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第十話 子供たちと遊ぼう

 複数キャラの会話って難しいですね…。

 さて、お互いに自己紹介も終わり。

 俺たち5人は、広場の西側の一角に集まっている。

 この場所に来る最中、俺達5人の先頭を歩いていたのは、デモニックの男の子、マークだった。

 彼はこの3人の中で、リーダー的な存在なのだろう、その出で立ちも堂々としている。

 余談ではあるが、今現在、季節的に春頃の為、皆長袖の布服と、薄でのベスト着ている。

 それと、俺とマークとダストンは、皮の半ズボンだ。

 何の皮かは今更気にしていないし、ゴムなんて便利なものはないので、ある程度の硬度を持った、しっかりとした皮のベルトで、腰の辺りで固定している。

 女の子は皆、布を2、3枚重ねた、しっかりとした作りの、長めのスカートを着用している。長さは脹脛の中ほどだ。

 話が逸れたが、到着と同時にマークが口を開く。


「よしお前ら! 今から〔鬼ごっこ〕を始めるぞ!」


 どこかで聞いたような、伝統的な遊びを思い出しが、彼の話を黙って聞く事とする。


「ダインとリディスだったな? お前たちは初めてだから、俺の言う事を良く聞くんだぞ!」


 随分と、先輩面をするヤツだと思ったが、そんな事はおくびにも出さずに黙って頷く。

 リディスも、もじもじしながら、俺に釣られて同じく頷く。一々可愛いな…。

 そんな事を思っていると、マークが説明を始めた。

 その概要は、この辺り一帯で、鬼役の人物が、逃げ惑う他の4人の誰かにタッチすると、タッチされた人が次の鬼となる。

 そして、鬼となった後は、先ほど鬼だった人物とは他の人物にタッチして、鬼を交代、その繰り返しである。

 日本にも、こういった遊びが在るので、俺は懐かしく思いながら聞いていた。


 先ずマークが鬼の役になる事を宣言したので、俺、リディス、シンシア、ダストンの四名が逃げる役となる。

 ぱっと見だが、ドワーフのダストンと、おとなしそうなリディスは、もっとも狙われやすいのではないだろうか?

 そんな事を考えていると、マークから始めの合図の声が掛かる。


 俺は一目散に距離を取り、マークから大きく離れる。

 俺と同じく、シンシアも大きく離れていたが…。

 やはり、リディスとダストンが出遅れているようだ。

 その様子を遠巻きに見ていたら、マークがリディスにタッチしていた。

 なにやら話しているようだったが、他の子供達の遊び声で聞き取れなかったので、リディスを注意深く見る。

 すると、なにやらオドオドし始めたので、俺は近くに寄って行く。

 そして、最接近した瞬間、リディスは申し訳なさそうに俺にタッチしてきた。

 ちょっと? リディスさん? 狙ってやってませんか?


「ご、ごめんねダイン君。あ、あたし、怖くって…」


 おいおい…。そんな事言って、堂々と俺にタッチするなよ…。

 と思ったが、やさしく声を掛ける。


「リディス、次はちゃんと走って、誰かを追いかけような?」


 少しシュンとなるリディス。

 あれ? 良い過ぎたかな?


「う、うん…」


 あぁ~、良かった…。一瞬泣くかと思ったじゃないか?!

 まぁ良い、続きを行わなければ。


「じゃ、次の鬼は俺だから、君にはタッチ出来ない。でも、次のヤツが君にタッチするかも知れないから、その時は走って、誰かを追いかけるんだぞ?」


 リディスの顔がパァっと明るくなった。

 全く…。俺は保育園の先生ではありません!


「うん、解った!」


 本当に解ったのか心配だったが、まぁ良いか。

 俺は鬼役になったので、誰に狙いをつけようかと辺りを見渡す。

 ここでダストンにタッチするのが、一番労働力が軽いのは解るが…。

 ここはあえて、素早そうなシンシアに狙いを定める。

 俺は一気に駆け抜け、シンシアの背後を取る。

 しかし、シンシアもこの遊びに慣れているのだろう、器用にフェイントを使い、俺のタッチを逃れようとする。

 すばしっこく、ヒラヒラと俺のタッチを回避する。

 一瞬、エナジーハンドを使おうかと思ったが、使えば負けた気がするし、おいそれと公共の場で披露して良いモノでもない。

 若干ずるいかも知れないが、俺は部分的に身体強化を行い、一気にシンシアとの距離を詰め、その背中にタッチした。


「はぁ…。はぁ…。まったく…。あなた、やたらと足が速いわね」


 済まないね~、ちょっとズルしちゃいました。テヘペロ。

 しかし、ここで真実を言う訳にもいかないので、誤魔化すしかない。


「まーな! これでも鍛えているからな!」


 決して嘘は言ってはいない! 鍛えてるのは真実だからな!

 まぁしかし、身体強化を使った事が、ばれなかっただけ良しとしよう。

 だが、身体能力的に、女の子に負けたのが非常に悔しい。

 男女差別する訳ではないが、この気持ちを共有できる人物は居ないものだろうか? と思いつつも、俺はシンシアから距離を取る。

 シンシアは、一番楽そうな獲物である、ダストンに狙いを定めているようだ。

 当のダストンはと思い、よ~く見てみると、早くも涙目になっているのが良く解る程、顔をクシャクシャにしている。

 あ~あ、可愛そうに、よりにもよって、一番素早そうなシンシアに狙いを定められるとは…。

 そして数秒後、あっけなくタッチされたダストンは、泣きながら我武者羅に走っている。

 頑張れダストン! 君にエールを贈りたい!

 まぁしかし、当然と言えば当然だが…。

 その短い足では、大した速度を出すことも出来ずにいる。

 ましてや、この年齢の、普通の子供達が、身体強化の魔法を学んでいる筈も無い。

 ダストンは、今にも泣き出しそうな顔で、大人しそうなリディスに狙いを定め、必死に走っているが…。

 リディスも不器用ながらも、そのタッチを巧みに避けている。

 それに見かねたのか、マークがダストンの前に行き、語りかけている。

 俺も距離が近かったので、その会話を聞く事が出来た。


「まったく、しょうが無いな~、ダストン。ほら、俺に代われよ」


 プイっと顔を背けながら、そんな事を言っている。

 俺はこの時、マークの優しさを感じた。

 伊達に、元3人のリーダーではないようだ。今は5人だが。


「何時もありがとう…」

「礼なんていらねーからさ、さっさと俺に代われよ、ほれ…」


 そう言って、マークは右手を突き出す。

 その右手に、申し訳なくタッチするダストン。

 なんだか、友情の一幕を見た気がした。

 その後マークは、ダストンが十分な距離を取るのを見計らって、今度は俺に狙いを定め、一気に駆け寄って来た。

 俺は、何やら対抗意識のようなものが芽生え、絶対にタッチされまいと、マークのタッチ攻撃を巧み避ける。

 マークも、リーダー的存在の意地があるのか、表情を真剣なものに変え、更に速度を上げて行く。

 段々とタッチする手の動きが素早くなり、俺を追いかける速度も上昇する。

 3分程の戦いの末、俺が足を踏み外した隙に、マークのタッチ攻撃が俺を捕らえる。


「はぁ…。はぁ…。お前、早すぎるだろう…!」


 ごめんね、チョットだけズルしてたんだ。

 だがしかし、チョットだけとは言え、殆どは俺の身体能力だけで頑張ったんだ。

 この勝負に文句は無い筈!

 でも、マジで疲れる…。


「はぁ…。はぁ…。お前も、いきなり速度を上げるなよ! 危なく転ぶ所だったじゃないか!」


 こう言ったあと俺は顔を上げる、するとマークは、ニっとした顔をしている。


「お前、なかなか良いセンスしてるな! 明日も来れるのか?」


 お? 認めてくれたのかな? お誘いが掛かったぞ?

 明日はまだ週の3日目か…。カディウスさんの家での訓練は週末だ。

 暇も作れそうだから、了承する事にした。


「良いよ、明日も来れたら来るよ」


 マークはニっと笑いながら答えてくれた、口から端の、尖った犬歯が少し威圧感を放っている。

 チョット怖いが、俺も笑顔を作る。


「そうか! よし! それじゃ、次はお前だ、皆が同じくらい、鬼になれるようにしてくれよ?」

「お、応…」


 しかし、仲間思いなヤツだ、俺の中で、マークの評価がグーンと上がった。


 その後俺達は、夕時前まで全力で走り回りながら遊んだ。

 中でも意外だったのが、リディスの変化だった。

 最初は、オドオドモジモジしていたのだが。

 段々と、皆と打ち解けていく内に、その本性を顕わにする。

 実は、途轍もなく運動能力が高かったのだ。

 足の速さで言えば、シンシア以上だった。

 しかし、その口調は、あまり変化しなかったのが謎だったが、そういう性格なのだろうと、自分を納得させる。

 ダストンが鬼になった場合は、皆で優しさをプレゼントしたりしながら遊んだ。

 俺も久々に、精神的に童心に返る事が出来たので、懐かしさと楽しさの中、皆に今日のサヨナラを言う。


「ふ~、今日はやたらと走った気がする」

「ダイン君も、あんなに足が速いなんて思わなかった」


 おいおいリディス、君がそれを言うのかね?


「ホントよね~、でもさ、リディスも足が速くてわたしビックリしちゃったよ~、最初は動きもしなかったのにね?」


 シンシアさん良い突っ込みです!


「まったくだぜ! 俺もリディスからは逃げ切れなかったからな…」


 マークも認めているようだ。


「ボ、ボクもたくさん走ったよ」

 

 そうだねダストン君、恐らく君が一番運動しているだろうね。


 そんな会話をし、俺達はこの広場を後にした。

 よく見ると、マーク、シンシア、ダストンは、同じ方角に帰って行った。

 リディスは? と見ると、俺と同じ方角だった。

 俺は3人に、手をブンブンと振る、それを見ていたリディスも、同じく手を振っているが、こちらは小さくである。

 その後お互いに「またな~」等と言いながら、今日の別れを惜しんだ。


 俺は、自分の家に向かって歩き始める。

 その直ぐ後ろを、リディスが付いてくる。

 黙って付いてくるものだから、俺は見かねて隣を歩き、話しかける事にした。


「なぁリディス、君もこっちの方角なのか?」

「うん、あたしのお家はここの近くなの」


 ほぉ、そんなに近いのか?

 だとすると、俺の家からも近いって事になるな。

 まぁでも、家が近いなら安心だな、色々な意味で。


「そうか、なら安心だな」

「そうなの?」


 良く解らない顔をし、首を傾げている。

 5歳だし、無理も無いのか?


「ああ、家が近ければ、迷う事もないだろう?」

「うん! そうだね! ダイン君て優しいね!」


 美少女アニメの、ヒロイン級の笑顔である、俺はなんだか恥ずかしくなり、顔を明後日の方に向ける。


「うふふ ダイン君 顔真っ赤だよ?」


 そう言う所は良く見てらっしゃる。

 なんだか非常に照れくさい。


「う、うるさいな~ ほっておいてくれ」


 クスっと笑うリディスも可愛いな~。

 イカン! イカン! この子はまだ5歳なのだ!


「あ、そうだ。ダイン君、聞いて良いかな?」

「ん? なんだ?」


 急に歩みを止めるリディス、一体何が聞きたいのか?


「ダイン君も、今日の広場の空に。黒い丸いのが浮いてるの、見たの?」


 げ!? いきなりその質問かよ…。

 う~む、なんて答えようか…。

 適当に誤魔化そうと思っていると、リディスから、とんでもない言葉を聴く事となる。


「あの黒くて丸いのね、もしかして、ダイン君がやったんじゃないの?」


 ちょっと勘が鋭すぎじゃないですかね?

 オジサン、ドキッとしたよ?


「え!? なんで そう思うんだ?」

「だって ダイン君のお腹のキラキラが、黒だったから…」


 なんですと!? 何時の間にか見られていたみたいだ。

 何かと鋭いな、この子…。

 俺は、徐に彼女の手を引っ張り、路地の影に連れ込んだ。

 怪しい事はしませんよ? ホントだよ?

 誤魔化そうと思ったが、俺は意を決して、魔粒子を指の先に収束させ、少し小さめの魔力球を生成した。

 指は使わなくても良いのだが、子供でも、視覚的に解り易くする為だ。

 リディスは、興味深そうに、俺の黒い魔力球を見つめている。

 そして、俺に振り返る。


「やっぱり、ダイン君だったんだね。お父さんとお母さんが、お家のお庭で、同じような事をやってるのを良く見るの。もしかしたら、その丸いのは、お腹のキラキラと、同じ色なんじゃないかと思って、聞いてみたんだけど…」


 ほぉ~ そうだったのか。

 それなら納得だな、リディスの両親は、何か戦闘系の仕事をしているんだろうか?

 そんな訓練をするのは、俺だけだと思っていたが…。

 取り敢えず、リディスの問いに答えよう。


「そうだよ、俺が空に上げていたんだ、こんな風に」


 俺は魔力球を操作し、10メートル程上空に、魔力球を移動させ、そのまま魔粒子に還元した。

 リディスはその様子をジッと見ていたが、魔力球を魔粒子に還元させた少し後に、俺を見つめてきた。


「ねぇ、ダイン君…」


 突然モジモジし始めるリディス。

 おいおい、一々俺の保護欲を刺激するのはやめてくれないか?

 そんな事より…。

 俺は、リディスの言葉を待つ。


「あのね…。あたしに、その丸いのの出し方教えて?」


 顔を真っ赤にしながら聞いてくるリディス、俺は取り敢えず了承する事とした。

 ただし、他の3人も一緒にだがな。


「いいよ、教えてあげる。その代わり、今日遊んだ3人も一緒だ。良いね?」


 そう言うと、リディスの顔がパァッと笑顔になって行く。


「うん! 皆でやろう!」


 ふぅ~、解ってくれたか。

 俺も気合を入れなければ!


「ああ! 皆でやろう!」


 何故俺が3人と言ったかのか? それは、マークの仲間への、篤い友情を見たからだ。

 幸い、俺が今日出会った4人は、皆同い年で、根性もありそうだったので、そう言ったのだ。

 この事を特に、マーク辺りに秘密にすると「お前達は仲間じゃない!」とか言いそうな予感がしたのだ。間違ってはいないだろう。

 約束を交し合った後、俺とリディスは路地の影から出てきた。

 彼女の家は、本当に近かったみたいで、それから20メートル程歩いた距離に在った。

 俺は、彼女が家に入るまで見送った後、明日の事考えながら、我が家に向かう。

 今現在、俺は一人で、舗装された綺麗な路地を歩いている。

 思えば、今まで必ず大人と一緒に居た気がするな。

 そう考えると、なんだか感慨深いものを感じる。


 さて、先ずは練習場所の確保が必要なのだが…。

 初めて魔力球を生成するとなると、倒れる者も出るかも知れない。

 あの広場で倒れられても、大人の手が近くに無い状態では危険すぎる。

 広場の入り口の近くに、見張り小屋のような建物があったが、中の兵士は眠っていたので、期待は出来ないだろう。

 あの兵士さんなんで寝てるんだろ? チラッとしか見てないがね。

 そうなると、少し早めに遊びを切り上げ、俺の家かリディスの家、もしくは、あの3人の家のどこかで、行うのが最も安全であろう。

 少なくとも、リディスの家には、何やら訓練している夫婦も居るようだし。

 リディスの家にするか? と考えた所で、我が家の前に到着した。

 俺は思考を続けながら、玄関の戸をエナジーハンドで開け、中に入り、帰宅の言葉をマルナに告げる。


「母さん、ただいま~」


 マルナは、ミーナに母乳あげている最中だった。

 しかし、相変わらずの豊満な胸である、眼福眼福。


「お帰り、ダイン。友達はできた?」


 その問いに、俺は誇らしげに答えた。

 手を腰に当て、威張る人のポーズ!


「うん! 今日4人の友達が出来たよ!」


 その言葉を聴いた途端、マルナは満面の笑みになる。


「そう! 4人も出来たの!」

「うん、一人は帰り道が同じだったから途中まで一緒に帰って来たんだ」


 するとマルナは、すこし悪そうな顔になり。


「その子って 女の子?」


 え!? ちょ!? 勘が良いにも程があるだろう…。

 ここは包み隠さず答えるとしよう。

 俺は、少し引きつった笑顔で答える。


「う、うん。良く解ったね」

「ふっふ~ん! 帰り道にね、桃色の髪をした、丁度ダインと同い年位の女の子を見たのよ。それで、もしかしたら! って思ってね。やっぱりそうだったか~、運命を感じるわね~」


 メッチャ嬉しそうにそんな事を言っている、しかし運命っすか? 将来どうなるか解らんよ?

 だがしかし、惚れそうになったのは事実である、そこは認めなければなるまい。

 何度も言うが、俺はロリコンではない。

 きちんと成長してから、お付き合いしたいのだ、女性とはな!

 あぁ~、そうだ、魔力球の生成方法を教える約束をしたんだったな、その事を話そう。


「母さん」


 マルナは服を正し、ミーナを抱き直している最中だった。


「ん? どうしたの?」


 ミーナの顔を見ながら、何やらニヤニヤしている。

 俺も子供が出来たら、きっとこうなるんだろうな。


「俺、その女の子に魔粒子を使って魔力球を作るのを教えるって約束したんだ」

「あら、外で魔法使っちゃったの?」


 ごめんなさい、使いました。

 でもね? ばれてないよ? ホントだよ?


「うん、ばれないように、かなり上空で魔力球を作ってたんだけど。その子…。何だかやたら勘が良くて、俺の魔結晶も、俺が少し足を踏み外した瞬間に、服の間から見たみたいなんだ。それで、上空にあった魔力球を、その子がたまたま見たみたいでさ。俺の魔結晶と、魔力球の色が同じだって事も看破されたんだ。それに、その子の両親は、何やら俺と同じような訓練を、その子の家の庭でやってるらしいんだけど…。そんな人に心当たりは無い?」


 あれ? 何だかマルナが悪い笑顔になってませんか?


「そっか~、その子。あなたに惚れたんじゃないかしらね?」


 ちょっと! 俺達まだ5歳ですよ!? 幾等なんでも早すぎるって!


「母さん!」

「冗談よ、でも…。あの近くに住んでいる人で、私の知り合いは居ないわね。もしかしたら、私が覚えていないだけかも知れないけど」


 ちょっと申し訳なさそうな笑顔だった。

 でも知らないなら仕方が無い、明日まで待つしかないだろう。


「そうなんだ…」


 マルナは一度、俺の頭に優しく左手を乗せてくれた。

 何だかマルナの優しさを感じた。


「さて! 夕食の支度をするから、エナジーハンド出してくれる?」


 俺はエナジーハンドを出す。

 すると、マルナが抱き抱えたミーナを、俺に差し出そうとするので、俺はミーナをエナジーハンドで受け取る。

 手の形は水を掬う形だ、そして、俺の本物の手も添える。

 ミーナはお腹も一杯なのか、今はすやすやと、静かに寝息を立てながら眠っている。

 俺は小さめの腰掛に座りながら、ミーナの寝顔を覗き込む。

 良い寝顔だ、幸せそうに眠っている。

 この妹が、どんな風に成長するのか楽しみでならない。

 そこうしていると、ライアスが帰宅した。

 俺は、エナジーハンドと、両手を添えて抱きかかえているミーナと一緒に、ライアスを出迎える。

 マルナは今現在、夕食の調理中なので手が離せない。

 出迎えるのは、俺とミーナの二人だけだ。


「お帰りなさい 父さん」

「ああ、今日は広場に行ってみたか?」

「うん、4人の友達が出来たよ」

「そうか、それは良かったな、その4人は種族はどうあれ、大切にするんだぞ」


 言われるまでも無い、生涯大切にしますとも!


「うん 解ってるよ」

「ミーナは眠っているのか」


 そう言ってライアスはミーナに視線を向ける。

 幸せそうに眠るミーナを見て、ライアスもニマニマした顔になる。

 解るぜ! その気持ち!


「うん、撫でててあげてよ」


 俺がそう言うと、ライアスはミーナの頭を優しく撫でた。

 しかし、ライアスの手は少々厳つい、武器を持って毎日訓練しているのだ、タコや傷跡なんかが無数にある。

 そう言えば、ディクスじいちゃんはどうしてるんだろうか?

 ここ最近、来なくなったけど…。

 まぁ、その内来るんだろうなぁ~、ドデカイプレゼンを台車に乗せて。


 その後、夕食が出来上がり、俺とライアスとマルナは食事をする。

 その間ミーナは、俺のお下がりのベビーベットで、すやすやと眠っていたが、突然の大泣き。

 俺達は食事を中断し、ミーナをあやす事に、専念せざるを得ない状況になってしまう。

 これも、ミーナが家族の一員になってからの日常である。

 俺はミーナをあやしながら、明日の魔力球の件について考えていたが…。なんだか忙しい毎日になりそうだ…。

 しばらくすると、ミーナも落ち着き、ただ泣いただけだと解り、俺達は胸を撫で下ろす。

 その後、食事を済まし、俺はライアスに、リディスの両親の事を聞いてみた。

 すると…。


「あぁ~! その夫婦なら良く知っている。俺の隊に居る、ジョージ・グルーノというヤツが、良く娘と息子の自慢話をしているからな。俺もつい熱くなって、お前の自慢話をしたんだ。お前の体内魔力の訓練とかな。そしたらアイツ、急に凹んでな、あの時は笑い出しそうだったよ。ま、子供には無理させるな! と厳命したから、自分達で頑張っているんだろうな」


 それはそうだろう、ただでさえ珍しい黒の魔結晶を持つ上に、すでに体内魔力の訓練もしているんだ。

 そりゃ、普通の子供を持つ人物が聞いたら凹むだろう。

 しかしそうだったのか、だからリディスが、庭で訓練とか何とか言ってたんだな。

 きっと努力家なんだろうな、そのジョージって人は。

 しかし、ここでリディスのファミリーネームが解ったな。


「そのリディスちゃんに、魔力球の作り方を教えるんだろ?」

「うん、そう約束したからね」

「だったら、彼女の弟にも教えてやってくれないか? かなりの負けず嫌いなんだそうだ」


 うお~い! 一人増えてしまったではないか! だいたいその弟君は何歳だよ? それが重要だ。

 俺の説明を、理解できる位の年齢じゃないと難しいぞ? 取り敢えず聞くか…。


「父さん、その弟君は何歳?」

「ん? 確か最近4歳を迎えたらしいぞ、どうしたんだ?」


 4歳かぁ…。ギリギリセーフと思いたいが…。

 実際会わないと分からないな、取合えず明日だ。


「いや、気になって聞いてみただけだよ」

「そうか…。さて、もう遅いからお前も寝なさい」

「は~い、父さんおやすみ」

「ああ、おやすみダイン」


 そのやり取りの後、俺はウネウネ体をくねらせ、頭を抱えながら自室に戻り、ベットに横たわって思考の海に沈む。

 よりによって、4歳が一人追加されてしまうとは、どうした事か…。

 取り敢えず、明日は魔法教本の、基本の書を持っていかなければなるまい。

 あぁ~、明日からの俺の予定はびっしりになっていくのだろう。

 そう考えながら、俺は眠りに付いたのだった。


 次回更新は明日です

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