第四話 妹の友達は才女!?
妹の友達登場です。
今日、妹が友達を連れて来た。
今俺は、何時ものメンバーと、俺の自宅の中庭に集まって、今後の訓練方針や、ライアスから話のあった、例の野外訓練について語り合っていた。
そこに妹のミーナが、見知らぬ少女を連れて現れる。
「兄さん、こちらがわたしの友達。アイシャさんだよ」
その少女は、緑の髪の毛で、肩の高さで綺麗に切り揃えられたスレートヘアー。
前髪は、繭の少し上で綺麗に切り揃えられ、頭のてっぺんにはアホ毛がある。
目付きはジト目で、瞳は金色をしている。
実に不思議な雰囲気のする、エルフの少女だった。
「ご紹介に預かりました、アイシャ・マルトーです。以後お見知りおきを」
そう言って、アイシャと名乗った少女は、丁寧なお辞儀をする。
それにしても、とても6歳とは思えない喋り方だ。
ミーナが霞んで見えてしまう程だな…。余程親の教育が良いのだろう。
ここは、俺も自己紹介しなければならないだろう。
「始めまして。ミーナの兄でダインと言う、よろしく」
「はい、こちらこそ」
またしても、優雅にお辞儀をしてくれた。
まさか貴族か? とも思ったが、貴族は貴族の学校がある。
一般層の学園には来ないので、やはり親の教育が良いのだろう。
そのアイシャを、目を丸くして見ているのが、リディア、マーク、シンシア、フィリップである。
そりゃ、驚くだろうよ、こんな6歳は、そんじょそこらには居ないのだから。
因みに、ダストンは今日も親父さんに、鍛冶の修行をみっちりやらされているようだ。今度労ってやろう。
そう考えた所で、アイシャが俺に尋ねる。
「ミーナのお兄さん。そちらの方々は、ご友人さんでしょうか?」
優雅に掌で4人を指し示すアイシャ。
すげーな、どんな教育を受けているのだろうか?
そんな事より、皆を呼ばなくては。
「え? ああ、そうだよ。お~い皆! 自己紹介してあげてくれ」
俺がそう言うと、皆固まっていた皆が再起動し、それぞれに自己紹介を始める。
それに優雅に答えるアイシャ、実に立派である。
ふと思ったが、この子もミーナと同じように、この世界の理で生まれたのだろうが…。
それにしては、話し方が理知的過ぎる。
その精神は、もう大人だと言っても良いだろう。
もしかして、何か特別な事が出来る類の子なのだろうか?
俺がそんな事を考えている間、皆の自己紹介が終わり、俺達中等部組みとフィリップは、中庭の地下に在る、紋記号魔法で作られた訓練施設に入り、激しい戦闘訓練を行うことになった。野外訓練も近いしな。
ミーナとアイシャは、中庭の外で遊ぶらしい。
気になったので、何して遊ぶのか聞いてみた。
「わたしとアイシャさんで、体内魔力の鍛錬をするんだよ」
「ミーナさんの魔力球は、とても長い時間維持出来るので、凄く羨ましいです」
「まったまた~。アイシャさんも、結構長持ちするでしょ?」
「いえいえ、まだまだです。早くミーナさんのようになりたいと思います」
なんと言うか…。これは6歳の会話なのだろうか…?
まぁいいか、俺は無理はしないように言っておき、思考を切り替え、中等部組みとフィリップを連れて、訓練施設に潜る。
皆、この4日で溜まっていたいたのだろう。
マークなんかは、何時も以上に凄まじい動きをしていた。
ただでさえ、デモニックの高い身体能力があるのにだ。
身体強化魔法と、リディスの補助魔法が加われば、鬼に金棒である。
魔法有りの戦闘訓練で、俺と互角だった。
この時の勝負は引き分けだった。
その後、息の上がった俺達は語り合う。
「はぁ、はぁ、マーク…! 一旦休憩しよう!」
「ぜぇ、ぜぇ。お、おう、そうだな…。しかし、お前も相変わらず、魔法在りだと無茶苦茶だな。まともに決まらねーぞ」
「それはお互い様だろ?」
「ああ…! そうだな!」
なんだか、更に友情が深まった気がした会話だった。
その後、各組み合わせを一巡して、一旦ティータイムとなった。
外に出ると、ミーナとアイシャが、お互いの魔力球で何やら遊んでいた。
ミーナの魔結晶は青なので、青い魔力球はミーナのものだと解る。
その隣を、クルクル回る緑の魔力球は、アイシャのものだろう。
その色から、アイシャの魔結晶は緑だと直ぐに解った。
しかし、近距離とは言え、二人とも実に器用に魔力球を操作している。
俺はアレだが、独自に練習してこの腕前だと、将来はかなり有望である。
「あ! 兄さん達おかえり~。今ね、魔力球で追いかけっこしてたんだよ」
そんな遊びを開発したのかよ! 我が妹ながらなんという発想力か!
「ミーナさんの魔力球はとても速いのです、私ではまだまだ追いつけません、精進しなくては」
「そんな事無いと思うけどな~? 兄さんの魔力球なんか、もっと速いよ?」
「では、是非見せて頂きたいものです!」
なんだか、アイシャのジト目が一瞬…。キラリ! と光った気がしたが…。きっと気のせいだろう。
「兄さん…。やってくれないかな?」
俺に駆け寄って来て、お願いするミーナ。
その直ぐ後ろで、アイシャが興味深げに俺を見ている。
ま、魔力球位ならどうってことなし。
「良いよ」
俺は魔力球を作り、それを高速飛翔させながら、中庭の中を縦横無尽に移動させる。
それを見た他のメンバーも、負けじと後に続く。いや、頼まれたの俺だけなんだけど?
今この中庭には、高速飛翔する4色5つの魔力球が、縦横無尽に飛び回り、一種のイルミナーションを作り上げる。
その様子を見たアイシャが、両手を胸の前で組み、感動している女の子のポーズをする。
心なしか、そのジト目が輝いているように見える。
「皆さん素晴らしいです! どうか私も、ここで訓練させてください!」
やっぱりその流れになるんだね、予想してたけど。
ここは、仲間はずれにしてはいけない。
俺は快く了承する。
「良いよ、一緒に訓練しよう、アイシャ」
「はい! 今後ともよろしくお願いいたします!」
アイシャは、力強くお辞儀をしてくれた。余程嬉しいのだろう。
ミーナも喜んでいるようで何よりだ。
俺が魔力球を魔粒子に還元させると、中等部組みのメンバーとフィリップも、それぞれ魔力球を魔粒子に還元させる。
その後、ティータイムとなる。
その席でも、アイシャは皆の人気者だった。
皆からの質疑応答に、丁寧に答えていく。
その質疑応答の中でも、両親の話が興味を引いた。
シンシアが両親の事を聞いていた。同じエルフ同士、気になったのだろう。
アイシャの父は、ルキリア王国軍の魔法部隊の隊長をしているそうだ。ライアスは知っているのだろうか?
母は、元ルキリア王国軍の魔法部隊に居たと言っていた。
両親共に軍で働いていたのか…。確か良い教育を受ける事が出来るだろう。
それにしたって、出来すぎやしないか?
その後も、アイシャを主体に会話が弾み、楽しいティータイムも終わる頃、アイシャは帰宅する。
彼女の帰宅後、俺と中等部メンバーとフィリップは、再び訓練施設に潜り、激しい戦闘訓練を行う。
ミーナは中庭で、エナジーハンドの練習をすると言っていた。
その後はマルナと、一緒に買い物に行くそうだ。
俺達の戦闘訓練は夕刻まで続き、皆汗を掻き、良い運動をした後の爽やかな顔をしている。
そして帰り際に、明日も訓練をしようと皆で約束する。
ダストンを労うのは来週になった。すまないダストン…。頑張れよ!
その日の夕食の席で俺は、王国軍の魔法部隊の隊長について、ライアスに聞いてみた。
「ああ、よく知っている。彼の指揮は素晴らしいからな」
との事だった。
やはり知っていたか~、同じ軍だもんな~。知ってて当然である。
しかし、仲が悪いとかじゃなくてホントに良かった。
これで仲が悪いとかだったら、ミーナがかわいそうだ。色々な意味でな。
その後は、アイシャの話で盛り上がった。
次の日。
今日はライアスも休日だ。
俺達の為に、週の最後に1日休みを入れ、武器の鍛錬に付き合ってくれている。
この日の鍛錬は、妙に力が入っていた。
恐らく、野外演習の事もあるからだろう、魔法無しの訓練は、いつも以上に熱が入っていた。
今日もアイシャが遊びに来てくれていて、ミーナはアイシャに、エナジーハンドを見せていた。
アイシャは大層驚いていたが、ミーナがまた…。
「兄さんのエナジーハンドはもっと凄いよ!」
と言って俺を推したので、俺は惜しげもなくエナジーハンドを披露した。
「こ、これは驚きです! ミーナさんのエナジーハンドもそうですが…。魔粒子に、このような振る舞いが出るとは…。実に興味深いです!」
振る舞いって…。そんな表現を使いますか? この子どんだけ博識なんだ?
因みに、ミーナのエナジーハンドは、何かを掴んだりする動作をすると、約5分程で限界になるようである。
この調子で鍛錬を続ければ、1年後には、かなり長時間維持できるようになるだろう。妹の将来が楽しみである。
アイシャは、俺の出したエナジーハンドを注意深く観察しながら、一人でブツブツ何か言っていた。
それを見ていたミーナは、また始まったよ~。とか言いながら苦笑いをしている。
その後ティータイムとなるが、アイシャは俺のエナジーハンドをまだ観察していた。
ミーナは体内魔力が尽きたようで、今日のエナジーハンド訓練は終了している。
6歳の二人は、アイシャの持ってきた分厚い魔法辞典を読んでいる。
この二人はこれで良いのだろうか? ちょっと不安である。
その後もアイシャは、毎週の休日にはやってくるようになり、ミーナも嬉しそうだった。
そして、アイシャが始めて我が家に来た日から、一ヶ月程経過した。
今日は学園である、俺は何時もの時間に家を出る。
すると、その日は玄関の前で、リディスが待っていた。
なんだか、彼女が家の前で待ってくれているようだったが、俺とリディスは付き合っている訳ではない。
将来的にはお付き合いしたいが、俺達はまだ10歳の少年少女だ、せめて成人する15歳からだろうと、俺は決めている。
そんなリディスに挨拶し、何時もの様に楽しくマラソンしながら雑談し、学園へと向かう。
良い忘れていたが、今日から野外演習である。
俺達は何時もの鞄では無く、少し大きめの鞄を持っている。
その鞄の中には、自分達の着替えが入っているのだ。
野外演習の事は、既に家族に伝えてある。
日程は今日から4日だ、食料は学園が準備してくれている。
一緒に同行する上級生は、中等部の2年生が5人 3年生が5人 4年生が10人、高等部は全クラスだそうだ。
なんでも、高等部はこの時期に野外演習を行い、将来の為の礎にするのが慣わしなのだと、ライアスが誇らしげに言っていた。
俺達中等部の1年生は、俺、リディス、マーク、シンシアの4名だ。
なんでも、今年は例年よりも多いらしいく、何時もなら1名出るか出ないからしいのだ。
だとするならば、今年は異例とも言えるだろう。
俺とリディスは、楽しく雑談しながら、何時もの登校コースをマラソンし、学園の巨大な正門前に到着する。
そこには、何時ものメンバーが待っていた。
俺達は挨拶もそこそこに、長い中央の道を歩き、校庭に向かう。
何時もなら、教室に向かう所だが、今日は校庭に集まる事になっている。
校庭には高等部の全クラスと、中等部の抜粋メンバーが既に待機していた。どうやら俺達で最後のようだった。
時間的にはまだ余裕が有るのだが、やる気満々の先輩方は、早くから集まっていたようだ。
良いね~! 青春って感じがする。
俺、リディス、マーク、シンシアは、ダストンに行ってきますの挨拶をする。
「じゃーな、ダストン。鍛冶の修行も頑張れよ」
俺はダストンの肩に両手を乗せて励ます。
ダストンは顔を上げ、俺を見つめている。
「うん! ダイン君達も頑張ってね!」
良い返事だ! 俺は勿論頑張るとも!
君も頑張るんだよ? 泣かないでね?
「なーに、何かあっても、ダインの変わりに俺がモンスター共を蹴散らしてやるぜ!」
おいおい、マークよ、確実に戦闘になるとは決ってないんだぞ? と思うが、彼は脳筋だ。何でも力で解決しようとするだろう。
「また来週だね、ダストン君」
「悲しくなって泣かないでよ~」
リディスとシンシアも、ダストンに声をかける。
その後、ダストンは何度も後ろを振り返りながら教室に行ってしまった。
少し名残惜しいが、これも青春の一ページである。この思い出を大切にしよう。
この後4人で、もしモンスターと戦闘になった時の陣形を確認したりしながら時間を潰す事しばし…。
学園の校舎の方から、引率の教師達が現れた。
その教師達の一人が、代表して壇上に上がり、口上を述べる。
「我輩が君達の旅を監督する戦技教官のシルフレッドである! 高等部の冒険者専攻科目と、王国軍専攻科目をとっている者と、2度目、3度目、4度目の抜粋を受けた中等部の者は、既に知っている顔だろうが、中等部の一年生の4名は初めてであると思う! よろしく頼む! 演習地は恒例のエピタルの森だ! 挨拶は以上だ! 総員直ちに正門前に移動!」
厳ついマルーノの、おっさんの口上が終わり、俺達野外演習受講者は、速やかに正門前に移動する。
俺達4人は、最後尾にて移動を開始する。
正門まで移動すると、そこには100台を超える馬車がずらりと並んでいた。実に壮観な光景である。
なんと! この馬車、良く見ると寝台付きだった。
しかも! 座席は屋根付きである。
なんだか、入学式を思い出すな。あの時も、こんな感じで馬車が沢山並んでいたな。寝台は無かったけど。
その馬車の列の中程には、俺が考案し、カディウスさんが改良した魔道具〔食料長期保存箱・横置き型〕を荷台に積んだ馬車も多く見られる。
更にその荷台には、大きな普通の木箱も乗せてある。あの木箱は一体何だろう? 道中か目的地に着けば詳細も解るだろうが…。気になってしまう。
そんな事を考えながら、俺達4人に割り当てられた馬車に乗り込む。
馬車に乗り込み、しばらく4人で雑談していると馬車が動き出した。
それにしてもワクワクする、なんと言っても始めての街の外だ。
この10年間、街の中だけしか知らなかったからな。
俺達4人のテンションは、異常なまでに盛り上がっていた。
そしてこの日、大勢の学院生を乗せた沢山の馬車が、ルキリスの街の南門から、エピタルの森を目指して出発した。
後半部分弄り回したので。
何時も以上に可笑しくなってるかもしれません。