パーシヴァルの下へ
どうも、どこぞの委員長です!
二週開いてしまいました・・・
一週目はアインツさん家のクロエさんのためで、二週目は探し物をしてました・・・
変則ですが祝日だったので投稿させてもらいます。
前回、パーシヴァルに刺された悠樹君はどうなったのか!
続きをどうぞ!
俺は唐突に目を覚ました。あれ、俺は何をしていたんだっけ?とりあえず、うつ伏せに倒れているらしい体を起こそうと体に力を入れる。
「---ぐ!」
突如腹部に走った激痛に、俺は顔をしかめてしまった。うつ伏せの状態で倒れているため確認はできないが、どうやら何かが刺さっているらしい。なるほど、大体の状況は理解できた。おそらく敵との戦闘中に負傷し、気を失ってしまったのだろう。おまけに傷が深すぎたせいか、刺された前後の記憶もあいまいになっている。そこまでは良い、いや良くないけど・・・そういう意味ではなく、俺が負傷して戦闘不能状態になっていたという事は、敵はまだ健在、しかも戦ってるのは雪穂一人なんじゃないか?それはまずいぞ、俺たちが追ってきたのはレベルⅩファイントの大群だ。そんなものに一人で挑むなんてことは・・・いや待て、だんだん記憶が戻ってきたぞ。出会った敵は喋る人型のファイントで、確かパーシヴァルとかいう名前だった。そして、何故か武器召喚士として現れた両親と共にそいつと戦うことになったんだっけ。でも戦闘が始まってすぐに、奴の近くにあった黄昏の聖十字の一本を投げられたんだ。それが見事に命中して、俺は気を失ったってことだったな。でも、気を失う直前に何か見たような・・・
「---ッ!」
そうだ、雪穂だ。あの時俺は見たんだ、両手に刀を持った雪穂を。右手に持っていたのは、いつも使っていた村雨だった。だが左手にあったあの刀、炎を纏っていたもう一振りは何なんだ?それに、武器を二つ召喚することは思っている以上にヴンダー消費が激しい。雪穂もかなりのヴンダー数値をたたき出してはいるはずだが、俺ほどではないことは確かだ。計測器が壊れたりはしてなかったんだからな。それなら一刻でも早くここから戦線復帰しなくては!俺は腹部に激痛が走るのもお構いなしに、倒れていた場所から立ち上がる。そして、刺さっていた黄昏の聖十字を体から抜いた。もちろん気を失いそうになるくらいの激痛が走るが、そんなことは知ったことじゃない。今は一刻も早く、雪穂と両親のもとへ向かわなくては!どこにいるかを探すためあたりを見回してみるが、三人の姿は無い。どうやら場所を移動したみたいだ。場所が分からないない今、捜索するにはどうすればいいだろうか。そんなことを考えたとき、俺のポケットにしまってあった携帯端末が震えた。おそらく過去のはずのこの場所で、俺の携帯端末に連絡をとれるのは雪穂以外に存在しない。だが、パーシヴァル相手の戦闘中に連絡を取って来れるとは思えない。ならば、戦闘は終了したのか?それとも・・・考えてる暇があるなら見た方が早いな。俺は携帯端末を取り出し、着信していたビデオ通信に出る。だが、その画面に現れたのは予想外の人物だった。
「やはり、そなたが神永悠樹であったか。まさか本当に連絡に出るとは。どうかな傷の具合は?」
「てめえ、パーシヴァル!どうして雪穂の端末をもってやがる!」
「そんなに怒らんで欲しいな。あの三人衆なら、ほれ」
パーシヴァルが端末を動かしてカメラに写したのは、戦闘続行は不可能だと見てわかるほどぼろぼろになって倒れた雪穂と両親の姿だった。三人ともほとんど動いていないように見える。まさか、まさか・・・
「てめえ、殺しやがったのか!」
「人聞きの悪いことを言わんで欲しいな。殺してはおらん。ただ、もう一度起き上がれるかは分からんがな」
「どこにいやがる!貴様は許さねえ!」
「おお、怖い怖い。居場所なんざ教えるわけなかろう?探すんだな、放っておけばこいつらは死ぬぞ?フククククク」
再びパーシヴァルが雪穂と両親を写す。その時、雪穂の口がかすかに動いているのが目に入った。何をしているんだ?雪穂の口の動きを集中して見てみると、どうやら何かを言っているようだ。パーシヴァルにばれないよう、さりげなくそちらに意識を集中させる。雪穂が言っていたのは、自分たちがいる場所だった。その言葉は、一番高いビルの屋上、というとてもシンプルなものだったが、居場所を知るには十分すぎる情報だ。
「ああ、探してやるよ!死ぬのを恐れながら待ってな!」
俺はパーシヴァルの居場所を知ったのを悟られないようにしながら、急いで端末の通信を切った。一番高いビルの屋上、あいつはそこから俺を観察しているに違いない。それなら一直線にそちらに向かうべきではないだろう。もし雪穂が俺に居場所を教えたのがばれたら、本当に殺されてしまうかもしれないからな。だが、時間は一刻を争う状態だ。寄り道してる暇もないのは明らかだ。つまり、あいつにばれないようにしながら一直線に雪穂たちの下へ向かう、という事をしなくてはならないという事だ。そんな事、透明人間でもなければ出来るわけがないじゃないか・・・待てよ、透明人間か。透明人間完全再現とはいかないが、方法が一つあるかもしれない。それをするには、まず誰にも見つからない場所、パーシヴァルにも見えない場所に移動しなければならない。俺はあたりを見回し、どこに行くかを迷っているように見せながら一番高いビルを探した。数秒後見つけたそのビルは、目測の直線距離で大体1~2kmと言った所だ。俺はあえてそのビルと反対方向へ走ると、雪穂たちのいるビルと俺の間にもう一つのビルを挟むように移動する。俺と二つのビルがちょうど一直線になるところまで来ると、俺は歩みを止めた。俺は周りに人がいないことを確認すると、固有結界を展開する。だが足の裏と前が見えるくらいの目の部分は、固有結界の外に出ている。俺が考え付いた作戦、それは固有結界を利用した疑似透明人間化だ。基本、固有結界というものは自分を中心として半径何メートルかで展開するものだ。原則として固有結界の中にある物に外部から干渉は出来ない。それは内部から外部へも同じで、たとえどれだけ動いたとしても固有結界消滅の時に出てくる場所は入った時と同じ場所になる。だが、そこから足が出ていれば移動は固有結界内ではなく現実世界で行われる。つまり、体は固有結界内のため外部から見ることは出来ないが、足の裏は固有結界外のため現実世界で移動ができるというわけだ。そうして疑似透明人間になった俺は、一直線に雪穂たちの下へと駆け出した。
十数分かけてようやくたどり着いたそのビルは、遠くから見て思っていたものよりも数倍高かった。おそらく地上から屋上までは500mほどあるんじゃないだろうか。さて、ここの屋上までどうやって上るかだな。とりあえず中に入って屋上まで行くことはかなり困難だろう。雪穂たちがいるこの超高層ビルは、どうやら超高級ホテルのようなのだ。一泊するのに数万~数十万かかるようなところへ入っていけるような格好もしていないし、何せ金がない。いや、無いというわけではないのだが、持っている金は俺たちの時代のもので過去で使えるとは思えない。ならば外壁をよじ登る、というわけにもいかない。それにここが一番高いビルなので、隣のビルから飛び移るなんていう芸当も不可能だ。どうすれば屋上に行けるだろうか。というか、そもそも雪穂たちはどうやってここの屋上へ上がったんだ?それが分かれば、同じ方法を使ってそこに行けるだろう。少し考えてみよう。両親の武器は二本の剣と刀、雪穂は二本の刀、パーシヴァルは槍だったな。それらの武器で500mもの上空へどうやって上がる?それこそオブサーバーのように発射する武器につかまって飛んでいくぐらいしか方法は・・・そうか、そうすればいいんだ!武器を高速で発射できれば、それに乗って屋上まで行ける。問題はどうやって武器を打ち出すかだ。オブサーバーみたいに空中に武器を出して飛ばせればいいのだが、あいにく俺は飛ばせる武器はあるものの飛ばす方法が分からない。良い案だと思ったんだが、無理か。飛ぶだけの推進力を生み出せるほかの方法は無いのか。もう、爆発の爆風で吹っ飛んでいくなんて方法でもいいんだけどな。爆発?俺は最近超がつく大爆発を見たような気がする。どこで見たんだっけ?地面にクレーターができるような大爆発だったんだけど・・・思い出した、そうかアレを使えば行けるかもしれない。町への被害も俺へのダメージもあっちを応用すればほぼなしで済む。これだ、これしかない!俺は思いついたアイデアを実行するため、ビルの外周で一番人目に付かず、監視カメラの死角になる位置を探して移動した。俺はそこで固有結界を解くと、黄昏の聖十字を水平に構える。
「変遷・電磁投射砲」
終焉の混沌剣・覚醒の時に使った技だったので、黄昏の聖十字で出来るだろうかと不安を抱いていたが、どうやら杞憂だったようだ。黄昏の聖十字は終焉の混沌剣・覚醒の時と同じように電磁投射砲へと変化してくれた。タンタルの銃弾も同時に作成されたので、それをしっかりと黄昏の聖十字・電磁投射砲の間に挟み込む。後は電気を流せばいいのだが、俺はこの時、作戦の一番の問題に気が付いてしまった。電気を流すのには「雷霆神の矢」を使うのだが、それは天から降ってくる上に頭上に超巨大な黒雲が発生するのだ。それは、俺がここにいるとパーシヴァルに示してしまうようなものではないか。それでも仕方ないだろう。早く行かなくては皆が危ないのだから。俺は意を決すると黄昏の聖十字・電磁投射砲を真下に向け、確固たる決意をもってその言葉を口にした。
「顕現せよ、雷霆神の矢!」
突如、俺の上空を中心として半径数メートルに及び巨大な黒雲が発生し始める。かなり大きくなりその動きが止まった瞬間、轟音と共に黄昏の聖十字・電磁投射砲の銃弾を挟んだ所へと雷が直撃した。高圧電流が流されたことによって、銃弾が地面に発射される。それが地面にぶつかる直前に黄昏の聖十字・電磁投射砲を元の二本の剣に戻した俺は、それを十字に組み合わせた。
「絶対神聖守護領域!」
俺の言葉と共に地面から少し浮いて、半径1mほどの半球状の絶対神聖守護領域が生成される。絶対神聖守護領域は数秒にわたって内部と外部の現象を隔離する技だ。半球状にすると、下から受けた衝撃は絶対神聖守護領域を打ち上げる推進力に変わる。そして飛んでいく絶対神聖守護領域の上へ俺が乗ると、そのまま屋上まで飛ばされるというわけだ。うまい具合に絶対神聖守護領域に乗ることができた俺は、電磁投射砲の弾丸が地面に当たった爆発を推進力として飛んでいくそれに乗って屋上へと打ち上げられていった。
「さあ、待っていやがれ!雪穂と両親を傷つけた代償、きっちり支払ってもらうぜ!」
そんな俺の呟きは、飛んでいく俺に吹き付けてくる風に溶けていった。
はい、今回も読んでいただきありがとうございます。
次回はパーシヴァルとの対決になる予定です!
というわけで、次回もよろしくお願いします!