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武器召喚士  作者: どこぞの委員長
第二章~生命の樹~
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Sandalphon


どうも、どこぞの委員長です!


今回から第二章という事で、色々加えてやっていきたいと思います!


では、第二章一話をどうぞ!


 パーシヴァルを倒した俺たちは両親と別れ、残る12体のファイントを探す旅へと出発した。しかし、奴らの居場所は簡単には見つからず、ただ時間だけが過ぎて行った。そして1週間が過ぎた今日、俺たちは幸野(こうの)から南へ30kmほど進んだ所にある町の旅館で朝を迎える。

「おにいちゃん、朝だよー!」

 遠くで俺を呼ぶ声が聞こえた。お兄ちゃんという呼び方から、雪穂だという事はすぐに分かる。だが、俺は雪穂にあと5分だけ寝かせてくれるように頼むと、もう一度布団をかぶりなおした。布団の魔力もあるとは思うが、そこそこ朝には強い方の俺が起きられないのにはわけがある。これまでずっと歩き回って調査をし、夜は野宿してきたのだ。久しぶりに布団で寝たら、起きたくなくなるのは当然のことといってもいいだろう。同じ道をたどってきたはずの雪穂はちゃんと起きている、というツッコミはなしでお願いしたい。進展があったら俺だって一刻も早く、それこそ寝る間を惜しんでまで駆け付けるだろう。そう、この一週間、俺たちは情報を皆無といっていいほど集められていなかった。それも当然で、ファイントを見る能力を持つ武器召喚士というのは、そうそういるものでは無いのだ。セントラルバージスに大勢の武器召喚士が集まっていたのは、対ファイント基地が全世界でセントラルバージス一か所しかないため、世界中から武器召喚士が集められた結果なのだ。

「はい、5分経ったよ。早く起きて!時間以内にチェックアウトしなかったら、今日の分までお金が取られちゃうよ!」

「ーーーッ!」

 雪穂の一言が届いた瞬間、俺は一瞬で目が覚めた。そして次の瞬間、脳内に現時点での旅館利用料金がフラッシュする。部屋は一つしか取っておらず、食事も付けていない。それでも両親が生活費として渡してくれたお金を無駄にするわけにはいかないのだ。それを使い切ってしまったが最後、俺たちは一文無しへ逆戻りなのだから。

「雪穂、今は何時だ!」

「えーと、朝の4時45分だね」

 壁の時計を確認した雪穂が告げた時刻、それはあと15分以上ここにいた場合、料金が倍になるという宣告だった。慌てて部屋を見渡すと、綺麗に整頓された雪穂の持ち物が目に入る。その隣にある俺の荷物はというと・・・綺麗に整頓されていた。衣類しかないとはいえ、かなり色々な場所に散乱していたような記憶があるのだが・・・。数秒後、何があったのか大体想像がつき、隣にいる雪穂に目を移すと、我が賢い妹はニコニコしながら頭を突き出してくる。俺は雪穂の頭に手を乗せると、優しく何度も撫でてやった。嬉しそうにしている雪穂を見ていると、時間を忘れてずっと撫でていてあげたい衝動に駆られる。そのまま数分雪穂の頭を撫でていたのだが、4時53分になった時計が目に入った瞬間、俺の意識は現実へ引き戻された。手を止めた俺に名残惜しそうな目を向けた雪穂も、時間に気が付いたようだ。俺たちは荷物を持つと、急いでフロントへと向かった。

 何とか4時59分にチェックアウトした俺たちは、今日分の料金を払う事にならなくて良かったとひとまず安堵する。だが、本当の戦いはここからだ。今日は成果があることを期待して、俺たちは調査を再開した。武器召喚士でなければファイントは見えず、武器召喚士の見た目は人間のそれと変わらないので、聞き込み調査することは難しい。そのため、判断基準は自分の勘のような確実性に欠けるものや、視力や聴力のように自分たちの分かる間合いまで入らないといけないものなど、微妙なものになってしまう。それでもどうにかしてファイントを探し出し、倒しつくさなくてはいけない。自分の蒔いた種は自分で摘み取らなくてはいけない。そんな感情が、俺たちに諦めを抱かせなかった。

 調査を始めてから数時間たったが、やはり何も見るからない。ニュースなどもチェックしてみるが、大きな自然災害や不可思議な事件があったという情報もなかった。一度昼飯休憩でも取ろうという事になり、俺たちは近くにあったコンビニへと足を運ぶ。そこで数個のパンやおにぎりを購入し、近くの公園へと移動した。

「おにいちゃん、昼からどうする?」

 公園のベンチに二人で腰掛け、昼飯を食べ始めると共に雪穂がそんなことを聞いてくる。

「午前中は何も見つからなかったしな。もっと南へ下ってみようかと思ってるけど、いいか?」

「おにいちゃんがそう思うなら、私はついていくだけだよ!」

「そうか、ありがとう雪穂」

「えへへ」

 もう少し南か・・・そういえば、俺たちがいた未来ではこんな南に来たことは無かったな。過去に来てからは初めての体験ばかりだ。しばらくお互いに無言で昼飯を食べる時間が続き、雪穂より先に食べ終わった俺は空を見上げた。目の前に広がる青い空、これは世界のどこまでも続いているのだ。どこかにいるであろうファイントの居場所とも繋がっているのだろうか。そんなことを考えていると、視界に人影が写った。雪穂が食べ終わったのかと思って隣を見ると、雪穂はまだ昼ご飯を食べているところだ。公園に人が来た気配は全く無かった。敵襲かと思い、慌てて視線を戻すと、そこには一人の女性が立っていた。その女性は、何とは分からないが何かがおかしいような気がする。俺は瞬時に黄昏の聖十字(トワイライトロザリオ)を召喚すると、目の前の女性に突き付けた。

「貴様、何者だ!」

 俺の行動に気付いた雪穂も、食べかけのおにぎりを上空に放り上げると、村雨を召喚する。落ちてきたおにぎりは、見事に雪穂の口にキャッチされた。おにぎりを咥えたままこっちを向いた雪穂は、女性の方へ視線を移す。どうやら雪穂にも見えているようだ。二人の人間に刃物を突き付けられたその女性は、それらに臆することなく口を開いた。



「私はサンダルフォン、第十のセフィラ・マルクトを守護する者だ」



 サンダルフォンといえば大天使の一人で、罪を犯した天使を永久に閉じ込めておく幽閉所の支配者だ。最近は円卓の騎士と出会ったり、過去に跳ばされたりして感覚がマヒしてきているのか、天使が出てきてもそこまで驚かない。そんな自分に少し自己嫌悪に陥りそうになるが、今はそんなことを考えている場合ではないと考えを振り払う。

「それで、何の用だ?」

「神永悠樹、そして神永雪穂、あなた達は天使が名乗っても武装を解かないのか?それは無礼千万な行為だぞ」

「よく言うぜ、大天使さんよ!貴様が俺たちを攻撃しないっていう確証が無え以上、武装は解けねえな!」

「おにいちゃんに手を出すなら、たとえ天使でも許さないよ・・・!」

「ふぅ、中々面白い奴らだ。だが、こうでなくてはな!」

 サンダルフォンと名乗る大天使は、俺たちの行動を見てため息を一つ吐くと、次いで薄く笑ってそう呟く。そして、レモン色・オリーブ色・小豆色・黒色の四色に光る宝石のようなものを懐から取り出した。セフィラというものが何なのかは分からないが、おそらくサンダルフォンが手に持つ宝石が第十のセフィラ・マルクトなのだろう。恐ろしいほど神々しく輝くそれは、真昼の公園に降り注ぐ太陽の光よりも煌々と俺たちとサンダルフォンを照らしだす。

「それが・・・マルクトなのか?」

「いや、これは精巧に作ったレプリカだ」

「レプリカ?」

 サンダルフォンは少しの間俯き、ここに来た理由について説明を始めた。二時間ほどかかったその説明をまとめると、この星には生命の樹「セフィロト」というものがあり、それは合計10のセフィラからなるらしい。その一つ一つを大天使達が守護しているのだが、どうやらそのセフィロトを襲ったものがあったようなのだ。そいつらは巨大な13匹のナメクジのような生命体で、いきなりどこからともなく現れたそうだ。大天使たちの奮闘により2匹を殲滅、1匹を下界へと撤退させたが、残りの10匹によりセフィラが全て奪われてしまった。そして、生命の樹「セフィロト」のセフィラを失った星は崩壊へと進むことになるというのだ。たとえ時空を超える術を使い、セフィラが奪われる前に戻ろうとも、生命の樹「セフィロト」は時空から外れた空間に存在するため、どうにもなることは無いようだ。つまり、生命の樹「セフィロト」を復活させ、この星を崩壊の運命から救うには、セフィラをすべて回収して生命の樹「セフィロト」に戻さなければならないという事だ。

「セフィラについては分かったな?ここからが本題だ」

 セフィラ等についての説明を終えたサンダルフォンはこんな前置きをすると、次の言葉を発するのを少し躊躇するようなしぐさを見せた。だがすぐに頭を横に振ると、俺たちの方へと向き直り、俺たちの目を見据えて言った。


「セフィラ回収を行ってくれないか?この星を救ってくれ(・・・・・・・・・)!」


 ほぼ確実に、セフィラを奪った連中はファイントだろう。それならば、これは俺の蒔いた種だ。自分で蒔いた種は自分で回収する。相手が何を持っていようがそんな事はどうでもいい。俺は雪穂と二人で頷き合うと、サンダルフォンに肯定の旨を伝える。

「そうか、やってくれるか!ならばマルクトを持つ怪物の所へ案内しよう!」

「ああ、お願いする」


「開け!時空転移門(クロノスゲート)よ!」


 サンダルフォンの声と共に、目の前に巨大な門が現れる。サンダルフォンは門に歩いていくと、軽くその扉の中心に力をかけた。次の瞬間、ゆっくりと開き始めたその扉の向こうに見えたのは、広大な田園地帯だった。雪穂と共に首をかしげていると、サンダルフォンが手招きしてくる。

「さあ、行くぞ!場所は1429年、百年戦争真っただ中のヨーロッパだ!」

 なるほどな、そりゃあ探しても出てこないわけだ。さらに過去にいるなんて思いもしなかったぜ。だが、道はサンダルフォンが開いてくれた。後は奴を探し出して倒すだけだ。

「さあ、行くか!」

「うん、おにいちゃん!」

 俺たちは手を取り、第二のレベルⅩファイントがいる時空転移門(クロノスゲート)の先へと駆けて行った。


はい、今回も読んでいただきありがとうございます。


話が壮大になりすぎたような気が・・・いや、そんなことは無い!


そういう事はおいておきまして、次回もよろしくお願いします!


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