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武器召喚士  作者: どこぞの委員長
第二章~生命の樹~
35/56

百年戦争の地にて

どうも、どこぞの委員長です!


前回はクロノスゲートの先へ進むところまででした。


続きをどうぞ!


 俺たちが時空転移門(クロノスゲート)を抜けた先にあったのは、広大な田園地帯。だが、その田園地帯はひどく荒廃したものだった。おそらく、サンダルフォンが言っていた百年戦争のためだろう。百年戦争、それはフランスとイングランドの大規模な戦いだ。かの有名な聖女、ジャンヌダルクがフランスを大逆転勝利に導いたのも、この戦争の一部の出来事だったな。そんな歴史を思い返しながらあたりを見回していると、遠くから鉄のぶつかり合う音が風に乗って聞こえてきた。

「サンダルフォン、どこかで戦闘が行われているのか?」

「そのようだな」

「場所は・・・あの林の向こう側だと思うよ」

 雪穂が場所を特定すると同時にそこへ駆けだそうとする俺を、サンダルフォンが制止する。何故止められたのか分からずサンダルフォンの方を振り返ると、サンダルフォンは静かに首を横に振り、俺に過去世界へ飛んだ時の注意事項を説明し始めた。

「過去世界には出来るだけ干渉しないでくれ。過去改変は人類史を大きく損なう恐れがあるんだ」

「あそこで死んでいく人を見殺しにしろっていうのか!」

「見殺しではない。死ぬ時は定まっているのだから、助けることはどうやっても出来ないのだ」

 そう言ってサンダルフォンは、天界における人の生死に関わることを話し始める。人の生死の時期は基本的に定まっていて、変えることは出来ない。それは天界の天使達にも触れることのできない領域で、それを操れるのは自分たちより上位の存在である神だけなのだそうだ。つまり、どれほど人を救おうと努力したとしても、死に方が変わるだけでその人の死の運命は変わらない、そういう事らしい。だが、俺はここで一つ疑問を覚えた。そう、神にさえ交渉することが出来れば人の生死は変えることが出来るのではないか、という疑問だ。しかし、その論は一瞬でサンダルフォンによって否定されてしまう。神の存在する場所は絶対不可侵らしく、下級の天使は姿を見ることはおろか、声を聞くことすらできないらしいのだ。それに加え、声を聞けるのも一部の天使だけで、その天使すらお告げに近い形で声を聞くことが出来るだけで、自分の意見などを言うことは出来ないそうだ。

「それなら仕方ない・・・いや待て、それならどうして神様とやらは《《ファイントの寿命を即時に切らない》》んだ?」

 俺の発言に、雪穂とサンダルフォンがそろって驚いた表情を取る。もっとも、驚きの意味は違ったようだが・・・

「おにいちゃん、出来るならとっくにやってると思うよ・・・」

「ああ、雪穂殿の言うとおりだ。どうやら神様の操れる寿命時間は、最長でも千年前後のようらしい。あの化物どもは《《既に千年の寿命を減らされている》》のだ」

「---ッ!」

 千年もの寿命を削られてもファイントは動き続けた、そういう事なのか?確かに半分ファイントである俺たちも、既に数百年の時を生きているみたいなことを言われたことがあった。だが、まさか千年もの時を超えて動き続けるとは、オブサーバーも大変なものを作り出したものだ。一体どんな改造を加えたらそうなるのか、想像するだけでも恐ろしい。

「そうだ、すっかり言うのを忘れていた」

「なんだ?」

 何かを思い出したらしいサンダルフォンは、わざとらしく咳ばらいをすると、俺たちに衝撃の事実を突きつけてきた。

「神からの報告があったそうだ。貴殿らの寿命だが・・・」

 そこでサンダルフォンは突然言いよどんでしまった。俺と雪穂は顔を見合わせると、おそらく次に続くであろう言葉を確認し合う。ほぼ確実に良い知らせではないだろう、そういう事を。俺たちは覚悟を決めると、言い始めたわりには言うかどうかを悩んでいるサンダルフォンへ続きを促した。するとサンダルフォンは観念したようで、恨むなら神様を恨め、と天使にあるまじき発言をした後に続きを話し始めた。

「貴殿らの寿命が大幅に増やされたそうだ」

「それは、どのくらいなの?」

「化物どもから削った寿命をちょうど半分ずつ、つまり一人当たり5千年だ」

「・・・」

 話の内容が寿命のことで、延びた系のことだという事は大体予想で来ていた。だが、あまりの長さに俺も雪穂も開いた口が塞がらない。5千年、その年月は人間では到底到達することのできない領域だ。それに、俺たちが半人半ファイントという事を考えると、寿命はさらに延びるだろう。だって、ファイントは千年程度寿命を削られても生きているというのだから。確かにアレを倒せるのは、俺たちだけなのかもしれない。しかし、ファイントを全滅させるのに5千年は必要ないだろう。神は他に何かさせるつもりなんじゃないか、そんな疑問が一瞬浮かんだが、そんなことは後で考えればいいと気持ちを切り替えることにする。

「寿命は気にしなくてもよくなった。じゃあ、とりあえず始めようか、ファイント狩りを!」

「うん!」

「そうだな」

 まずは作戦会議という事で、俺たちは近くにあった廃墟の一角に仮の拠点を作ると今後の方針について話を始める。年代は1429年4月28日、場所はオルレアン、補足事項は戦争中と言った所か。戦争中という事は、市民に話を聞いて回るのは難しいだろう。それに、ファイントがいるであろう範囲は、大体この辺といった感じでしか分からないそうだ。ならばこの辺を歩いて探索するかといえば、範囲が広すぎてどうにもならない。ならどうするか、簡単な話だ。こちらは未来から来たというメリットがある。ファイントが行動を起こせば、かなりの規模にわたる何かが起きるのは確実だ。ならば、大規模で起こった何かを探し当てればいい。今回は百年戦争の最中、この近辺で大きな出来事と言えば・・・

「ジャンヌダルクだな」

「え?」

「よく考えてみろ、ジャンヌダルクは農民の娘だ。どうやったらそんな人間が、洗練されたイングランドの兵士たちから、奪われたほぼ全領土を取り返せる?それだけじゃない。ジャンヌはフランスを救ったはずなのに、魔女とまで言われて火刑に処されてしまうだろ。もし武器召喚士がいたら、ジャンヌの隣で戦うファイントが見えたはずだ。悪魔を従えていると思われてもおかしくない」

 俺の解説に納得がいったのか、雪穂もサンダルフォンも頷いていた。満場一致で最初の作戦はジャンヌダルクを探すことに決定した。やることが決まれば行動は早い。ちょうどいい具合に、ここはオルレアンだ。ジャンヌのオルレアン包囲網突破が何時かは覚えていないが、とりあえず戦線の第一線に出てみることにした俺たちは、先ほどの音が聞こえていた方へと歩みを進めていった。

 いくつかの戦場を抜け、第一線に着くころには日は暮れかけていた。大変だったのは、俺たちがただの市民と勘違いされてすぐに家へ戻るように言われたり、敵兵と間違われて襲われたりしたことだ。その後、俺たちはここの指揮官へ面会する許可を何とかもらい、指揮官本人と話をさせてもらった。言語の違いはサンダルフォンのおかげで何とかなり、現在の状況を把握出来た。どうやらジャンヌはまだ現れていないようだ。俺の記憶が確かなら、今年中にジャンヌは現れるはず。根気よく待つしかないが、俺たちも最前線で戦えとの指令ももらったので、時間を潰すのは意外と簡単そうだ。その夜、テントなんてものは貰えなかったので、近くの林で野宿することになった俺たちは、ジャンヌが現れた時の作戦を立てることにした。

「もしかしたら、ファイントは人型で出てくるかもしれない。その場合、おそらく円卓の誰かになると思う。それなら俺と雪穂で見分けられる」

「そうでなかった場合はどうするのだ?」

「兵士たちの様子で判断しよう。見えていなさそうだったら十中八九ファイントだと思ってくれ」

「OKだよ、おにいちゃん」

 その後、そのままナメクジ型で出てきた場合、はたまたジャンヌがファイントを連れていなかった場合など、あらゆる事態を想定して作戦を練っていると、夜も更けてきた。別に数か月ぐらいなら眠らなくても平気だというサンダルフォンに見張りを頼み、俺と雪穂は眠ることにする。作戦がうまくいくことを願いながら、俺は眠りに落ちていった。

 次の日、朝早くにサンダルフォンに起こされると、準備を整えて戦場へと赴く。たとえ死期が決まっていようと人を殺したくはないため、俺は出来る限り殺さないように気を付けながら戦闘を行った。過去改変が少し心配だったが、この程度なら大丈夫らしい。そうこうしているうちに昼頃になり、今日ではなかったのかと諦めかけたその時だった。《《二人》》の女性の声が戦場に響き渡ったのだ。


「我が名はジャンヌダルク!加勢に馳せ参じた!我らには神が付いていて下さる!諦めるな、進め!」

「中々楽しめそうですわね。さあ、行きますわよ!」


 一人目はジャンヌダルク本人に間違いはない。だが二人目、あいつには見覚えがある。俺が一度殺した円卓の騎士団の一人だ。持っている武器は弓、史実通りならアレは必中の弓だ。ここで倒してしまいたいが、人の目があるのでどうにも出来ない。まあ作戦通りに行こうか!まずはジャンヌに近づき、人気の少ないところに行ったときに討伐する。そんなプランAを実行に移すため、俺たちはジャンヌの下へと駆け出した。


はい、今回も読んでいただきありがとうございました。


意外と進まなかったことに驚きを・・・いえ、何でもないです。


次回もよろしくお願いします!


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