神格開放
どうも、どこぞの委員長です!
1か月程空いた事にお詫びを・・・すみませんでした・・・
前回は次は戦闘とかいうところまででした。
では、どうぞ!
俺たちが参加している部隊は、さっきの戦場を制圧してから数時間歩いたところで夜を迎えた。そのため進行は一時停止され、野営をすることになる。おそらくこの夜が円卓の騎士を討つ最後の機会になるだろう。つまり、あの必中の弓を持つ騎士を今夜中に倒さなければならないわけだ。さらに、兵士の誰かに気付かれるわけにもいかないというおまけも付いている。厳しい戦いになりそうだな。ふとそんな事を考えるが、これまでの戦いで厳しくなかった戦いなんて無かったという事を思い出す。いつもながらよく生きてるなと自分の生命力に少し苦笑いが浮かぶが、今は感傷に浸っている暇は無い。どうやってあの弓をかいくぐりつつ、あの騎士に攻撃を喰らわせるか。それが目下の課題だ。一人で考えるのも何なので、ひとまず作戦会議を開くことにする。誰にも聞かれないようにする必要があるため、俺たちは兵士たちが野営の準備をしている森の入り口付近からこっそりと抜け出し、奥の方へと入って行った。適度な深さまで来たところで歩みを止めた俺たちは、しゃがみこんで円陣を組む。
「さあ、あいつをどうやって倒すかだが、何かいい方法はあるか?」
「そうだね・・・あいつの持ってる弓、必中の弓でしょ?あんなものどうやって避けるの?」
「それは円卓の騎士トリスタンが持っていたという、無駄無しの弓のことか?」
サンダルフォンの言う無駄無しの弓というものがどんなものかを聞いてみると、大体俺の知っている必中の弓の特徴と遜色なかった。両方に共通したその特性、それは狙った物の狙った場所に必ず当たるというものだ。どうやらあの弓の名称は複数あるらしい。そう、狙った物の狙った場所に確実に当たる。それは、絶対に避けることが出来ないという事だ。そんな武器相手に短期決戦で決着をつけるなど夢のような話だが、俺はそれをやらなければいけないのだ。この星のためにも、そしてジャンヌダルクのためにも。
「絶対に当たる、それは確実の避ける事のできないもの、貴殿たちはそう思うか?」
「絶対に当たるなら、それは避けられないという事じゃないのか?」
俺の返答にサンダルフォンはニヤリと薄笑いを浮かべる。どうやら何か策があるようだ。視線で続きを話してくれるように促すと、サンダルフォンは一度頷いた後、自らの編み出した策を話し始めた。
「絶対に狙った位置に当たる、それは、狙った位置以外には当たらないという事と同義だ。ならば、相手に自分の位置を間違えて認識させればいい」
「それが出来れば苦労しないんじゃ・・・もしかして出来るの?」
「ああ、ちょっとした小細工だが、暗い森の中でなら成功する可能性はある」
「よし、それじゃあサンダルフォン、俺と雪穂の偽造工作を頼む。俺たちは全力であいつ、トリスタンを叩き潰す!」
作戦会議を終えた俺たちは作戦実行のため、この森のあらかたの地形を見て回る。数十分でそれを済ませると、トリスタンを誘い出すため、俺がジャンヌダルクが野営しているところへ行くことになった。一番の鬼門は、トリスタンを戦闘に引き込んでから森へ誘い込むまでだ。そこで失敗すると、確実に俺は死ぬだろう。それでもやらなければ前に進まない。俺は深呼吸をして意を決すると、ジャンヌダルクのところへ向かった。
ジャンヌダルクのいる天幕の近くまで来ると、予想以上に多くの兵士が見張りについていた。おそらく、先の戦いで軍神のような存在になってしまったため、警護が硬くなっているのだろう。そんなことは気にせず、俺はそのまま天幕の方へ歩いていこうと歩みを進めた。しかし、そう簡単に入れるわけも無く、天幕の前で三人の兵士に囲まれてしまう。
「おい、てめえ何をしに来やがったんだ!」
「ここはジャンヌダルク様の天幕だ。お前のような雑兵が来れるようなところではない!」
「早く立ち去るがよい!」
こいつら息を合わせてるのか、というほどそろった動作で俺を天幕から遠ざけようとしてくる。だが、そんなんで止まっていたらこの人たちの命も危ない。俺は、少々強引だが強行突破することにした。黄昏の聖十字を一本だけ右手に召喚し、彼らの鎧の留め具をたたき切る。瞬間、数キロはあろうという鎧が彼らの足の上に落ちた。鉄の装備をしているとはいえ、鉄の塊が降ってくるとやはり痛かったようで、三人並んで地面に倒れてしまう。その隙をついた俺は、サッとジャンヌダルクのいる天幕へと歩みる。中に声をかけると、ジャンヌダルクの声が返ってきた。少し待ってくれと言われたので待っていると、間もなくジャンヌダルクが天幕から出てきた。その近くにはちゃんとトリスタンがついてきている。さて、この状態からどうやって二人を分けようか。
「先ほどはどうも、おかげで助かりました」
「いえいえ、私も何故だか知らないうちに周囲の人々が死んでいったのですから・・・」
ジャンヌダルクのその言葉にピクリと少し反応したトリスタンの姿を俺は見逃さなかった。おそらくトリスタンは、ジャンヌダルクへ対して偽の神託、つまりトリスタンが自らを神と偽って行った偽神託を聞かせたのだろう。ジャンヌダルクはここらに広まっている宗教を信仰していたのだろうから、信託は守るべきものだと思っているに違いない。実際トリスタンの姿は武器召喚士にしか見えないので、ジャンヌダルクは少し違和感はあっても神からのものだと信じたのだろう。ならばここで、俺がトリスタンのことをジャンヌダルクに話そうものならどうなるか。それは火を見るよりも明らかだ。これで行くのが一番手っ取り早いと判断した俺は、さりげに話題を広げていく。
「勝手に死んでいくですか、それは神様か何かの恩恵なのですか?」
「分かりません。ですが敵が死ぬ時、ほんの一部の者だけですが、私の隣の何もない空間を見て恐怖の顔を浮かべるんです」
「そうですか。もしかしたらそれは、あなたに誰かが手を・・・」
俺はとっさに黄昏の聖十字を取り出すとジャンヌダルクの隣にある何もない空間へと放り投げた。そう、トリスタンが弓を構えたのだ。もし打たれたら最後、何があろうと当たるまで追尾してくるだろう。俺は何が起こったか分かっていないジャンヌダルクを横目に、黄昏の聖十字の投擲で一瞬ひるんだトリスタンから全力で逃げ出した。目視されると弓を射られてすぐにやられてしまうため、出来る限り物陰に隠れながら移動する。そのまま走ること数十秒、俺は森の中へ逃げ込むことに成功した。指定のポイントまで行って雪穂と落ち合うと、木々の隙間から慎重に様子をうかがう。しかして、トリスタンは俺の後をつけてきていた。しかし居場所の特定はできなかったようで、あたりをきょろきょろと見回している。ここからが勝負どころだ。何をするのかははっきりと分かっていないが、まずはサンダルフォンの策が展開されるのを待つ。展開が完了したときの合図は、数節にわたる歌だと言われている。待つこと数分、かすかな歌が風に乗って聞こえた。その瞬間、大量の人型の生物が現れる。なるほど、サンダルフォンの考えがやっとわかった。これらの生物、もとい天使たちは、サンダルフォンの管理する天界の幽閉所に閉じ込められていた堕天使なのだろう。収容されている堕天使の数はかなりに上るはずなのですべて出したわけではないはずだ。それでも堕天使が天界に再度叛逆を行う可能性があるかなり危険な賭けには間違いない。しかしこれで堕天使たちに紛れてトリスタンに見つからないように近づくことが容易になった。俺は雪穂に見えるように指を三本立てる。三秒後に隠密突撃開始の合図だ。雪穂もすぐに理解し、静かに頷きを返してきた。立てていた俺の指の最後の一本が折られた瞬間、俺と雪穂は行動を開始する。左右から挟み込むように攻撃するため、雪穂とは途中で別れる。ぐんぐん迫って来るトリスタンの影は俺たちを見つけている素振りは見えない。そのまま数m進むと、トリスタンを挟んで向こう側に雪穂の姿が見えた。俺たちは最後のアイコンタクトを交わし、俺はスライディング、雪穂は前方宙返りでトリスタンへと迫る。
「----ッ!どこから!」
「残念だったな!」
「これで終わり!」
俺たちの狙いすました一閃は、その軌道上にトリスタンの体を正確にとらえていた。しかし、さすがは円卓の騎士というべきなのだろうか、トリスタンはぎりぎりで俺たちの攻撃を避ける。だが、その攻撃は俺たちにとって全くの無益というわけでもなかった。トリスタンの体を切り裂くはずだった二つの刃は、彼女が持つ必中の弓を三つに分離させたのだ。三つに分離した必中の弓を見たトリスタンは、先ほどの瞬発力で俺たちから数m距離を取る。俺たちも相手が何を隠し持っているか分からない今、むやみに動くことも出来ず、トリスタンの出方を窺う。そこで俺は一つの違和感に気付いた。さっきまでいた堕天使が消えている。サンダルフォンが収容しなおしたのか?もしかすると、長時間展開することは出来ないのかもしれない。それなら、止めは刺せなかったにしても、さっきの一撃で必中の弓を破壊できたのは大きな成果だった。
「あなた方は一体何者ですの?私の無駄無しの弓を破壊するだなんて、人間ではないわね」
「やっと喋ったか、トリスタン。ここで死ぬお前に教えてやる道理は無えが教えてやるよ」
「私たちは人間だよ。おにいちゃんも私もね。ちょっと特殊なだけ」
ちょっと特殊ね。雪穂、ちょっとじゃないと思うぞ?特殊も特殊だろう、これから1万年ほど寿命はあるし、武器召喚できるし・・・でもまあ、俺たちの中では、これくらいの事はちょっと特殊ぐらいにしかならないか。
「へぇ、でも、ここで死ぬのはあなた達よ!」
「-----ッ!それは!」
トリスタンが懐から取り出した物、それは小さな球体状の物だった。そう、4色に輝く球体、マルクトだ。やはりこいつが持っていやがったか。だがどうして俺たちの前にわざわざ出したりなんか・・・待てよ、セフィロトの樹、そこにある10のセフィラ、それはそれぞれ神格を持つんじゃなかったっけ。それなら・・・
「雪穂、下がれ!」
俺は言うと同時に、雪穂の手を引いて後ろへ跳躍する。そして俺たちが地面に着地した瞬間、トリスタンがマルクトを天に掲げ、叫んだ。
「神格開放、第十神装!」
直後、一瞬で目の前が真っ白になる。次に目を開けた時、目の前の森林はトリスタンを中心に半径5mほど消滅しており、その中心には4色に輝く防具をつけて一本の剣を携えたトリスタンが立っていた。
はい、今回も読んでいただきありがとうございます。
戦闘ほとんどしてないじゃんって?
ちょっとはしてるんです、ちょっとは・・・なんて言い訳を・・・
次回はもっとしっかりした戦闘になる予定です。
次回もよろしくお願いします!