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第二話 初等部のちょっとした思い出と、中等部での初日

 取り敢えず中等部スタートです。

 中等部はかなり長めになっています。

 申し訳ありませんが、初等部はダイジェストとさせていただきます。

 時間が取れた時に、閑話か番外編を入れたいと思います。

 俺は今年で10歳となり、ルキリア学術学園の中等部になった。

 先ずは、近況報告と初等部の思い出からだ。


 振り返るなら、初等部の学園生活は平和そのものだった。

 これといった事件も無く、何時もの日々が繰り返されるだけだった。

 何かあったか? と言えば二つある。

 一つは、我が自宅の中庭に、属性魔法の訓練施設が完成したことだろう。

 俺がまだ、初等部1年の中盤の頃だった。

 ある日突然、巨大なショベル状の道具と、巨大な階段状の石の何かを抱えた、大柄のドワーフが家の前に来ていたのだ。

 そう、カディウスさんが約束してくれた、例の穴掘り業者と、ドランク武具工房の店主でダストンの父、デクトルさんだ。

 メッチャ厳つい顔をしているが、悪い人ではない。

 喋りもがさつだが、見た目に合っているので違和感も無い。

 がしかし、なんでこの父親で、あの息子なのか? 非常に謎である。

 まぁ、とにかく我が家の中庭に地下の訓練施設が完成したわけだ。

 その日から、魔法の訓練と、勉強会は俺の家で行われる事になった。

 ミーナは最初、何事かと思ったのか、困惑の表情をしていた。

 だがしかし、5人が優しかったのもあるのだろう、直ぐに打ち解けてくれた。

 意外にもマークは面倒見が良く、ミーナも懐いている。

 ダストンはミーナが苦手のようだ、よく髪の毛を引っ張られて、その度にマークがミーナを優しく注意し、シンシアがダストンを慰めている。

 ミーナが4歳を迎えるまで、この光景は続いた。

 そうそう、最近の魔法の訓練だが、より一層激しさを増している。

 なんと言っても、元冒険者で俺の母であるマルナの指導の下、本格的な戦闘訓練を行っているのだ。

 マルナの指導は感覚的な部分はあるが、陣形や隊列、接近戦や遠距離戦等、総合的なものとなっている。

 元冒険者は伊達ではないのだ。

 しかし、地下の紋記号魔法空間は本当に優秀だ。

 今度時間を作って、カディウスさんに作り方を教えてもらおうと思う。

 俺ではまだ良く解らない記述や、接合方法を使っているからだ。

 何時になるかは解らないので、心のメモにそっと残しておくとしよう。

 魔法等の総合戦闘訓練に続いて、ライアスが武器術教えてくれている。

 俺達の為に、わざわざ週に1回休みを入れてくれているのだ。

 日給制では無く、月給制らしいので、俺の魔道具の稼ぎと合わせれば、一月にカルリア金貨50枚前後と、結構な金額となる。

 話が逸れたが、ライアスの戦闘訓練も紋記号魔法空間で行っている。

 日が照っておらず、一定の明るさを保持したこの空間は、時間が経つのを忘れてしまいがちだが、新開発の魔道具時計があるので、心配には及ばない。

 常時魔粒子を少量だけ収束し、正確に時間を刻むように紋記号円を製作している。

 ネジ巻き式ではないので、紋記号円の中央の起動紋記号さえ外れなければ、永遠と時間を刻むのだ。

 この発明は、この世界の時計事情を大きく変える事となるが、その話は別の機会にしよう。

 さて、戦闘訓練に関してだが。

 やはり、ダストンは戦闘向きではなかった。

 それでも、身体能力強化のお陰で、何とか付いてこれている。

 まぁ、友情の成せる業だろう、付き合わせてしまって済まないね~。

 マークはバリバリの戦闘系だった、もはや言うまでもないが、その戦闘能力は非常に高い。

 リディスは剣術に目覚めたようだ、補助魔法と剣術のコンボは、非常に守りが堅く崩しにくい。

 シンシアは遠距離の弓と、近距離の短剣術に目覚め、遠距離も近距離もこなす、ストライダー的な存在だ。

 最近、彼女が自力で習得した、自動回復魔法が非常に便利だとかで、戦いながら回復出来、怪我しても安心だという。

 しかし個人的には、その綺麗な肌を傷つけて欲しくは無いな。

 フィリップも一緒に訓練している、魔法戦は得意ではないようだが、剣術の腕前は、母が太鼓判を押す程に筋が良いらしい。

 そして俺だが、槍術をライアスから直々に習っている。

 ライアス本人は、様々な武器を使えるが、やはり槍が最も得意だと言う。

 ディクス爺ちゃんからも習っていたようだしな。

 俺も、槍という武器は個人的にも好きなので、頑張って練習している。

 俺もマーク程ではないが、それなりの足裁きを出来るようになって来た。

 だがそれでも、ライアスの領域にはまだまだ程遠いようだ。

 妹のミーナことミルフィーナは、今年で6歳となり、初等部の1年生となる。

 最近では言葉も上手くなり、とても6歳とは思えない言い回しを使ったりする、主な原因は俺だがな。

 ミーナの最近の流行は、俺のエナジーハンドで空を飛ぶ事になっている。

 流石に、広場でそれをやる訳にはいかなったので、我が家の中庭でやってあげている。

 本人的には、もっと高いところまで飛びたい! と言っている。

 俺の限界距離もあるから無理だと説明すると、渋々納得してくれた。

 まぁ、その内大衆の面前で、エナジーハンドを披露する機会も有るだろうから、外でエナジーハンドを行使するのは、その時からでも良いだろうと思っている。

 その前に、妹の流行がかわりそうだがね。

 それと、ミーナの体内魔力がここ最近、爆発的に上昇している。

 やはり、この夫婦の間に生まれた子供は、何処かしら異端のようだ。

 増えた! と言っても、今現在の俺には遠く及ばないだろう。

 だがそれでも、普通の6歳の少女とは思えない程の体内魔力量である。

 その証拠が、魔力球を半径10メートル圏内であれば、2時間以上は維持していられるらしい。

 試しに地下の訓練施設で、補助魔法の構築と解除をやってもらった事がある。

 なんと! どちらもすんなり出来た、しかも10回もその作業が出来たのだ、驚くべき体内魔力量である。

 因みに、俺の体内魔力量についてだが。

 試しに一度、地下の訓練施設で、最大威力の攻撃魔法を、持続的な指向性を持たせて発動してみたら、4時間も維持出来てしまった。

 発動中も、ゴリゴリ減っているのだろう体内魔力も、そこまで減っている感覚が無かったのだが…。

 流石に、4時間経つ頃にはヘトヘトになっていた。

 どうやら、かなりの量になっているようだった。

 18歳まで、体内魔力は鍛えれば増加していくので、体内魔力の鍛錬は今でも欠かさず続けている。

 非常に気になった事が一つあったので、それも試してみた。

 俺の体内魔力量は、異常な量になっている筈なのに、マジックセンサーで俺を感知できていないらしい。

 どういう事か? と言うと。

 俺がマジックセンサーを起動させると、ルキリスの街全体の、魔結晶及び体内魔力を知る事が出来る。

 魔結晶の色、体内魔力の大きさに至るまで、詳細に頭の中に表示される。

 数値化とかはされていない、魔結晶の色が丸く表示され、その丸が大きかったり、小さかったりしている。

 大きければ体内魔力が高く、小さければ体内魔力は低い。

 俺の体内魔力の大きさは、頭の中の表示区画を半分以上占めていた。

 そう、こんなに巨大な反応があるのに、誰一人として、俺を感知出来ない、その不思議を払拭しようと、ある実験を行った。

 何時もの友達メンバーに、マジックセンサーを起動してもらった、すると…。

 不思議な事に、皆の頭の中では、俺の魔結晶はそれ程大きく映っていなかったと言う。

 それでも気になったので、カディウスさん、マルナ、ライアス、ミーナの4人にもやってもらう事にした。

 すると、結果は友達メンバーと変わらなかった。

 この事から推測すると、黒の魔結晶は、様々な魔法関連の効果をブーストさせる特殊能力が有るのではないのか?

 と言う考えに行き着いた。

 こればっかりは、もっと研究しなければならないな~、と心に誓った。

 以上が近況報告と、初等部の思い出だ。

 平和過ぎて、あまり語る事もないが、俺の友達5名と、妹の成長が素晴らしい事以外は、平和そのものだった。


 時に、新共暦1213年 地の月1-1日目 午前6時 

 俺はここ1年、この時間に目を覚ますようにしている。

 理由としては、食事の準備だ。

 俺はエナジーハンドを4つ生成し、それらを巧に操作しながら、調味料やら食材、食器に至るまで、エナジーハンドと自分の両の手を使って運んだりしている。

 実は、今ではエナジーハンドに、視覚効果を持たせる事も出来るようになった。

 なので、エナジーハンドが今どこに浮いているのかは、全て俺の脳内に映し出される。

 これが出来るようになってから、俺のエナジーハンドは凄まじく便利なものとなった。

 自室で、勉強と称した紋記号魔法の研究や、学園の宿題などをやっている最中でも、様々な情報を一度に収集する事ができ、作業も出来る。

 エナジーハンドの複数生成には、やはり限界がある。

 視覚効果を付与しなければ8つ、付加すると4つだ。

 視覚効果付きのエナジーハンドを4つ以上生成すると、俺の脳の処理が追い付かず、気分が悪くなる。

 なので最大4つなのだ、最初の頃は4つでも厳しかったが、自宅に居る時は、常時4つの視覚効果付きのエナジーハンドを出し、訓練していたのだ。

 その甲斐もあって現在では、最大数の4つを出しても苦しくは無い、むしろ余裕である。

 ならばもう一つ出せって? 試したけどさ、吐き気がしたのだよ、もう4つ以上は出さないね。絶対に!

 おっと、スープが完成したようだな、それでは家族を起こして朝食としよう。

 俺は、家族全員を起こして回る。

 マルナとライアスの愛の巣に踏み入り、二人を揺する、すると二人は眠そうな目をこすりながら、ゆっくりと起き上がる。

 マルナのネグリジェが、年頃の体となった俺には非常に毒であるので、起きたのを確認すると、俺は足早にその部屋を去り、妹が眠る俺の部屋の隣の部屋へと向かう。

 ミーナは、幸せそうに枕に抱きつきながら眠っている。

 俺は、彼女の頬をツンツン突いて起こす

 ミーナもその感覚に、眠そうな目を擦りながら起き上がる。


「兄さん おはよ~ まだ眠いぃ」

「ほら、お前も今日から学園があるだろう? この位の時間に起きとかないと、馬車に乗り遅れるぞ?」

「はぁ~い」


 そう言って、まだ半開きの目のまま、ノソノソとベットから降り、妹の生着替えが始まった。

 俺はサっと回れ右して、キッチンに向かう。

 全員分の食器を、各人の指定席に配る。

 この作業もエナジーハンドで行う。

 俺の本物の手は、全員分のパンを切り分ける作業をしている。

 そうこうしていると、ライアスが自分の席に着く。


「ほぉ、今日は要塞猪の肉のスープか、上手そうだ」


 要塞猪とは、単体ランク2のモンスターだ。

 このモンスターを狩れるようになるのは、駆け出しを卒業した冒険者だ。

 冒険者ランク2が必要になる。

 しかし、この猪肉は非常にジューシーで美味い!

 個人的にステーキにして食いたいが、我が家ではスープの方が人気だ。


「ありがとね、父さん、仕事速いなら先に食べる?」

「いや、今日はゆっくりで大丈夫だ、皆と一緒に食べよう」

「あいよ~」


 そして、マルナとミーナが同時に食堂に入って来る。


「ダイン おはよう、今日も美味しそうね」

「兄さんの料理 わたし好きだよ」


 ありがとうよ、我が妹よ、兄妹として(ここ大事!)愛してるぞ。

 だがミーナよ、母の前でそれは言わない方が良い。


「あら、ミーナ、私の料理は好きじゃないの?」

「母さんが作った料理も好きだよ!」


 両手を胸の前で握り、だもん! のポーズ。非常に可愛い。イカン! イカン!


「まぁ~ とりあえず 食べようか」


 俺がそう言って、朝食が始まる。

 実はここ半年、俺とマルナが交代で朝食を作っている。

 俺が朝食を作るようになった経緯はこうだ。

 ある朝俺は、早朝から筋トレをしようと早く起きた、その時間は早朝の6時である。

 その時間にはマルナも起きて、何時もの様に朝食の準備を始める。

 俺は、この世界の料理に非常に興味があったので、物のついでに、料理を教えてもらおうと思い立ち、キッチンに向かい、マルナに料理を教えて欲しいと頼んだところ、すんなりと了承してくれたのである。

 とそんな経緯があり、その日から俺は料理を習い始めたのだ。

 前世でも、自宅で自炊していたので、手つき自体は慣れたものだが…。

 いかんせん、材料が謎の物だらけだ、それをマルナに教えてもらった訳である。

 そして現在、俺の料理のレパートリーは、前世以上の品となっている。

 そんな昔話を考えながら、朝食を家族と会話しながら済ませる。

 この後は、それぞれに出掛ける事になる。

 ライアスは隊に、俺は皆と待ち合わせて学園に、マルナはミーナの手を引いて、馬車の乗り合い所まで移動する。

 俺は小走りに学園に向かう、所謂マラソンだ。

 すると、俺の後ろからリディスがやってきて、俺の肩にタッチしてきた。

 俺の直ぐ右横に付き、同じ速度でマラソンする。


「おはよう! ダイン君! 今日から、あたし達中等部だね!」


 しっかし、この娘はマジで可愛くなったな! 

 薄い桃色の髪のロングストレートは、腰の辺りまで伸びている。

 目付きは昔と変わらず、クリっとしていて可愛らしい、天真爛漫な微笑を浮かべる彼女は、正に美少女アニメのヒロインさながらだ。

 しかも最近、出るところ出始めている、眼福眼福。


「おう、おはようリディス。そうだな~、なんかあっという間だったよな…」


 俺とリディスは、マラソンしながらそんな会話していた。

 後の3人は北側から回った方が、学園までは近いらしいので。

 彼らとは、学園の入り口近くで待ち合わせている。

 しばらく、俺とリディスは楽しく会話をしながら道を進んでいき、学園の入り口近くに到着する。

 すると、そこにはすっかり戦闘体型と言って良い程に、筋肉質になった体つきの厳ついデモニック、マークと。

 銀髪碧眼、ポニーテールのエルフの美少女シンシア、最近はリディス同様、出るところは出ている。

 胸はシンシアの方がデカイが、尻はリディスの方がデカイ。

 そして最後に、少し背が伸びて筋肉質になったダストンである。

 ダストンも、最近は少しハキハキできるようになってきた。多分この性格は一生直らないだろうな。

 そんな事を思っていると、到着そうそうマークが声をかけてきた。


「よぉ~、ダイン。遅かったな!」

「まぁな、朝飯作ってたしな」

「お前料理も出来るのか?」

「ああ、母さんに習ったからな」

「正直…。俺凹むぜぇ~」


 少し落胆した様子のマークだが、大丈夫! きっと後数分もすれば、別の話題となり元気も戻るだろう。

 そんな事を考えていると、シンシアとダストンが話しかけてくる。


「ほんとよね~、ダインってさ。な~んでもやっちゃうからね~」

「うん、ボクも見習いたいよ」


 二人の会話を聞いたリディスが口を開く。


「むぅ…。あたしも、ダイン君の料理食べたいなぁ…」


 上目遣いでチラチラ見てくる、可愛いよ! リディスさん!

 仕方がない、今度招待すると、この場で約束しておこう。


「解ったよ…。今週末に、俺の家でご馳走するよ」


 4人とも顔を笑顔にしながら、口々に嬉しさを表現する言葉を述べていた。

 その後は、皆の体内魔力の話や、初等部の新入生の話等で盛り上がりながら、自分達の教室を目指し、学園の巨大な門を抜け、長い長い舗装された中央の道を抜け、校舎へと入り、自分達の教室に移動する。

 見慣れた顔ぶれと、何時もの教室にホッとしながら、担任のトリスタン先生を待つ。

 今日から俺達は中等部である、本格的な魔法の訓練が始まるらしい。

 マークなんかは、何が来てもぶっ飛ばすぜ! 的な事をほざいていたが…。

 俺が思うに、基礎的な体内魔力トレーニングがメインではないか? と予想している。

 そうこうしていると、教室の戸が開き、トリスタン先生がやってくる。

 先生が入って来ると、教室の喧騒が一気に止むのは世界共通のようだ。

 そして開口一番、トリスタン先生。


「今日から君たちは中等部だ! そして、今日の最初の授業は、魔法の基礎訓練となる!」


 ふむ、推測通りだったな。

 しかし、マークは魂が抜けたように固まっている。

 放っておけば、自動的に復帰するだろうとマーク見ていたが。

 トリスタン先生は、そんなのお構いなしに説明を続ける。


「ではこれより、魔法の基礎訓練の為、グラウンドに出る!」


 そうそう、1年前位から、トリスタン先生も頼りになるようになってきた。

 最初は失敗もあったりしたが、最近ではめっきり自身を付けて、堂々としている。

 これ位の感じの方が、この世界の教師として、信頼が置けるというものだ。

 しかし、髪型と眼鏡の変化は無かったみたいだ。

 ま、とりあえずグラウンドに移動だな、先ずは固まったマークを起動させなければならない。

 俺はダストンに目で合図を送る、ダストンは頷き、ダストン自慢のデコピンを、マークの顎にお見舞いする。

 ベシ! と非常に痛そうな音がしたが…。 大丈夫か? マーク?


「ごめんね、マーク君 痛かった?」


 デコピンを顎に食らい、患部を押さえながら、非常に痛そうにしている。

 俺は絶対に食らいたくない!


「らいよーうたー!(大丈夫だ!)」


 平気そうだ、言葉が若干聞き取り辛いが、その内治るだろう。


「なら、移動だぞマーク。お前が固まっている間に、話が進んでいたんだ」


 マークはコクコク頷きなら、シンシアに説明を受け、いそいそとグラウンドに向かっている。

 俺達4人も、急ぎ足でグラウンドに向かう。


 グラウンドに着くと、そこには既に、3つのクラスがそれぞれに塊を作っている。

 そこに、俺達のクラスの塊を入れると、丁度四方に一塊ずつ出来ている形となる。

 そこで、トリスタン先生の話を立ったまま聞く事となる。


「よし! 先ずは魔力球を作ってもらう! 魔力球とはこう言うものだ…」


 トリスタン先生が突き出した右掌に、魔粒子が赤く染まりながら収束を始める。

 その色から、彼の魔結晶が赤である事が判明する。

 そして左手で格好良く、眼鏡をクイっと上げると、右掌に赤い魔力球が出来上がる。


「この魔力球は魔法の最も初歩である! やり方は先ずイメージだ! 次に、大気中の魔粒子を集めながら丸くするのだ! さぁ! やってみるんだ!」


 そう言われたのでやる事になったが、俺達5人以外の生徒達は、う~ん! う~ん! 唸りながら、何やら必死に頑張っている。

 説明自体は正しいのだが、俺達5人以外は成功者が現れない。

 他のクラスの生徒達も同様だった。

 すると、成功させている俺達5人に気が付いたのか、トリスタン先生が駆け寄って来た。


「君達! もう成功させたのか!?」


 マークが一歩ズイっと出て、俺は凄いんだぞ! のポーズ。

 腰に手を当て、胸を張り、これでもかと自慢げな表情をしている。


「そうだぜ先生! すげーだろ! しかも、こんな風にも動かせるぜ!」


 マークは自慢げにそう言って、マーク自慢の大き目の魔力球を、自らの周りをクルクルと何週もさせている。

 それを見たトリスタン先生は…。固まってしまった。

 まぁ、当然の反応ですよ。

 俺はダストンに、目で合図を送る。

 すると、ダストンはやれやれといった感じで、トリスタン先生のデコめがけて、デコピンをお見舞いする。

 先生だから手加減したのだろう、コツンと良い音を立てた直後、トリスタン先生が再起動を果たす。


「はっ!? いや、驚いたな…。君達5人は、皆これが出来るのか?」


 俺達は黙って頷く。

 若干一名、頼れる魔王のポーズで立っているが、気にしてはいけない。

 それは何時もの事なのだから。


「そうか、だったら…。まだ出来てない生徒に、コツを教えてやってくれないか?」

『はい!』


 俺達は元気に答え、まだ出来ていない生徒に、コツを教えて回ろうとした時、周りから声が上がる。

 誰が発したのかは解らないが、何人かの生徒が話しているのが聞こえる。


「あの黒い魔力球って、やっぱりそうだよな?」

「だな~、5年前にも、広場で見た気がするぞ?」


 やばい、何人かは勘付いているようだ。

 俺は知らん振りを決め込む、すると…。


「なぁ、気のせいじゃないか? あの広場に居るのは、9歳までの奴らだぜ?」

「そうよね~、きのせいよね~」


 ふぅ~、助かったぁ…。どうやら気のせいにしてくれたようだ。

 俺が誰かに教えに向かおうとすると、トリスタン先生が俺に問いかける。


「ダイン君。君の魔結晶は黒なのか?」


 俺は包み隠さず答える、隠したって、魔力球の色でばれるからな。


「はい、それが何か?」


 俺は白々しく聞き返す。

 すると、トリスタン先生は、顎に握った手を当てて、何やら思案している表情だ。


「いや、非常に珍しい色だからな、僕も初めて見たんだよ」


 なるほどな、それ程までに珍しいらしいと言う事か。


「そうですか、確かに珍しい色だとは良く言われますが…。それだけですよ?」

「そうか…」

「では、皆に教えて回るので、また後で」


 俺はお辞儀をして、皆にコツを教えて回る。

 その時に…。


「やっぱり、黒い魔力球って?」


 とか何とか言ってくる奴が居たが、俺は適当に誤魔化しながら、コツを教えるという名の作業に従事する。

 すると、数分後には、クラスの全員が魔力球生成を出来るようになっていた。

 やはり、体内魔力が自然に成長しているのだろう、作っただけでは誰も倒れなかったが…。

 調子に乗って、5分程維持させていた生徒がフラっとして、膝から崩れて前のめりに倒れていた。

 俺達が散々注意していたのに、調子に乗るからだ。

 取り敢えずトリスタン先生に、その倒れた生徒を預ける。

 俺達のクラスは、次々に成功者を出している。

 そのの様子を見ていた、他のクラスの先生達がやってきて。

 俺達に、他のクラスの面倒も見て欲しいと言ってきた。

 俺達5人は仕方なく、他のクラスの生徒にも、コツを教えて回り、少しでも辛くなったら、そこで魔力球の維持は止める様に厳命もしておく。

 体内魔力の枯渇で、死人が出でもしたら一大問題だからな。

 それから教えまわる事一時間程…。

 ここに居る全員が、魔力球を生成出来た。

 先生達が予定していたよりも、早く終わった為。

 空いた時間は自由時間となり、俺達はグラウンドを走り回ったりして時間を潰した。

 始めは、午前中の授業を全て使ってでも、全員を成功させる予定だったらい。

 それと、例の倒れた生徒は、今日はもうダメそうだったので、医務室で今日一日寝る事となったそうな。

 午後は座学で、魔法に関しての基礎的な内容だった。

 俺等が今までやってきた内容のおさらいだったので、俺達5人はその授業を一様につまらなそうに聞いていた。

 そして、授業も終わり、今日の学園は下校の時刻となったのだった。

 中等部偏だけで、第一章の話数を超えるかも知れません…。

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