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武器召喚士  作者: どこぞの委員長
第二章~生命の樹~
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悠樹の決意

どうも、どこぞの委員長です!


一週間空いてしまってすいません・・・(実際は一週間と一日ですが・・・)


ところで、前回は第二の円卓の騎士が出て来たところまででした。


では、続きをどうぞ!



 俺たちは馬に乗った一人の女性の前に立っていた。この女性こそ、かの有名な聖女、ジャンヌダルク本人だ。とりあえず、ジャンヌダルクの隣にいる円卓の騎士には気づかないふりをしておくことする。近づいて来る俺たちに気付いたのか、ジャンヌダルクは馬の上から俺たちを見てきた。

「あなた方は、この戦場で戦っていた兵士ですか?それにしてはずいぶん軽装に見えますが・・・」

「その認識で間違ってないぜ。俺は神永悠樹、こっちが妹の雪穂だ」

「私はジャンヌダルク、フランスに勝利をもたらせという神託により馳せ参じた者です。名に神を持つ者・・・それは神へ対する愚弄、それともそれ相応の実力者なのでしょうか・・・」

 こちらへ訝しげな視線を送ってきたジャンヌダルクだったが、何か思うところがあったのだろう、一応は戦場の兵士という認識を持ってくれたようだった。それにしても、名前のことで何か言われるとは思わなかったぜ。確かにこっちの方で神と言えば全能的な存在になるから、それを名に持つというのは何か思うところがあるのかもしれない。それに、近くまで来て分かったのだが、ジャンヌダルクは円卓の騎士に気付いていないんじゃないか?人間というものは近くに人がいると、何となくそちらを気にしたりする素振りを見せるものだ。たとえ互いに気付いていないふりをする作戦であったとしても、それはかなりの確率で起こる。だが、ジャンヌダルクにはそれが無い。仕方ない、円卓の騎士はどうせ戦うべき相手になるのだから、少し探りを入れてみるか。

「神託といったな、どんな感じの声だったんだ?」

「あなた、ここがどこだか分かっているのですか?今は戦闘中、今はそのような話をしている暇は無いはずです!兵士ならば早く戦闘を始めて下さい!まあ、武器も持っていないようなあなた方に、大した戦果は期待できませんが・・・」

 やれやれというように頭を振ったジャンヌダルクを見た俺は、今の発言と行動の訂正をするように言おうとしたが、一足遅かった。俺たちの間を冷たい風が通り過ぎたような感覚が走る。俺は何とか雪穂への愚弄に対しての怒りを抑え込んだが、雪穂の方はそうもいかなかったようだ。恐る恐る雪穂の方を振り返ると、雪穂の持つ村雨からは滝のように水が流れ落ちていた。マズい、雪穂が怒りモードに突入している!

「あなた、私のおにいちゃんをバカにしたね?おにいちゃんをバカにするやつは許さない・・・」

 うわぁ、完全に目が据わってるよ。どうしようか、ここでジャンヌダルクに攻撃を仕掛けると確実に過去改変が起きてしまう。かといって俺が雪穂の相手をするわけにもいかない。仕方ない、言葉で何とかするしかないな。

「雪穂、正直こいつの発言にはイラっと来たぜ。でもな、俺がこいつの言うような奴じゃないって一番知ってるのは雪穂だろう?たとえ戦っても確実に負けることは無い。だから落ち着け」

「おにいちゃんがそう言うなら、今はやめとく。でもあなた、絶対許さないからね?」

 そのまま少し体を引き寄せて頭を撫でてやると、完全に据わっていた目は元に戻っていった。サンダルフォンを含め、若干周りが引いていたが、そんなことは些細な問題だ。しかし困ったな、この戦場を抜けない限りジャンヌダルクと話をするのは難しそうだ。殺さないように戦闘するの結構大変なんだよな。でも仕方ない、話しかけたのはこっちの方だし、戦闘中に自己紹介以外の何かを話す時間が無いのも確かだしな。ここは無難に戦った方がよさそうだ。雪穂とサンダルフォンに戦闘に参加するように伝え、俺はジャンヌダルクの下を離れようと彼女に背を向けた。

「あなた、見えているのでしょう。私には声しか聞こえない、その者の姿が・・・」

 ジャンヌダルクがさりげなく呟いたその言葉に、俺は後ろを振り返る。するとジャンヌダルクは軽く首を横に振って、声を出さず唇だけを動かした。あいつに見つかる前に逃げて、そう言っているようだ。その顔には悲痛そうな表情を浮かんでいる・・・そう、あいつを見た者がどうなったのかを知っているような、そんな表情を。どうやら彼女は、得体のしれない何かから俺たちを遠ざけるために、あそこまでやったみたいだった。なるほど、兵士たちが付いていったわけだ。味方を自分のせいで殺させたりはしないと、そういう彼女の想いが皆を勇気づけたんだ。だが、最後にはそれを逆手に取られて処刑されてしまうのか・・・何とかして救ってやりたいが、どうこうできるものでは無いだろう。この戦闘が終わるまでに、何か見つかればいいんだけどな。俺はその後振り返ること無く、戦場へ駆けて行った。

 雪穂たちに追いつくと、既に戦闘は始まっていた。だが、敵の武器は所詮この時代で一般に流通している物、俺たち武器召喚士の武器に比べれば紙も同然だ。それゆえ殺さずに倒すのが難しいのだが、殺しはやらないのが俺の信念だ。雪穂に何かあった場合はその限りではないが、そんなことはそうそう起きない。それじゃ、こいつらにも死なない程度で戦線離脱してもらおうか。俺は雪穂の隣に立つとアイコンタクトを取り、隊列を組む部隊へと攻撃を開始する。自分で言うのもなんだが、俺と雪穂のコンビは最強だ。その俺たちに攻撃を受けたその部隊は、1分足らずで無力化される。その後も幾度か戦闘を繰り返したが、雑兵ばかりなので一瞬でケリがつく。そんなこんなしているうちに敵部隊はあらかた片付いたようだ。あたりには雄たけびを上げるフランス軍と撤退を始めるイギリス軍が見て取れる。どうやら円卓の騎士も戦闘を行っていたようで、ジャンヌダルクの通った後には無数のイギリス軍人の骸があった。兵士たちはそんな救世主を称賛しているようだが、ジャンヌダルク本人は苦笑いを浮かべるだけだ。まあ、それもそうだろう。自分の通るところにいた敵兵を、自分の近くにいる得体のしれない何かが殺していくのだから。

「お前は誰なんだ!その弓は何だ・・・救世主とか言って本当は・・・本当は魔・・・うっ・・・」

 金切り声を上げ始めた一人の兵士が、その言葉を最後までいうことは無かった。突然どこからか矢が飛翔し、その兵士の心臓部を的確に射抜いたのだ。兵士たちは何が起こったのか分からずにざわめきだす。何が起こったか分かっているのは俺たちとジャンヌダルクだけだった。いや、正確に分かるのは俺たちだけか。円卓の騎士が弓を射かけたのだ、仲間であるはずのフランス兵に向けて。原因は彼の言葉だろう。彼は武器召喚士となる資格を持つ者だった。つまり、ジャンヌダルクの隣にいる円卓の騎士が見えてしまったのだ。黙っていれば命は助かったかもしれないが、彼は言ってしまったのだ。弓を持たないジャンヌダルクに、弓を持った奴は誰だという事を。

「このお方には神が付いておられる!その者を魔女などと呼ぶ輩には神罰が下って当然だ!」

 ざわめく兵士の中から、はっきりとした響きを持つ男の声が放たれる。その言葉に呼応し、そうだそうだ、と兵士たちの声が大きくなっていく。どうやらジャンヌダルクは、軍神のような扱いになってしまったようだ。さっきの一連の出来事は神罰の所為という事になってしまっている。やれやれ、この先に合流していくであろう兵士たちに、円卓の騎士に気付く奴がいないことを願うしかねえな。その時、ジャンヌダルクがこちらの姿を見つけてギョッとしたような顔を浮かべ、続いて怒りと絶望を混ぜたような顔になった。それもそうだろう、俺は忠告を聞かずに戦場に残ったのだから。しかし、こちらに近づいてくるような素振りは見せない。今こっちに来ると、俺達が得体のしれない者の見える人間だと、そいつにばれてしまうと思っているのだろう。ばれたところで、そいつを倒せばいいだけなので問題はないのだが、必中の弓の効果範囲が気になるところだ。もう少しだけ様子を見てみるか。

「あの女、こっち見てるね。おにいちゃんに近づいたらただじゃおかないんだから」

「雪穂、あいつは俺たちを助けようと悪役を買って出たみたいだ。怒りは抑えてくれ、な?」

 今だにジャンヌダルクを恨み続けている雪穂に先ほどの顛末を話すと、少し驚いたような表情を見せた。その後もジャンヌダルクを睨み続けることを止めてはいなかったが、心なしか少し表情が変わっているような気がする。俺を侮辱されたからではなく、何故自分たちに相談を持ち掛けなかったのかといったような方向のものへと。雪穂はいい奴だからな、兄が言うのもなんだけど・・・

「それで神永悠樹殿、貴殿はこれからどうする予定なのだ?すぐにでも打って出るのか?」

「いや、もう少し様子を見ようと思う。あの弓がどれほどのものなのか気になるんだ」

「でもおにいちゃん、それだと無関係の人たちがたくさんあの弓で殺されちゃうよ?」

「----ッ!」

 そうか、どうしてこんな簡単なことに気付かなかったんだ。俺が様子を見ると、それだけあの弓で殺される人物が増えるという事に。それは、間接的に俺がその人を殺しているようなものじゃないか。それがたとえ定められた運命だったとしても。それはダメだ。俺は自分のせいで人が死んでいくのを見たくない。こうなれば、あの弓の効果がどの程度のものかなんて考えている時間はない。この部隊が次の戦場へ着く前にあいつを倒さなくてはならない。でも、そうしたらジャンヌダルク、彼女はどうなる。今は円卓の騎士が付いているからあんなことが出来るだけで、元々は農家の娘なんだぞ。

「おにいちゃん、どうするの?早くしないと、いつ次の戦場に着くか分からない!」

「俺は・・・俺は、あいつを倒すよ。次の戦場に着くまでに、必ず殺す」

「神永悠樹殿、それではジャンヌダルクは今後どうするのだ?私としてもマルクトを回収して欲しいのは山々だが、天使として、彼女の今後も見捨てるわけにはいかない!」

 俺と同じ考えに至っていたサンダルフォンが、一番痛いところをついてくる。そうなんだ、彼女の死の運命は火刑に処される時だから、その時まで死ぬことは無いだろう。だが、敵に全く勝てなくなった救世主を誰が好き好んで部隊に置いておくというのだろう。仮に置いておかれたとしても、(ろく)でもない扱いをされるようになるのは目に見えている。じゃあどうすればいいんだ。多くの人間のために一人を犠牲にする、そんな功利主義的な考え方は絶対にしたくない。一人の人間も多くの人間も、両方救う道を見つけ出さなくてはならない。考えろ神永悠樹、お前に何ができるかを!

「サンダルフォン、俺たちの寿命が5千年ほど伸びたってのは本当なんだな?」

「ああ、間違いない」

「まさかおにいちゃん・・・」

「ああ、その通りだ。付き合ってくれるな、雪穂」

「おにいちゃんが決めたなら、私はついていくだけだよ。あいつは気に食わないけどね・・・」

「ありがとう雪穂。やっぱり俺の最高の妹だ」

 俺は雪穂とアイコンタクトで意思を確認し合うと、ジャンヌダルクの方を見据えた。そう、ジャンヌダルクの近くに控えている二人目の円卓の騎士の方向を。その後ろから、話がどうまとまったのか分かっていないサンダルフォンが事の展開を聞いてくる。俺は薄く笑いを浮かべ、円卓の騎士を見据えたまま、サンダルフォンに聞こえるよう答えを返した。



「彼女は最後まで俺が守る(・・・・・・・・)!」



はい、今回も読んでいただきありがとうございます!


次回は円卓の騎士との戦闘になるはずです。(多分・・・)


という事で、次回もよろしくお願いします!


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