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閑話 ある日のリヴォース家

 短いですけど閑話です。

 ディクス爺ちゃん初登場!

 ある日のリヴォース家の話をしよう。


 それは、俺が6歳になる三ヶ月程前の事だ。

 俺はこの日、朝の広場遊びを休む事にしていた。

 まぁ、午後からは皆と一緒に、訓練とか勉強会とかする予定なんだけどな。

 そんな日の朝の事だ、俺が自室で壮大な計画に向けて、カリカリと紋記号魔法の設計図を羊皮紙に書いていた時…。

 

「 儂じゃ! ディクスじゃ!」


 突然の、爺ちゃん来訪である。

 何時聞いても大きな声だ、俺の自室までハッキリ聞こえる。

 俺は羊皮紙を丸め、本棚に大事に置き、玄関に向かう。

 そこには既に、マルナとライアスが出迎えに出ていた。

 因みに、今日はライアスも休日である。

 ミーナはベビーベットでスヤスヤと眠っているが…。起きないだろうか? 不安である。

 それは良いとして、俺もじいちゃんを出迎える。

 白髪の短髪、切り揃えられた白髭、厳つい目付きで緑の瞳、頬に傷が有り、いかにも強そうなお爺さん。

 それがディクス・グルガンだ。


「じいちゃん久しぶり! ここ最近来なかったね?」


 ディクス爺ちゃんは、嬉しそうな顔で俺を見ている。

 ふと爺ちゃんの後ろを見ると、何時もの兵士さんが直立不動で立っている。

 何時見てもドデカイ荷馬車が兵士さんの後ろに在るが…。今日は一体何を持ってきたのか…?


「おぉ! ダインよ! 元気にしておるようじゃの。 その事は後で話そう」


 ん? やっぱり何か有ったようだな…。

 しかし、本当に久しぶりだ。

 俺は元気に挨拶する。


「うん! 元気だったよ! 妹にも会ってあげてよ」

「おぉ~、そうじゃったの。マルナの出産祝いも兼ねて、色々持ってきたぞ!」


 なるほどね、それでまた大量に何か持ってきたのか。

 しかし、髭を撫でながら言うその姿は、何か貫禄があるな。

 その後、俺達はディクス爺ちゃんを居間に案内する。

 兵士さんは、荷物を中庭に運び込んでいる。

 兵士さんに敬礼! 何時もご苦労様です。

 居間では、ミーナがベビーベットでスヤスヤと眠っている。

 爺ちゃんはミーナを見て、厳つい顔を笑顔にしている。

 その間に、マルナは紅茶をテーブルに運んでいた。


「ほほー、娘も可愛いのぉ~、抱いてやりたいが、眠りを妨げる訳にもいくまい。遅くなったが、先ずは出産おめでとう、マルナよ」


 マルナの肩に両手を掛け、祝いの言葉を言う爺ちゃん。

 それを聞いたマルナも嬉しそうである。


「はい、ありがとうございます、ディクスさん。今日は、その…。お仕事は良いのですか?」


 それを聞いた爺ちゃんは、真剣な顔に成り、ライアスを一目見る。

 ライアスは頷き、全員の視線が爺ちゃんに集まる。


「うむ、その事なんじゃがな…。インパスア共和国と、ダーメル王国との小競り合いが少し悪化しておっての…。儂も忙しくて、時間が取れなかったのじゃ。じゃが、今日は少し時間が取れたのでの、こうして参上したのじゃ」


 そうだったのか、それは知らなかったな。

 ライアスからも聞いてなかったが、口止めされていたのだろうか?

 因みに、インパスア共和国はルキリア王国と友好国だが、ダーメル王国とは中が悪く、長年小競り合いが絶えないらしい。

 それが最近悪化した、と言う事なのだろう。

 ルキリア王国としても、インパスア共和国を手助けしたいんだろうな。

 それにしても、戦争にならなければ良いが…。


「そうっだったんですか…。状況は如何なのでしょうか?」


 マルナが心配そうに尋ねている。

 俺も心配だ、戦争とかになったら、ライアスも出向く事になるだろうしな。


「そうじゃのぉ…。今はまだ小競り合い程度じゃが。これ以上酷くなると、我が国も主力を動かす必要が出てくるのぉ。じゃが、安心せいマルナよ。まだそれ程酷い状況では無い、儂が保障しよう」

「そうですか…。安心しました。ですけど、酷くなるとライアスも…」


 マルナがそこまで言うと、ライアスが待ったのポーズで言葉を止める。


「いや、俺は出向かなくても良いそうだ。総司令が直々に事を収めると、そう言われたからな」


 俺も安心したが、ライアスは主力じゃないのか?

 これも爺ちゃんの計らいなのだろうか?


「うむ! 儂が直々に、この混乱を鎮めて見せよう。インパスアの総司令とも、上手く連携しておる。事は直ぐに沈静化するじゃろう」


 それを聞いたマルナはホッとしているのだろう、胸を撫で下ろしている。

 俺も良かったと思う。

 ライアスが戦いに赴くのは、妻としても心配なんだろうな。


「ウアアアァーーーーーン!」


 と、ここでミーナの泣き声が聞こえた。

 ミーナが目を覚ましたみたいだ。

 マルナが急ぎ席を立ち、ミーナの元に向かう。


「あらあら、どうしたのかしら? お乳はさっきあげたし…。もしかして、ライアスの心配をしてるのかしら?」


 そう言ってマルナは、ミーナをあやしている。

 その姿を見た爺ちゃんとライアスも、ミーナの近くに移動する。


「おぉ! 元気な泣き声じゃな。ダインが泣いたのは聞いた事が無いが。この子は元気に泣くのぉ」


 それは済まんね~、転生者ですから。

 しかし、ミーナは本当に元気に泣くな。

 ま、これが有るべき赤ん坊の姿だろう。


「ディクスさんも抱いてみますか?」


 マルナは爺ちゃんにミーナを渡す。

 爺ちゃんはミーナを優しく抱き、その顔を笑顔で見つめる。

 孫娘みたいなもんだ、可愛くて仕方が無いのだろう。


「うむ! 丈夫そうな子じゃ、心なしかマルナに似ておるの。将来は美人になるじゃろうて」

「総司令もそう思われますか! 自分もそう思っております!」

「俺もそう思うよ、妹が可愛いのは自慢になるしね」


 この後も会話が続き、時間が昼頃となった頃、爺ちゃんは帰っていった。

 ライアスは見送りの時、隊で使う敬礼をしていたが、爺ちゃんに。


「これ! ライアスよ。ここは家族の場ぞ? 堅苦しいのは止めい」


 なんて言われていた。

 確かに家族の場だ、俺もそう思う。

 だけど、上官に向かって失礼は出来ないのだろう。

 俺もその気持ちは良く分かる。


 さて、見送りも終わり、時間は昼頃だ。

 マルナは昼食の準備をする為に台所に向かい、俺は自室で計画書の作成に取り掛かる。

 ライアスは、中庭で素振りを始めていた。

 そして、何時もの日常が始まる。

 俺は食事後、リディス宅へと向かって、皆と一緒に訓練と勉強会を始めたのだった。


 これは、ある日のリヴォース家のお話である。

 次話より第二章です。

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