりませんようにぃ~。


「ご紹介に預かりました。ダイン・リヴォースです!」


 ふぅ…。語尾は上がらなかったから良しとしよう! だけど…。メッチャ緊張するなぁ。これで良かったのか?


「うむ! 余がガスクルード・ガルドス・ルキリアである! 此度の登城嬉しく思うぞ! では早速だが、あの空飛ぶ船を設計したのはお前か? ダインよ?」

「はい! ぉ(イカン!) 私が設計致しました! 実際に作っているのはカディウスさんです!」


 危ねぇ~、あと少しで俺って言いそうになった…。


「うむ! それは聞いておる。余はお前に興味を持った。聞けば、黒の魔結晶をその身に宿すそうではないか。ダインよ! 魔力球を見せてみよ!」


 ふむ、確かに魔力球を見ればその者が宿す魔結晶を確認出来る。

 どうせなら、ドカンと多めに出すそう! そうしよう!

 俺は一瞬で、魔力球を10個を作り出し、俺の半径1メートル以内を周回させてみる。

 どんな反応が? と思ったら、カディウスさんと国王陛下以外は口をパクパクさせている。


「ダインよ! 実に見事ぞ! 他には何か出来んのか? 余をもっと驚かせて見せよ!」


 お? 国王陛下が椅子から立ち上がっている。

 そんなに興奮しなくても、面白いものなら色々有るよ?

 何が良いかな? エナジーハンドからだな。取り敢えず許可を取ろう。


「国王陛下! これよりこの鞄を、魔粒子を用いて空中に浮かべてご覧に入れます!」

「ほぉ! それは面白い! 早速やってみせよ!」

「はい!」


 俺はエナジーハンドを2個作り出し、自分の鞄を空中でお手玉して見せた。

 カディウスさんは何時もの表情だが、兵士さんと大臣さんは、目を丸くしながら口をパクパクしている。実に器用だ、見ていて面白。

 国王陛下は腕組みをして、非常に楽しそうに笑っている。


「グハハハ! 良いぞ! 余をもっと楽しませよ!」

「国王陛下! この謁見の間を飛んでも宜しいでしょうか?」

「構わん! やって見せよ!」

「はい!」


 俺はエナジーフロートを纏い、その場で2メートル程浮いてみせると。

 兵士さんと大臣さんは完全に固まってしまった。

 俺は問答無用で謁見の間を飛び回る。許可も出たし、不敬罪にはならないよね?


「うおおお! これは素晴らしい力だ! ダインよ! 余はお前が気に入った! 余が叶えられる範囲で、お前の望みを聞いてやろう!」


 俺が謁見の間を飛び回っていると、国王陛下からそんな言葉を頂いた。

 俺は思考したいので、一旦カディウスさんの右横に着地し、エナジーフロートとエナジーハンドを解除する。

 エナジーハンドを解除した事で、空中から落ちてきた鞄を両手で受け止める。

 では思考を始めよう。

 このタイミングで望みを言うのはまだ早いと俺は思う。

 何故ならば、この鞄の中には、まだ設計段階とは言え、世界をひっくり返す程の代物が入っている。

 これを国王陛下が見たならば、更に望みを上乗せしてくれるかもしれない。

 だが逆に、俺を重要人物だと見做して、何処かに束縛されるかもしれない。

 次は、危険人物だと見做して、俺をこの場で処刑するかもしれないが、この場合は最悪、力ずくで脱出は可能だと思う。

 あの兵士さんは、かなりの強者だと推測出来る。高速移動される前に、俺が全力障壁を展開すれば良いだけの事だ。

 念の為にマジックセンサーを隠し持って来ているので、この場の全員の体内魔力は把握済みである。

 俺の次がカディウスさんだ、相変わらずデカイな…。

 次があの兵士さん、言っちゃ悪いがライアスと変わらない。つまり魔法関連だと敵では無いと言う事だ。

 もしかしたら、ライアスのように何かしらの武器術に長けていたのならば、俺の身体能力では回避出来ないだろう。

 うむ、ここは勇気を出してマーガの設計図を見せてみるか…。


「国王陛下! こちらに見てもらいたい資料が御座います!」


 俺は鞄から綺麗に丸められた2枚のマーガの設計図を取り出し、跪きながら恭しく両手でそれを持って献上しますのポーズ!


「なんと! まだ何かあると申すか! 大臣よ、持って参れ!」

「御意!」


 国王陛下が大臣を指名すると、固まっていた大臣が再起動し、俺の元に小走りで向かって来る。

 俺は大臣さんに、完成予想図と、どういった事が出来るのかを纏めた、2枚の洋紙を手渡す。

 大臣さんは、俺が渡した2枚の洋紙を、小走りで国王陛下に向かい、そして恭しく手渡す。

 国王陛下がマーガの事が書かれた2枚の用紙に目を通し始めた。

 俺とカディウスさんは黙ってその様子を見ている。

 王様のサイドに控える二人は黙って俺達の方向を向いている。

 あ、段々と王様の体がプルプル震えてきた。

 それから少し経つと、ついに国王陛下が破顔した。


「グハハハ! グハハハ! これは面白い! 本当にこんな物が出来ると言うのか!? 答えてみよ、ダインよ!」


 さて…。なんと答えようか?

 正直、完成させるには広大な建造施設が必要になる。よって、ここはでの返答はこうなる…。


「今はまだ、完成させる為の設備も施設も無いので、必ずしも出来るとは言えません」


 国王陛下は眉ピクッと動かしたので、一瞬ヒヤっとしたが。その直後には、国王陛下の顔が笑みに変わる。


「うむ! 正直で宜しい! では、その設備と施設が望みか?」

「その通りです!」


 俺がそう言うと、大臣さんが前に出ようとしたのを、国王陛下が手で制して止めてくれた。

 全くもう…。脅かすなよ…。


「良かろう! その願い、聞き届けた!」

「有難う御座います! 国王陛下!」

「うむ! それではカディウスよ! お前はそのまま空飛ぶ船の開発を港層にて続けよ!」


 それを聞いたカディウスさんは、恭しく頭を垂れる。


「畏まりました、国王陛下」

「ダインよ! 近日中に使いの者を回そう、その時に色々と話し合うが良かろう!」


 使者か、どんな人が来るのか楽しみだが…。出来れば美人なお姉さんが良いなぁ~。

 イカン! イカン! 返事をしなくては!


「はい!」

「では下がって良いぞ!」


 俺とカディウスさんは、国王陛下に恭しく一礼してから謁見の間を後にする。

 それにしても…。やったね~! 期せずして、研究施設を手に入れられるぞ!

 作る場所は…。何処にしよう?

 謁見の間を出る直前に、大臣さんが俺にマーガのアレコレが書かれた2枚の洋紙を持ってきたが。既に何枚か用意してあるので、国王陛下に献上しますよ。と言って大臣さんに渡してもらうように頼んだ。

 大臣さんはまた小走りで国王陛下のもとに帰っていった。

 忙しい人だな~、と思ったね。

 そんな事より、マジで何処に作ろう?

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