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第十一話 無事におかえりパーティー

 それではパーティーです。

 今日は皆で集まってパーティーだ。

 俺は朝6時に起床し、料理の下準備マルナと共に進める。


「さーて! 今日は腕によりをかけなくっちゃね!」


 と言って、気合を入れるマルナ。実に光り輝いている。


「程々にね。そうそう、今日ディクス爺ちゃんも来るかもしれないよ。インパスアとダーメルの小競り合いが片付いたみらいだから」

「まぁ! それは更に頑張らなくっちゃ!」


 イカン、再度気合を入れさせてしまったようだ…。

 作り過ぎなきゃ良いが…。

 俺とマルナが二人で楽しく準備を進めていると、玄関がノックされた。

 俺は一旦作業を中断し、玄関に向かう。

 現在朝の7時だ、一体誰が? と思ったら。


「おはようダイン君! あたしも手伝いにきたよ!」


 リディスだった。

 これでもかと笑顔を浮かべている。

 俺はリディスに一旦荷物を置いてくるように促し、台所に案内する。


「母さん、昨日話した通り、リディスが手伝いに来たよ」

「よろしくお願いします!」

「ありがとね~。それじゃ、そこのお芋の皮剥きから頼みましょうか」

「はい!」


 マルナから指示のあった芋の皮むきを開始するリディス。

 果たしてその腕前は…。


「お、おい! そんなに深く皮を剥いてはいけません!」

「うぅ~、やっぱりお芋の皮剥きは苦手…」

「だったら、お菓子の飾りつけをしてもらいましょう」

「はい!」


 今度はお菓子の飾り付けを始めるリディス。

 しばらくしてチラッと見てみると…。

 お? おおお!? おおおおお!

 素晴らしいセンスではありませんか!!

 なんと言うか、実に女の子らしいデコレーションではありませんか!


「おお! リディス! これは一つの才能だよ!」

「ありがとうダイン君!」


 鼻の頭に生クリームを付けてる辺りがお約束過ぎるが。

 褒められて喜んでいるリディスを見ていると、なんだかホンワカするな。

 この後も楽しく雑談しながら各自作業を進める。

 俺は前世の料理知識を生かし、カレーと鶏肉の照り焼き等を作り。

 マルナは得意の魚料理とスープ、お菓子を次々に付くっていく。

 リディスは出来たお菓子に飾り付けを行っている。

 料理の準備も一段落した頃、ミーナとライアスが覗きに来た。


「おお! これは凄いな!」

「兄さんの料理だ! 母さんのお菓子もある! どっちも美味しそう!」


 ミーナもライアスも大喜びだ、ミーナはかなりテンションが上がっている。

 昨日の落ち込み具合が気になったが、もう吹っ切れたのかな?

 あ、リディスがミーナの頬の赤みに気が付いたようだ。


「ミーナちゃん、その頬はどうしたの?」

「リディス、その話は後にしよう」

「あ、うん…。ミーナちゃん、また後でね。フィリップももうじき来るから」

「うん! あ、そうだ! 兄さん、今日はアイシャさんも来るよ」

「そうか、今日は全員集合かもな、カディウスさんも来るかもしれないし」


 そう、今日は恐らく、俺の友人知人達は皆集まるかもしれないのだ。

 この後ミーナとライアスは、中庭で武器の素振りを始めた。

 昨日の夕食で聞いたが、ミーナの武器術はグングン成長しているらしい。

 俺も後で見せてもらおう。

 俺達の料理も終わり、朝の10時になった時、一気にメンバーが増える。

 やってきたのは、マーク、シンシア、ダストン、フィリップ、アイシャである。

 俺は5人と一緒に中庭に向かうと、ミーナが剣の素振りをしていた。

 素晴らしい成長具合である。

 俺が6歳の時は、今のミーナ程上手くなかったからな。

 因みにミーナはどんな武器でも上手く扱えると、ライアスが言っていた。

 この短期間ですげーな…。才能を感じる。

 皆目を丸くしている。当然だと思うよ。

 剣の素振りを終えたミーナにアイシャが駆け寄る。


「ミーナさん、具合はよろしいのですか?」

「うん! 兄さんが帰ってきたら、元気がでちゃったみたい」

「そうですか…。良かった…」


 ミーナとアイシャは二人で抱き合っている。

 なにやら友情の一幕を見た気がする。

 友情は大切にすんだそ! ミーナよ!


 さて、ミーナの素振りも終わり、俺達は居間に移動し、パーティーを開始する。


「では! 無事におかえりパーティーを、はっじめよう!」


 シンシアの号令が掛かり、各々食事を始める。

 今日は立食式のホームパーティーだ。

 お、マークが俺のカレーを食べ始めたぞ。


「うおおおお! なんじゃこりゃ! メチャクチャうめーーー!」

「あ、あたしも頂こうかな」

「んじゃ、わたしも~」

「ぼ、僕も」


 リディス、シンシア、ダストンもカレーを食べ始めた。

 マークの口には非常に合うようだな。

 作ってよかった。


「本当! 美味しい!」

「これメチャクチャ美味しいよ~」

「うん! こんなの食べた事ないや!」

「そりゃ良かった、ジャンジャン食べてよ」


 俺のカレーは非常に人気が良かったようで、30分もしない内に半分以上無くなってしまった。

 ここで玄関がノックされる。

 マルナとライアスが玄関に向かいお客を招きいれた。

 やってきたのはディクス爺ちゃんとカディウスさんだった。

 ん? やたらと仲良さそうに話してるな。


「フハハハ! お主もダインを気に入っておるのか?」

「うむ、私と共に紋記号魔法の研究をしている。彼が3歳の頃からの友人だよ」

「いらっしゃい、爺ちゃん、カディウスさん」

「おお! ダインよ! 昨日振りじゃのぉ」

「ダイン君、無事の帰還を祝福しよう」


 俺は二人に労ってもらいながら、色々と会話を交わした。

 この時少し気になって、ダストンと会話をした。


「なぁ、ダストン。俺の依頼はどうだ? 進んでるか?」

「うん、少しずつだけどね。そうだ、父ちゃんに見せても良いかな?」

「構わないよ、何か良いアドバイスが貰えるかもしれないからな」

「うん、有難う。あ、それでね。来年の野外演習は僕も行けると思うよ」

「おお! 本当か! そりゃ楽しみだな!」

「うん!」


 この後ダストンともう少し会話した。

 1年後までに、武器を何か1つ完成させたら野外演習に行かせて貰えるらしい。

 因みに、俺が彼に依頼しているのは、壮大な計画の一端に過ぎないが、皆の武器や防具も考えなくてはいけないな。

 この後カディウスさんとも会話した。


「カディウスさん、妖精結晶について、何かご存知ありませんか?」

「うむ、妖精結晶は我らエルフも良く知る物だ。今度、時間が空いた時に詳しく話そう」

「はい! よろしくお願いします!」


 俺がカディウスさんと会話している直ぐ傍で、ミーナとディクス爺ちゃんが会話していた。


「ミルフィーナよ! 武器の訓練を頑張っておるそうじゃのぉ」

「うん! わたし、もっともっと強くなりたいもん!」

「フハハハ! 精進せいよ!」


 爺ちゃんもご満悦のようでなによりだ。

 ミーナの横にはアイシャがくっ付いている。

 もう離れません! オーラが漂ってる感じがする。

 どうかイケナイ方向には行かないように…。心の中で合掌!

 その後も各々会話を楽しみ、夕刻前にはお開きとなった。

 俺達リヴォース家の面々は、お客様を丁重に見送る。

 俺の友人メンバーには、明日の訓練はお休みしようと伝えた。

 皆も明日はゆっくりしたいと言っていたので、それで良しとしよう。

 皆が帰ったと思ったら、アイシャがまだ残っていた。

 俺はどうしたのかと思い、彼女に聞いてみた。


「アイシャは帰らないのか?」

「少し、お話を聞いて貰いたいのです」


 ミーナの事だろうな、終始ミーナにくっ付いたままだったし。

 俺とマルナである程度食器を引き終えた後、アイシャを連れ、居間で話を聞く事になった。


「ミーナさんの件です、わたしも一緒にいましたので、詳しく説明出来ると思います」

「アイシャさん…」

「いえ、これも友としての勤め」


 こうしてアイシャの話が始まった。


 ■■■


 私の名前はアイシャ・マルトー、6歳です、今年で7歳となります。

 私の友人、ミルフィーナ・リヴォースさんが、同じクラスの男子生徒に殴られてしまった事件について説明すべく、今現在リヴォース家の皆様の前でお話をしています。

 あれはそう、今から2日前の事でした。

 この日はたまたま座学の授業が無くなり、学園の校庭で遊ぶ事になりました。

 私とミーナさんの二人は、クラス内に親しい友人は居ません。

 ですので、クラスの皆さんから少し離れた所で遊ぶ事にしました。


「ミーナさん! 今日は負けません! それ!」

「おーっと! 捕まらないよ!」


 何時ものように、二人で楽しく魔力球で追いかけっこをしていました。

 私達と同年代の方々は、まだ魔法については学習しておりません。

 もし見つかれば、妬まれる事もあるでしょう。

 ですので、校庭の隅の方で遊んでいたのです。皆さんから隠れるように。

 その時です、一人の男子生徒が声をかけてきました。


「おい! お前達はなんでもう魔法を使えるんだ! なんで俺にできねーんだよ!」


 突然1人の男子生徒が近寄ってきました。

 私は怖くなり、ミーナさんの後ろに隠れてしまいました。


「良かったら、わたしとアイシャさんで教えるよ? コツさえ掴めば直ぐ出来るから!」


 そう、マルーノの男子生徒、エドガー・シュガイン君はクラス内でも粗暴な少年として嫌われているのです。

 彼は何時も一人で、誰からも相手にされません。

 そんな彼が、私とミーナさんに話しかけてきました。

 その理由は分かりません、寂しさを紛らわす為だとも思えますが…。

 しかし彼は、男性としてのプライドから、女性に教わるのが嫌だったのでしょう。

 ミーナさんは教えてあげるつもりのようでしたが…。

 この後も少し口論が続き、ついに彼の我慢が限界に達しました。


「くそ! 生意気なんだよ! 女のくせに!!」


 そう言って、彼はミーナさんを殴ってしまったのです。

 私は怖くなり、目を閉じてしまいました。

 ドス! っと、人が倒れる音が聞こえてきました。

 私が目を開けると、ミーナさんが尻餅をついてしまいました。

 痛そうに、頬を手で覆っていました…。

 私はどうしたら良いのか分からず、ずっとミーナさんの後ろに隠れていました。


「こら! エドガー! お前は何をやっているんだ!」


 その光景を見た先生が、エドガー君を叱りました。


「おい、ミルフィーナ…。大丈夫か?」

「はい…。少し痛みますけど…」

「アイシャ、彼女を医務室に連れて行きなさい」

「はい…」


 私は先生に促され、ミーナさんを医務室に連れて行きました。

 その途中、ミーナさんは大丈夫だと言っていましたが…。

 私は心配でなりませんでした。


 それから翌日、エドガー君は謹慎処分になったと聞きました。

 ミーナさんのお父様、ライアスさんが口利きをしてくださっと聞いております。


 エドガー君も、もう少し冷静になっても良かったのはないか?

 何故きちんと話を聞こうとしなかったのか?

 怖い思いもしましたが、彼の心の問題なのかもしれません…。

 正直に言いますが、ミーナさんを殴った事は許せません。

 ですが、誠意ある謝罪をしてくださるのならば、私もきっと―――


 それから更に翌日、ミーナさんのお兄様がお帰りになると報告を受けた私は、この事実を私自ら説明したいと思い立ちました。

 これが私の知る限りの事です。

 これ以上は…。上手く説明出来ません…。

 ミーナ周りのエピソードはもう少し続きます。

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