第十三話 将来へ向けて
後半はダイジェストです。
シュガイン家からの帰り道、アイシャにばったり出会ってしまった。
ちょっと気まずいな…。と思ったが、ミーナがアイシャに笑顔で微笑んでいた。
「アイシャさん! 今から家に来るの?」
「はい、これから向かうところですが…。お出かけされていたのでしょうか?」
「じゃ、一緒に行こうよ!」
「はい」
俺達は、アイシャを連れて一緒に帰宅する事になった。
道すがら、エドガーと仲直りした事を話すと、大層驚いていた。
昨日の話からして、アイシャも相当に怖がっていたようだったからな…。
言い忘れていたが、ライアスの口利きで、エドガーの謹慎処分は解除される事になった。
エドガーもイールさんも大喜びしていた。明後日から復帰出来るように取り計らってもらうらしい。
明日までは大人しくしていろ! って事だな。
道中、アイシャはミーナに、怖がっていてごめんさない。と言っていた。
ミーナは全然気にしてないよ! って言っていたから安心したが、アイシャの内心は複雑だろうな。
ちょっと気になった事があったので聞いてみた。
「昼からエドガーの所に行ってみたらどうだ?」
「う~ん…。今日はエドガー君も疲れてるだろうから、学院に復帰した時にきちんと紹介するよ」
と、ミーナが言ってた。
うむ、確かに今日はもうクタクタだろうな。
アイシャはどうなんだろう? もう怖くないのだろうか?
「アイシャは大丈夫なのか? 怖いんじゃなのか?」
「はい…。怖いですけれど、ミーナさんが仲直りしたのなら平気…。だと思います」
ふむ、やはり複雑な心境のようだな。
この件に関しては、後はこの二人に任せよう。
無責任かもしれないが、これも大人になっていく道だと考えた方が良いだろう。
さて、会話しながらだとあっという間だな、もう我が家に着いた。
俺達リヴォース家の面々はこれから食事だ。
気になったのでアイシャも一緒にどうだ? と誘ったが、もう食事は済ませたと言っていた。
流石に一人だけ除け者にするのも忍びないので、俺の席に座ってもらい、俺はエナジーフロートで浮きながら食事をする事になった。
俺がエナジーフロートで浮くなり、アイシャが驚きの表情をしていた。
「こ、これは! まさか…。浮遊魔法ですか!?」
「そうだよ、驚いたかい?」
「はい! 魔粒子の新たなる振る舞いを見る事が出来て感激です!」
「ダイン、それが浮遊魔法なの?」
「うん、妖精の住処に居た老人妖精にヒントをもらったんだ」
と言う会話を交わしながら食事を進めた。
マルナはそこまで驚きはしていなかったが、アイシャは終始興味深げに俺を見つめていた。
食事も終わり、今日は戦闘訓練も休みしているので大きく時間が空く。そこで俺は秘密の計画書の作成に取り掛かる。
今日はその中の一つを紹介しよう。
壮大な計画の一つ、それは空飛ぶ乗り物、飛行船だ。
この世界の陸路は、モンスターの脅威に晒されている。
空を飛ぶモンスターも居るが、絶対数は少ないらしい。
そこで、俺が考えた飛行船の登場だ。
まだまだ改良の余地はあるが、近い内にカディウスさんに提出する予定だ。
これが完成すれば、俺の壮大な計画に一歩近づく事ができる。
この世界は機械文明に乏しい、次は工業用に何かを開発したいところだ。
飛行船には紋記号魔法をふんだんに使い、プロペラを動かす機構を取り付けてある。
推進装置には、魔道具のドライヤーを応用したものを取り付ける予定だ。
エナジーフロートが出来るようになったので、もしかするとまた何か閃くかもしれないが、現状はそんな所だ。
そんな感じで計画書を書き進めていると、ミーナとアイシャが俺の自室に入って来た。
「兄さん、アイシャさんに、エナジーフロートをもう一度見せてあげて」
「どうかお願いします!」
アイシャは深く頭を下げている。俺も今は時間に余裕があるから構わない。
「良いよ。それじゃ、中庭の訓練施設に入ろう」
その後俺達3人は、中庭の訓練施設に潜る。
潜って直ぐに、俺はエナジーフロートを行使し、訓練施設内を高速飛翔して見せた。
アイシャは、目を輝かせながら俺を見つめている。
「やはり! ダインお兄様は素晴らしいです!」
「兄さん! アイシャさんと一緒に飛んであげて!」
「よし来た!」
俺は急旋回し、アイシャをお姫様抱っこする。
アイシャは、キャ! と短く言っていたがお構いなしだ。
俺がアイシャをお姫様抱っこしながら、訓練施設を飛び回る。
「もう感動し過ぎて、失神しそうです!」
失神されてはマズイので、俺はアイシャを直ぐにミーナの隣に降ろした。
ミーナとアイシャは終始大はしゃぎだった。アイシャの年相応な表情を見た気がした。
俺はここで、ある疑問を解消しようと思い、エナジーフロートを解除し、自室に戻る。
ミーナとアイシャに、訓練施設にまだ居るように言っておく。
俺は自室のベットの下に隠してある妖精結晶を持ち出し、訓練施設に戻る。
戻った早々、妖精結晶をアイシャに渡し、対攻撃魔法障壁を展開するように指示する。
その障壁に対し、ミーナの弱めの風属性の攻撃魔法で攻撃してもらう。
すると、障壁はとんでもない強度を示す。
ミーナの攻撃魔法を、いとも簡単に掻き消したではないか!
音にするなら。シュ! ってかんじで消えていった。
「こ、これは!? もしや妖精結晶では?」
「ん? アイシャは知っているのか?」
「はい、お父様から話だけは聞いた事があります」
「てことは、隊で使ってるのか?」
「はい、妖精の住処に、年に2度程訪れ、そこで幾つか貰い受けていると聞いております」
「へぇ~、そうなのか」
ふむ、それは初めて聞いたな、老人妖精も言って無かったし。
この後はミーナにも持ってもらい、俺に向けて攻撃魔法を撃ってもらった。
今度は、俺の全力障壁に亀裂を入れるまでの威力になっていた。
この妖精結晶は、魔法の効果そのものを強化出来る代物のようだ。
今度は俺が使ってみる。行使するのは身体強化だ。
身体強化した脚力で軽くダッシュしてみたら、一瞬で壁に激突しそうになってしまった。
やっぱり、俺が使うのはよろしくないな…。
この後は、ミーナとアイシャに魔法の講義を行い、夕刻前となったのでアイシャを家に帰した。
夕食までの時間が空いたので、ライアスに稽古をつけてもらった。
「おお! 良い動きをするようになったじゃないか!」
「いや、まだ父さんには追いつけないよ!」
お互いに木槍で打ち合いながら親子の会話を楽しんだ。この場合、師匠と弟子だけどな。
俺とライアスの様子を、ミーナが羨ましそうに見ていたので、仕方が無いので代わってあげた。
ミーナも槍を使用し、ライアスと打ち合う。
その様子を見ていたが、正直驚いた。
ミーナの動きはまだゆっくりではあったが、この短期間での成長は実に素晴らしい。
俺がミーナとライアスの組み手を見入っていると、マルナが食事の準備を終えて俺達を呼びに来た。
俺達はその後食事をし、食卓を囲んで家族の会話を楽しむ。
その後は何時ものように自室に行き、秘密の計画書の作成に取り掛かる。
そして就寝時間が来たら寝る。という何時もの日常に戻った。
次の日。
今日からまた、普通に学園が始まる。
今日の朝食はマルナが作ってくれた。
ライアスを見送り、俺とミーナも学園に向かう。
学園までの道のりを少し進むと、リディスが追いついて来たので、何時ものように二人でマラソンし雑談を交えながら学園に向かう。
学園に到着すると、マーク、シンシア、ダストンの3人が待っていた。
俺達5人は、挨拶もそこそこに教室に向かう。
教室に入ると、クラスメイトが手厚く出迎えてくれた。
「野外演習の無事の帰還おめでとう!」
等と言って、トリスタン先生が来るまで大盛り上がりだった。
その後、トリスタン先生がやって来て、何時もの授業が始まった。
一日の授業が終わり、俺達5人が帰る間際に、座学のレポート範囲を羊皮紙に纏めたものを手渡してきた。
範囲を確認すると、そこまで多くなくて一安心だった。
マークは範囲を確認すると固まってしまったが、俺達で協力して手助けする事に決めた。
それから翌日。
エドガーが学園に復帰したとミーナから聞いた。
アイシャは少し怖がっていたらしい。
ミーナも何とかしようと考えていたら、エドガーが丁寧なお辞儀をして、アイシャに握手をしようと手を伸ばしたら。アイシャも渋々握手に応じたそうだ。その日は3人で、早く仲良くなれるように、ミーナが会話を助けたりしたと聞いた。そのままの調子で仲良くなって欲しいものだ。
この週の休日に、俺はカディウスさんに飛行船の設計図を渡した。
カディウスさんは非常に驚いていたが、直ぐに開発に取り掛かりたいと言っていた。
この週の休日、友人メンバー全員にエナジーフロートを披露した。
皆は非常に羨ましそうな眼差しで俺を見ていたので、一人ずつ一緒に訓練施設内を飛び回った。
男性メンバーをお姫様抱っこするのは気が引けたので、俺の背中に乗せて飛び回った。
座学のレポートに関しては、やっぱりマークが出遅れていたので全員で一緒にレポートを作った。良い思い出だ、一生忘れまい。
そして、この日から更に月日が経ち、俺達は11歳となり、中等部2年となった。
この数ヶ月は平和そのものだった。
何かあったか? と言うと、ミーナがエドガーを家に連れてくるようになった。勿論アイシャも一緒だ。
その3人は、エドガー復帰後から段々と打ち解けて行ったみたいで、今では良い友達関係のようだ。
最初の頃は、アイシャがエドガーを少し避けていたみたいだが、今後一切暴力を振るわないと、固い誓いを立てている。
少し前から、ミーナとアイシャの二人で、エドガーに文字や計算も教えているようで、エドガーの振る舞いも最初の頃とは随分と変わっている。
今では…。
「ダインさん! お疲れ様っす! 今日も宜しくお願いするっす!」
なんて口調に変わったくらいだ。
ま、今後もこの調子で頑張ってもらいたいな。
エドガーの魔結晶は黄なので、性質変化の魔法しか使えないが。体内魔力の鍛錬を続けているらしく、性質変化の魔法を長時間行使出来ると言っていた。
試しに、水を硬化させてみたところ…。どう言う原理化はまったくの不明だが、カチコチの塊が出来上がった。何に使うんだろう…?
ダストンは一本の剣を完成させていた。
ダストンの親父さんからもお許しが出て、今年の野外演習に参加出来るようでなによりだ。俺も嬉しい。
まだ親父さんには、俺の設計図は見せていないと言っていた。もう少し俺の武器が出来上がってから見せたいそうだ。
実は今、俺の友達メンバー全員分の武器の設計図も作っている。ダストンがアノ武器を完成させてから見せようと思っている。
そう言えば、今年からフィリップも野外演習に参加するだろう、非常に楽しみである。
ミーナはなんと! エナジーハンドを2個を、1日6時間維持できるまでに成長している。我が妹ながら、とんでもない成長速度だ。
最近じゃ、エナジーハンドを使って家事の手伝いも始めている。
ミーナの腕力じゃまだ重たい物でも、エナジーハンドを使えば楽々だ。
ミーナのエナジーフロートの練習はまだまだ出来ない、体内魔力が今の倍は欲しいと思う。その事は、ミーナも納得しているようで一安心である。
カディウスさんは、飛行船の開発に没頭している。完成には、まだまだ時間が掛かるとの事だったが。最近非常に面白い発見をしたので、それを使うと言っていた。
俺では用意できない資材も、顔の広いカディウスさんなら用意できる。
それでも、まだ完成にはこぎつけていない。無責任だが、気長に待とう。
没頭し過ぎて、妖精結晶の事を聞けずじまいになっているのが少し悔やまれるがね…。
俺もその面白い発見を、壮大な計画に組み入れているので、色々と捗っていて非常に楽しい。
その事は、近い内に公開しようと思っている。
そんな感じの数ヶ月だった。
そして今日は、中等部2年の最初の授業が始まる日でもある。
俺は何時ものように朝食を準備し、家族を起こし、食事を済ませ、学園へと向かう。
その道中に、今日から中等部のフィリップと、俺と同学年のリディスがマラソンしながら追い付いて来た。
「おはようございます! ダインさん! 今日から中等部なので、宜しくお願いします!」
「おう、今日から宜しくな、フィリップ」
「考えてみたら早いよねぇ、もうフィリップが中等部だよ」
「本当だな」
俺達は、そんな雑談をしながら学園に向かう。
学園の前には、何時ものように例の3人が待っていてくれた。何時も早いな…。
俺達は挨拶も程々に教室に向かう。
さて、今後はどんな事が起こるだろうか?
第二章終了です。




